2026年9月
     123456
    78910111213
    14151617181920
    21222324252627
    282930  

    ウクライナの首都キーウを訪れたジャレッド・クシュナー(中央左)とスティーブ・ウィットコフ(中央右)、9月6日、ウクライナ大統領府のサイトより

    (英フィナンシャル・タイムズ紙 2026年9月10日付)

     マルコ・ルビオが銃声から逃げるのには理由がある。

     ルビオは米国の国務長官であると同時に大統領補佐官(国家安全保障担当)でもある――この2つのポストを兼務するのはヘンリー・キッシンジャー以来だ――が、勝ち目のない賭けを感じ取る能力の持ち主だ。

     ロシアとウクライナの和平仲介の試みであれ、イランとの核協議であれ、ガザの復興であれ、ドナルド・トランプが自分の交渉担当者に求める不動産業の経験がルビオにはない。

     政治家はスポットライトを浴びたがるのが普通だ。ルビオがスポットの外にいることを気にかけていないことは多くを物語っている。

    ロシアとウクライナに「デザート」を約束する愚

     ジャレッド・クシュナーとスティーブ・ウィットコフは不動産のことが分かっているし、どちらもビジネスと政治を両立させる億万長者だ。これがトランプの代弁者としての信用を2人に与える。

     9月最初の週末のモスクワとキーウへの実りなき訪問に際し、ウラジーミル・プーチンとウォロディミル・ゼレンスキーの両方から丁重なもてなしを受けたのはそのためでもあった。

     2人は、両国が何らかの取引をまとめれば「ウィン・ウィン」の投資ブームがやって来るとの約束を手提げ袋に入れて持ち込む。

     だが、いささか欲張りが過ぎるのかもしれない。長持ちする取引をまとめることは、それだけで十分難しい。

     しかし、彼らの本当のお目当てがデザートであるなら、この2人は和平というメインコースを台無しにする公算が大きい。

     クシュナーとウィットコフの戦術の核心は、戦争が終われば大もうけができるというデザートをちらつかせて相手を誘い込むことだ。

     ウクライナもロシアもなぜ殺し合いを続けているのか、そんなことはやめて米国と手を組めば、重要鉱物を採掘したり人工知能(AI)データセンターを建設したりできるではないか、という具合だ。

     この考えは相手を誤解している。

     推計値にはばらつきがあるものの、プーチンは2人のどちらよりもはるかに多くの財産を持っている。トランプ自身と比べてもそうだ。

     プーチンが望んでいるのは停戦後に行われると想像されている取引では買えないもの、すなわちロシアという大切な祖国にウクライナの一部か全部を再吸収することだ。

     ゼレンスキーにとってもデザートは二の次だ。

     彼の仕事はウクライナをロシアの手から守ることだ。実際、トランプとその2人の使節はビジネスの見込みがあるからこの件に関わっているのであり、その逆ではない。

     和平のおこぼれのことばかり考えていると、エルドラド(黄金郷)はさらに遠のく。

    Share.

    Comments are closed.