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    実は一番大きな進化は「S11」

    実は今年のApple Watchで一番注目すべき点は、SoCにS11を積んでいるという点である。

    このS11、サイトなどには大きく書かれていないが、最新のA20 Proがベース……つまり世界で最も集積度の高い2nmプロセスで作られている。

    正直、時計にそこまでの性能が必要なのかと思わなくもないが、Siri AIなどでの音声認識やさまざまなAI処理に使われているようだ。後述するヘルスセンシングシステムの性能向上にもS11チップが大きく役立っている。

    CPUにどのタイプのコアを搭載しているかは公表されていないが、コア数としては従来のS10と同じで、2コアCPU、4コアNeural Engineとのこと。ここは非常に重要なポイントだ。

    Series 12はケースサイズまで微妙に変わった

    そのせいか、実は本体にも細かい変更が施されている。46mmサイズも42mmサイズも横幅が約1mm増している。ディスプレイ解像度は同じだが、表示面積はほんのわずかに小さくなっている。つまり実はベゼルが太くなっているのだ。おそらく内部構造に大きな変更があり、ケースサイズを変えざるを得なかったのだと思われる。

    さらに新しく登場したセラミックモデルは縦寸が長く、厚みも増している。いずれも、もちろんバンドは共通で使えるが、ケースや保護ガラスなどは対応しない可能性があるので注意が必要だ。

    ちなみにApple Watch Ultra 4の方はサイズに変更はない。

    5秒ごとに心拍を測る、新ヘルスセンシングシステム

    そのS11の高い処理能力を前提に導入されたのが、新しいヘルスセンシングシステムだ。

    「電気式と光学式の心拍センサーは前からあったよね」と多くの人は思うだろうが、その正確性と計測頻度を向上させることで、より多くのことが正確に分かるのだそうだ。やたらとセンサーや機能を増やすのではなく、ヘルスケアのために実際にどんなデータが必要なのかを突き詰めるスタンスだ。

    この新しいセンサーの導入によって、心拍数をバックグラウンドでも5秒おきに計測。これは従来の60倍の頻度だ。さらにHRV(心拍変動)は最大5分おきに計測し、こちらも従来の24倍の頻度で計測することになっている。

    病院に行くと、医者がまず脈を取るというのにはちゃんと意味がある。心臓や循環器の状態はまず「脈」に表れる。速さ、リズムが規則的か、強さなどを見て、頻脈・徐脈、不整脈の可能性などに気付くのだ。Apple Watchも、より正確で頻度の高いデータを手に入れることで、より精度の高い健康状態のサジェストができるようになるということだ。

    脈にそこまでの情報が現れているとは、一般的にはあまり考えないと思う。

    ただ筆者もApple Watchをつけてランニングするようになって、5分45秒/kmのペースで走っているのに脈拍が140を超えるのは、練習をサボっているからVO2 maxが下がっているんだな……とか、ここは上り坂だから心拍が上がったとか、いろいろ分かる。

    医者は診察室で30秒〜1分ぐらいしか脈を取れないが、Apple Watchは5秒に1回脈を取るなら、1日で1万7280回、脈を取るタイミングがあることになる。そこから導き出せることは多いだろう。そのセンシングが正確になるのなら、なおのことだ。

    今日の身体を0〜10で示す「準備度」

    その上で導き出されるのが「準備度(Readiness)」だ。

    あまり聞き慣れない言葉だが、英語のReadinessは「準備が整っているかどうか?」といったニュアンスで普通に使われる言葉らしい。

    準備度はアクティビティとバイタルと睡眠を総合して0〜10で評価する。0〜1だと「回復(Recover)」、2〜4だと「無理せずに(Pace Yourself)」、5〜7だと「準備OK(Ready)」、8〜10だと「思い切りやろう(Go For It)」と表示される(日本語訳に苦労の跡が見える……)。

    ここで5秒ごとの心拍測定と最大5分ごとのHRV測定が効いているわけだ。

    特にHRVはApple自身がストレスや回復を見る重要な指標として位置付けているので、従来より24倍高頻度にHRVを取得し、それを自分自身の通常の値、つまりベースラインと比較して、準備度の判断材料にしているとのこと。

    朝に一度スコアが出るだけでなく、激しいワークアウトをしたり、昼寝をしたり、日中のバイタルに変化があったりすると、準備度が1日の途中でも更新されるらしい。つまり準備度は、その日の身体がどの程度活動できる状態にあるかを、最近の運動、睡眠、心拍やHRVなどから総合的に判断する指標だということだ。

    「今日、準備度が0だから会社休んでいいですか?」とか、「今日は準備度10だから、限界まで走れるぜ!」みたいなことになるのだろうか? 使ってみるのが楽しみだ。

    準備度を表示するには、Apple Watch Series 12もしくはUltra 4で、24時間の心拍測定データを7日間以上蓄積しなければならない。

    今回、機材をお借りしてすぐに装着し、そのままずっと使っているが、まだ準備度は表示されない。準備度が表示されるようになったら、改めてレポートしてみたい。

    まだ試せない機能にこそ、S11の本領がある

    一見、従来のモデルと変わらない、もしくは裏面のセンサーが変わっただけに見えるApple Watch Series 12とUltra 4が、いかに大きくアップデートされているかご理解いただけただろうか?

    なお、サウンド認識(Sound Recognition)、Shazamによる自動ミュージック認識(Music Recognition / Shazam)はすでに使えるが、ライブ巻き戻し(Live Rewind/Digital Crownを2回押すと、直前15秒間の会話をテキスト化して表示)、Siri Recap(一日の会話からタイトルと要点を生成して、あとから振り返れるようにする)はまだ利用できない。年内にベータ版として提供される予定だが、当初は英語のみで、日本語への対応時期は現時点では明らかにされていない。

    アップルはSecure Exclaveを使って「音声録音を作成・保存せずにAI処理する」としているが、それが一般に許容されるかどうかは、英語圏での議論を注視せざるを得ないだろう。聞き忘れの多い筆者としては、便利な機能だと思うのだが。

    「準備度」や「ライブ巻き戻し」「Siri Recap」のテストができなかったので、今ひとつ煮え切らないレポートになってしまったが、それらの高度な機能のためにApple Watchの内部がかなり大きく刷新されていることはご理解いただけたと思う。これらの機能に関しては後日改めてレポートするので、今しばらくお待ちいただきたい。

    iPhone Duoと一緒に使うのも楽しみだ。

    (村上タクタ)

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