2026/09/13 NEW
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写真:編集部

横浜DeNAベイスターズの井上朋也内野手が、新天地で再出発の一歩を踏み出している。9月には移籍後初本塁打を放つなど結果を残し始めたが、その転機となったのは5月に突然告げられたトレードだった。ドラフト1位で入団した福岡ソフトバンクホークスを離れる寂しさと、結果を残せなかった悔しさ。それでも井上は、新たな環境を「自分の野球人生にプラスになる」と前向きに受け止めた。新天地で再起を期す右の大砲が、移籍当時の胸中と古巣への思いを語った。(取材・文:石塚隆)
プロフィール:井上朋也
大阪府出身。花咲徳栄高を経て、2020年ドラフト1位で福岡ソフトバンクホークスに入団した。長打力を武器に2023年に一軍デビューを果たし、プロ初本塁打も記録。2026年5月にトレードで横浜DeNAベイスターズへ移籍し、9月には移籍後初本塁打を放った。新天地でさらなる飛躍を目指している。
移籍後初アーチで迎えた“ベイスターズの一員”としての瞬間

横浜DeNAベイスターズの井上朋也【写真:産経新聞社】
降りしきる雨のなかを切り裂く放物線。力強い弾道がレフトスタンド中段に消えていく。打球速度170キロ、打球角度27度、推定飛距離120メートル――。
9月9日のヤクルト戦(横浜スタジアム)、横浜DeNAベイスターズ移籍後、井上朋也の放った初めての本塁打は勝利に大きく貢献する3ランとなった。
試合後、井上は初めてヒーローインタビューに立った。大雨にもかかわらず現地に残ってくれたファンに向け、少しはにかむような表情で言った。
「雨のなか、たくさんのファンの方が応援してくださっていたので、なんとか良い結果につながってよかったです。なかなか結果が出なくて焦りは少しあったんですけど、『ファームでやってきたことを出そう』という思いで試合に臨みました。今日だけじゃなくて、明日からも一軍の戦力になれるように頑張っていきたいなと思います」
大きな拍手と歓声が、雨とともに横浜スタジアムに降りそそぐ。この瞬間、誰もが「ようこそベイスターズへ」と思ったにちがいない。
今年の5月12日、球界を揺るがした突然のトレード。福岡ソフトバンクホークスに所属していたプロ6年目の井上の運命を左右するわけだが、当事者としてどのように受け止めていたのだろうか。そのときの状況を井上は、宙に視線を向けて教えてくれた。
午前6時の電話で察したトレード「一から頑張ろう」

取材に応じたDeNA・井上朋也【写真:編集部】
「朝の6時ぐらいに電話がかかってきて、球団関係者の方から『9時半に球団事務所に来てくれ』と言われたんです。その瞬間、『あ、トレードだな』と思いました」
井上に大きな驚きはなく、予感はあったという。というのも、前年の5月12日、ソフトバンクの砂川リチャードと巨人の秋広優人、大江竜聖のトレードが行われていたからだ。
「それもあって1週間前ぐらいから『あるかもしれない』と思っていて、どこかで心の中で準備はできていました」
花咲徳栄高時代は通算50本塁打を放ち、2020年のドラフト会議で1位指名され、将来を嘱望された大砲候補。しかし、プロ入り後はケガなどもあり結果を出すことができず、一軍出場は通算28試合、打率も1割台にとどまった。そんな自分の立場や状況を鑑み、トレードもありうると井上は予見していた。
トレードを告げられた瞬間、果たしてどんな思いが胸に去来したのだろうか。
「もちろん寂しさはありました。それ以上にドラ1で獲ってもらったのにもかかわらず、チームに貢献できなかった悔しさがありました。ただ、トレードを告げられた瞬間よりも、朝の電話があって、事務所に行くまでの3時間がすごく長く感じました。そわそわしたし、落ち着かないし、どこ(のチーム)なんだろうって」
では、ベイスターズに行くとわかったとき、なにを思ったのだろうか。
「じつはベイスターズの可能性はあると思っていたので、予想の範囲だったんです。聞いた瞬間は、自分の野球人生にプラスになるなと思えましたし、前向きに『一から頑張ろう』って切り替えることができました。
えっ、当時のベイスターズの印象ですか? やっぱり打線が強力ということと、あと宮﨑(敏郎)さんや牧(秀悟)さんといった素晴らしい右打者が多いので、いろいろ吸収できたらなと思いました」
トレードをプラスと捉え、新天地でリスタートを切る井上だが、約5年間過ごしたソフトバンクに改めて今、どのような思いを抱いているのか。
「この5年間を無駄にしない」古巣への感謝と新天地での再出発

横浜DeNAベイスターズの井上朋也【写真:産経新聞社】
「先ほども言ったように、まずはチームに貢献できず申し訳なかったと思っています。ただ、環境は素晴らしかったですし、常勝軍団ゆえに少ないチャンスで結果を出さなければいけない難しさはありましたが、確実に成長させてもらいました。技術面の指導はもちろん練習量もすごかったですし、ファンの方々への感謝も含め、この5年間が決して無駄にならないように、ベイスターズで活かしていきたいと考えています」
いざ、横浜へ。現地へ到着するとDeNAの長谷川竜也編成部長から激励の言葉をもらった。
「ものすごく期待している、という言葉をいただいて『ベイスターズで早く野球がしたい!』と強く思いました。期待に応えなければいけないという気持ちが、より一層高まりましたね」
移籍してからはファームを中心にトレーニングを積む日々。5月26日に一軍登録されるが、8打数無安打と当たりが出ず、6月4日に再びファーム行きとなってしまう。
注目されるなか、なかなか調子が上がらない井上であったが、そんなとき適切なアドバイスを送ってくれたのが村田修一二軍監督だった。
(後編へ続く)
【著者プロフィール】
石塚 隆 (いしづか・たかし)
1972年、神奈川県出身。フリーランスライター。プロ野球などのスポーツを中心に、社会モノやサブカルチャーなど多ジャンルにわたり執筆。web Sportiva/週刊プレイボーイ/週刊ベースボール/集英社オンライン/文春野球/ベースボールチャンネル/etc…。現在Number Webにて横浜DeNAベイスターズコラム『ハマ街ダイアリー』連載中。趣味はサーフィン&トレイルランニング。鎌倉市在住
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【了】
