今週末の9月11日(金)~13日(日)に行われる2026年F1第14戦スペインGPで初のレース開催を迎える新設サーキット「マドリング」は、初日のフリー走行を前に、その過酷な特性がすでに浮かび上がっている。
8月末に行われた2日間のFIA-F3選手権のテストでは、その全てがクラッシュによるものではなかったものの、赤旗が19回も発生した。ターン3、ターン5・6、ターン7、ターン11、ターン14、ターン17など、コース全体に事故のリスクが高い場所が点在しており、特定の一箇所だけを注意すれば済むレイアウトではない。
F3ドライバーからは、「ジェッダをさらに過激にしたようなコース」と評されている。サウジアラビアGPの舞台、超高速のジェッダ市街地コースは、F1カレンダーの中でも屈指の難関サーキットととして知られる。
初開催ということでチームには参考にできる実走データがなく、新しい路面のグリップも週末を通じて急速に変化することが予想される。約500mに及ぶ高速バンク、壁に囲まれた低速区間、高速シケイン、長いストレートが組み合わされたマドリングでは、エネルギーマネジメントにも未知の要素が加わる。
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マドリンク(F1スペインGP)のコースレイアウト図、2026年
赤旗19回とマシン損壊、露呈した過酷さ
ウーゴ・ウゴチュクウ(カンポス)が1分49秒034の総合最速タイムを刻んだマドリングでのテストでは、事故による赤旗が相次いだ。
F3ドライバーからは、コーナーがタイトでミスが許されず、出口では多くの一般的なサーキットのように壁が遠ざかるのではなく、逆に迫ってくるとの指摘が出た。速く走るには限界まで攻める必要がある一方、その限界を超えた際の逃げ場はほとんどない。
このF3テストは、マドリングで初めてF1を開催する前の実地確認として主催者側が要請したものだった。フェラーリも7月にF1マシンによるフィルミングデーを実施しているが、その時点では現在より路面が粗く、F3でのテストが完成状態に近いコースを使った最初の本格的な走行となった。
約340km/hで壁に迫る高速シケイン
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スペイン国旗がはためくマドリンク、2026年9月9日(水) F1スペインGP
序盤の大きな難所となるのが、ターン3とターン4を全開で抜けた先に現れる2つ目のシケイン、スビダ・デ・ラス・カルカバスだ。シケインの出口は壁がドライバーに迫るような形となっており、F3テストでも複数の事故が発生した。
このシケインへは、コース上にわずか2カ所しか設定されないストレートモード区間の一つの直後に位置しており、進入直前の速度は約340km/hに達すると予想されている。さらに縁石もドライバーに対して容赦がなく、ラインをわずかに外しただけでも大きな事故につながる可能性がある場所だ。
F3ドライバーからは、この区間の後に上り勾配が続くため、シケインの脱出速度がラップタイムに大きく影響するとの指摘も出た。タイムを稼げる場所だからこそドライバーは攻める必要があるものの、それが事故のリスクを高める。
このセクションを抜けても息をつけるわけではない。高架下を通過した先には、上り坂の区間が現れるが、F3のテストではここでも複数のマシンがクラッシュした。
最大勾配24%の超巨大バンク
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赤と黄色に彩られた縁石が特徴的なターン12「ラ・モニュメンタル」、2026年9月9日(水) F1スペインGP(マドリンク)
マドリンクを最も特徴づけるのはターン12、通称「ラ・モニュメンタル」だ。約500mに及ぶ最大勾配24%(バンク角13.5度)のコーナーでF1ドライバー達は、ブラインドの出口に向けて強烈なGフォースを受けながら、できる限りアクセルを踏み続けようとするだろう。
ウィリアムズのチーフ・トラックサイド・エンジニアを務めるポール・ウィリアムズはラ・モニュメンタルについて、「F1カレンダーの中で、マシン、タイヤ、ドライバーにこれほどの負荷をかける場所はほかにない」と指摘する。
