セールスフォースのマーク・ベニオフ氏(左)と、エヌビディアのジェンスン・フアン氏(右)。撮影:松本和大
月曜の朝、営業システムで担当案件を確認し、止まっている商談を見つけたら担当者に連絡する。そんな作業が、AIに「今週、止まっている大型案件は?」と聞くだけで済むようになるかもしれない。
セールスフォース(Salesforce)がアメリカ・サンフランシスコで開催中の年次イベント「Dreamforce 2026」。9月15日(現地時間)の基調講演では、共同創業者のパーカー・ハリス氏のこんな発言を収めた映像が流れた。
「なぜセールスフォースにログインしなければいけないのか。もう二度とログインしなくていいかもしれない」
セールスフォースは、顧客情報や商談を管理する「CRM(顧客管理)」ソフトの大手で、ハリス氏はセールスフォースの主要な業務画面「Lightning UI」を手がけた人物だ。
基調講演で示されたのは、セールスフォースの従来の画面を開かなくても仕事が進む姿だった。同社はなぜ、自社の画面を主な入口にしない仕組みをつくろうとしているのか。
アンソロピック(Anthropic)のダリオ・アモデイCEOやエヌビディア(NVIDIA)のジェンスン・フアンCEOらの発言とともに、AI時代に業務ソフトの何が変わり、何が残るのかを見ていく。

「サースポカリプスというばかげた話は終わりにする時だ」セールスフォースCEOベニオフ氏が反論 | Business Insider Japan
「他のソフトウェア会社なら、恐ろしい発言だ」
「SaaS終焉論」に反論したセールスフォースのマーク・ベニオフ氏。撮影:松本和大
「クレイジーな発言ですよね。他のソフトウェア会社が言ったら、恐ろしい発言です。彼らは自社の製品をUI(画面)だと考えているからです」
ハリス氏の映像を受けてそう話したのは、セールスフォースでアプリケーションとマーケティングを統括するパトリック・ストークス氏だ。
ストークス氏の説明では、他のソフトウェア会社は利用者が操作する画面そのものを製品と捉えている。その会社が「もう画面を開かなくてもいい」と言えば、製品の中心を自ら手放すことになる。ストークス氏が「恐ろしい」と表現したのは、そのためだ。
では、セールスフォースは何を自社の価値だと考えているのか。ストークス氏が挙げたのは、顧客企業が預けてきたデータや仕事の手順、権限、セキュリティーのルールだった。企業が業務システムの中に積み上げてきた、仕事の進め方そのものだ。
事前の報道向け説明会でも、ストークス氏は「セールスフォースの価値がUIにあったことは一度もない」と説明した。AIが操作を担えば、画面の奥にあるデータや仕組みをより活用できるという考えだ。
背景には、AIの普及によってSaaSは不要になるのではないか、という議論がある。営業管理や人事、会計など、インターネット経由で使う業務ソフトは「SaaS(サース)」と呼ばれる。
AIエージェントが人に代わって仕事をするようになれば、人間が操作するSaaSは必要なくなるのではないか。こうした見方は「SaaSpocalypse(サースポカリプス)」とも呼ばれる。アポカリプスは「終末」を意味し、いわば「SaaS終焉論」だ。
セールスフォース共同創業者で会長兼CEOのマーク・ベニオフ氏は、この議論を「クレイジーなナンセンス」と一蹴した。そのうえで、AIによって終わる可能性があるのは、人間にすべての作業をさせる従来型のソフトウェアだとの見方を示した。
人間が従来の画面を操作しなくなると、仕事はどう変わるのか。続くデモで、その一例が示された。
