環太平洋合同演習(RIMPAC)2026に参加するため、ハワイのパールハーバーに寄港した米空母「セオドア・ルーズベルト」(7月28日、米海軍のサイトより)
米原子力空母「セオドア・ルーズベルト」が9月5日、母港であるカリフォルニア州サンディエゴを出港した。今後、中東へ向かうとみられている。ただし、米海軍は公式には目的地を明らかにしていない。
このニュースだけを見れば、米国がイランとの戦争をさらに拡大しようとしているようにも見える。
しかし、今回の派遣をそのように読むのは早計だろう。
報じられているところでは、セオドア・ルーズベルトの主な役割は、中東に展開しているジョージ・ワシントンと交代することである。
つまり、これは少なくとも表面的には「増派」ではない。
空母を交代させながら、中東での軍事作戦を継続するためのローテーションである。
だが、私はむしろそこに注目したい。
なぜ米国は、空母を次々に交代させながら、中東で戦力を維持し続けなければならないのか。
そして、その状態をいつまで続けることができるのか。
セオドア・ルーズベルトの派遣は、「戦争の出口」が見えてきた証拠ではない。
逆に、米国がいまだ明確な出口を見つけられていないことを示しているのではないか。
しかし、出口が見えないからといって、戦争を無期限に続けられるわけでもない。
現在の米国とイランの戦争には、長期化を難しくする四つの制約がある。
米軍の戦力と兵站、イランの継戦能力、ホルムズ海峡の不安定化が世界経済にもたらす負担、そして11月の中間選挙を控えるトランプ政権の政治的事情である。
この四つの制約が重なり合い、トランプ政権に「戦争をどう終わらせるのか」という問題を突きつけ始めている。
交代派遣だからこそ見えてくる米軍の苦しさ
米海軍は11隻の原子力空母を保有している。
しかし、「11隻ある」ことと「11隻を自由に使える」ことは全く違う。
空母は展開を終えれば整備が必要になる。乗組員には休養と再訓練が必要で、次の展開に備えるための時間も欠かせない。
その限られた空母を、米国はインド太平洋、中東、欧州など複数の正面で使わなければならない。
その矛盾が、イラン戦争で表面化している。
日本の横須賀を母港とする空母ジョージ・ワシントンは8月、南シナ海からインド洋、アラビア海を経て中東へ移動し、長期展開を続けていた「エイブラハム・リンカーン」を交代する役割を担った。
そして今度は、セオドア・ルーズベルトがジョージ・ワシントンを交代すると報じられている。
ここで重要なのは、どの空母がどの空母と交代するかという話だけではない。
本来、米国が最重要戦域の一つと位置づけるインド太平洋の空母まで中東へ動かし、さらに次の空母を準備しなければならないほど、イラン戦争が米軍の戦力を拘束しているという事実である。
中東で空母を使えば、その間、別の戦域で使える空母は減る。
とりわけ中国との軍事的競争を最優先課題の一つとする米国にとって、この状態を長期間続けることには大きな戦略的コストが伴う。
これが一つ目の制約である。
問題は空母の展開期間だけではない。
航空機、弾薬、迎撃ミサイル、整備、補給、人員、戦費。
中東で戦争を続けるほど、米軍の資源はそこに吸い取られる。しかも、その間にも中国との競争は止まってくれない。
したがって、セオドア・ルーズベルトの派遣から読み取るべきなのは、「米国がいよいよ決戦を始める」ということではない。
むしろ、「この戦争を持続させるために、次の空母まで送り出さなければならなくなった」という米国側の軍事的・時間的な制約なのである。