またピレリも、ラ・モニュメンタルを今シーズンの中で「最も高い垂直荷重を発生させるコーナー」と位置付けている。ザントフォールトのバンクコーナーと比較すると、タイヤに加わるエネルギーは20~30%高くなるという。その理由はバンク角だけでなく、コーナー自体の長さにもある。
F3テストではドライバーが複数のラインを試しており、F1でも金曜フリー走行を通じて各車、最適なラインを探ることになりそうだ。
さらにラ・モニュメンタルへ入る直前のターン10とターン11も、多くのF3ドライバーを苦しめた。ターン7・8のタイトなシケインに続いて素早く右、左と切り返すレイアウトとなっており、目玉となるバンクへ到達する以前から高い正確性を要求される。
急速に変化する路面:試されるエネマネ修正
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イベント開幕を前に設営作業が進むマドリンクのピットレーンと各チームのガレージ、2026年9月9日(水) F1スペインGP(マドリンク)
F1チームにとって、事故のリスクと並ぶ大きな未知数が路面のグリップだ。敷設されたばかりのアスファルトは、ほこりや油分を除去する目的で高圧ウォータージェットによる処理が施されているが、週末の出だしは当然にグリップが低い一方、セッションを重ねる毎に急速にグリップが増すものと予想される。
未知のグリップはエネルギーマネジメントにも影響する。事前のシミュレーションでは想定したグリップレベルとレーシングラインに基づいて準備するしかなく、初開催ということで実走時に予測とのズレが大きくなる可能性が高い。
特に難しいのが、ターン1とターン4に向かうロングストレートと、多数存在する短いストレートへのエネルギー配分だ。それぞれの短いストレートでも少量ずつエネルギーを使う必要があり、ウィリアムズは「これまでに直面したことのない課題」になると見ている。
さらに一部のコーナーは、実際のグリップ次第で全開走行できる場合と、アクセルを戻す必要がある場合に分かれる可能性がある。全開で抜けられるかどうかによって、その前後のストレートで使用できるエネルギー量も変わってくる。
チームは各セッションを通じて、ラップタイムを最大化するためのエネルギーマネジメント戦略を、通常のレース週末以上に軌道修正し続ける必要がある。
左タイヤへの偏重負荷と過熱:1ストップ有力か
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IFEMAマドリードの施設に沿って設けられたマドリンクのコーナー、2026年9月9日(水) F1スペインGP
ピレリは今回、ハードにC2、ミディアムにC3、ソフトにC4コンパウンドを選択した。週末を通して予想される路面グリップの変化は、タイヤのウォームアップ方法に加え、柔らかいコンパウンドでグレイニングが発生するリスクにも影響する。
高速コーナーでは左側のタイヤに長時間にわたって大きな負荷がかかる。晴天時には路面温度も上昇するため、決勝ではオーバーヒートが大きな課題となる可能性がある。
予選では、ラップ序盤のブレーキング区間に向けてフロントタイヤを十分に温めつつ、ラップ後半ではリアタイヤのオーバーヒートを抑えるという、非常に難しい課題をクリアする必要がある。
戦略面では、ピットストップによるタイムロスが停止時間を除いて約22秒に達すると予想されている。オーバーテイクはシンガポールGPレベルに難しいとの見方もあり、予選順位の重要性は高く、現時点では1ストップ戦略が有力視されている。
狭いコース、新しい路面、走路のすぐ脇にそびえるウォールといった要素を踏まえると、黄旗や赤旗によって各セッションが中断される可能性は控えめに言っても高い。
成功の鍵の一つは、如何にクリーンな週末を過ごすかだが、ラップタイムを追い求めるには壁に近づかなければならず、ミスをすればマシンの損傷により走行機会を失うことになる。
それに加えて未知のグリップ、タイヤのオーバーヒート、エネルギーマネジメントが重なるため、マドリンクでは最初のプラクティスから各チームとドライバーの適応力が試されることになる。
