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    国立成育医療研究センター(所在地:東京都世田谷区大蔵、理事長:五十嵐隆)の社会医学研究部 臨床疫学・ヘルスサービス研究室の大久保祐輔らの研究チームは、全国規模の医療データを用いて、(1)日本の子どもにおける経口抗菌薬処方の長期的な推移と、(2)近年増加しているテトラサイクリン系抗菌薬[1]の使用実態を検討しました。
    これら2つの研究から、日本の小児における経口抗菌薬使用量はこの10年間で大きく減少し、抗菌薬適正使用の取り組みが進んでいる一方で、Access抗菌薬[2]の使用割合はWHOの目標を大きく下回っていることが明らかになりました。また、思春期では抗菌薬使用量の減少が限定的であり、その背景の一つとして、ざ瘡(にきび)治療に伴うテトラサイクリン系抗菌薬の使用増加があることが示されました。今後は、抗菌薬全体の使用量だけでなく、年齢や疾患、抗菌薬の種類に応じた適正使用を進めていくことが重要と考えられます。
    本研究の成果は、本研究の成果は、医学分野の学術誌「JMA Journal」および皮膚科学分野の学術誌「The Journal of Dermatology」に2026年8月に論文として掲載されました。

    ※本研究の内容はすべて著者らの意見であり、厚生労働省の見解ではありません。

    [1] テトラサイクリン系抗菌薬:細菌のタンパク質合成を阻害して増殖を抑える、広く細菌感染症に効果のある抗菌薬。
    [2] Access抗菌薬:WHOが第一選択として推奨する、耐性化リスクの比較的低い抗菌薬。

    図1:日本の小児における経口抗菌薬使用量の年次推移(2011~2022 年度)

    【図1:日本の小児における経口抗菌薬使用量の年次推移(2011~2022 年度)】

    プレスリリースのポイント

    日本の0〜19歳における経口抗菌薬の使用量は、2011年度から2022年度に58.6%減少しました。特にマクロライド系とセフェム系で大きく減少しました。
    Access抗菌薬の使用割合は11.2%から19.0%まで上昇したものの、WHOが目標とする60%を大きく下回っていました。
    15〜19歳では抗菌薬使用量の減少幅が小さく、テトラサイクリン系抗菌薬は23.9%増加していました。
    テトラサイクリン系抗菌薬の適応疾患は大きく変化し、ざ瘡が占める割合は2015年度の34.1%から2023年度には73.6%まで増加しました。

    背景・目的

    抗菌薬の過剰使用は、薬剤耐性(AMR)を進める要因の一つであり、世界的な公衆衛生上の課題となっています。日本では2016年に薬剤耐性(AMR)対策アクションプランが策定され、抗菌薬使用量の削減や適正使用が推進されてきました。
    小児における全国規模の抗菌薬使用に関する研究は限られており、近年の長期的な推移や年齢別・地域別の違い、抗菌薬の種類ごとの変化については十分に明らかになっていませんでした。特に、抗菌薬全体の使用量が減少する中で、思春期を中心にテトラサイクリン系抗菌薬の使用が増加していることが示されていましたが、その背景となる適応疾患や治療実態は明らかではありませんでした。
    そこで本研究では、2つの全国規模の医療データを用いて、日本の小児における経口抗菌薬処方の長期的な推移と、テトラサイクリン系抗菌薬の使用実態を明らかにしました。

    研究概要

    1つ目の研究では、厚生労働省のNDB(レセプト情報・特定健診等情報データベース)を用いて、2011〜2022年度の0〜19歳に対する約4億800万件の抗菌薬処方データを解析しました。その結果、経口抗菌薬の使用量は2011年度から2022年度にかけて58.6%減少し、特にマクロライド系とセフェム系で大きく減少しました(図1)。一方、Access抗菌薬の使用割合は2011年度の11.2%から2022年度には19.0%まで上昇したものの、WHOが目標とする60%を大きく下回っていました。さらに、15〜19歳ではテトラサイクリン系抗菌薬は23.9%増加していました(図2)。
    2つ目の研究では、全国健康保険協会の医療データを用いて、2015〜2023年度の20歳未満約2,400万人を解析し、このテトラサイクリン系抗菌薬の増加が、どのような疾患に対する処方によるものかを詳しく検討しました。テトラサイクリン系抗菌薬が処方された疾患をみると、ざ瘡が占める割合は2015年度の34.1%から2023年度には73.6%まで増加した一方、呼吸器感染症は55.2%から15.5%へ減少していました(図3)。

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    【図2:年齢別にみた経口テトラサイクリン系抗菌薬使用量(2011~2022 年度)】

    図3:テトラサイクリン系抗菌薬の適応疾患の推移(2015~2023 年度)【図3:テトラサイクリン系抗菌薬の適応疾患の推移(2015~2023 年度)】

    発表論文情報

    論文1
    題名(英語):Long-term National Trends in Pediatric Oral Antibiotic Prescriptions in Japan, 2011-2022
    著者名:大久保祐輔¹、宇田和宏¹,²、岩元典子¹,³、宮入烈1,4,5
    掲載誌:JMA Journal  
    DOI:10.31662/jmaj.2026-0031

    論文2
    題名(英語):Oral Tetracycline Use in Children and Adolescents in Japan: Trends, Indications, and Treatment Patterns
    著者名:大久保祐輔¹、宇田和宏¹,²、岩元典子¹,³、宮入烈1,4,5
    掲載誌:The Journal of Dermatology
    DOI:10.1111/1346-8138.70404

    所属
    (1)国立成育医療研究センター 社会医学研究部
    (2)岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 小児地域医療学講座
    (3)国立健康危機管理研究機構 国立国際医療センター 感染症対策センター
    (4)浜松医科大学 小児科学講座
    (5)テネシー大学健康科学センター 微生物学・免疫学・生化学部門

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