


jacket ¥254,650・pants ¥156,200・shoes [reference product] / STELLA McCARTNEY (STELLA McCARTNEY Japan 03-6427-7013), ring left index finger:¥49,500・Left middle finger:¥60,500 / e.m. (e.m. AOYAMA 03-6712-6797)
主人公の言葉が物語の正解になってほしくなかった
― 本作で松岡さんが演じたのは、天才的なオペ技術を持つ救急外科医・沼田文。この役をどのように捉えましたか?
以前、『ひとよ』(2019)という映画でご一緒させていただいた髙橋信一プロデューサーと、3年くらい前にNetflixさんの本社でお会いしました。そこで髙橋さんがおっしゃったのが、「極悪女王」という作品に携わったときに、女優さんたちの見た目についてネット上でたくさんの意見が上がったということ。それに対する違和感や気づきから、美容整形の話をオリジナルで作りたいと考え、本作の企画をスタートされたそうです。
シスターフッドの物語でいこうと決まったあたりで私はオファーをいただいたのですが、当時はまだプロットもなく、沼田文がどんな役なのかはわかっていませんでした。ただ、そのときに髙橋さんから「こういう人になってほしい」というイメージはお聞きして、誰かにとってはヒーローで、誰かにとってはダークヒーローになる役なんだと話してくださいました。
私がいままでに演じてきた誰にも当てはまらない人なのだろうなぁ、と感じて。いつも役をいただいたときに必ず、短所も見つけるようにしているのですが、今回はたくさん見つけてあげようと思いました。
― 悪いところを?
はい。長所は物語がすでにはらんでいるから探す必要はないことが多いのですが、短所に私が気づいてあげないと聖人君子になってしまう。
文がかっこよくなりすぎて、彼女の言葉が物語の正解として受け取られることは避けたかったんです。彼女は美容整形を批判していたり、美容整形をする人のことまで侮蔑していたり、もともとそういう考え方の持ち主ですが、もしそれが全ての正解だと感じてしまう人が多かったら、この物語のテーマやメッセージが届きづらくなってしまうのではと思いました。
五角形がバランスしている人なんてほとんどいないと思うのですが、文の何が欠けていて、秀でているのか、この物語は文と凜の成長譚でもあるので、丁寧に掘り下げたいと思いました。

― 文は正論を大切にする部分があり、凜との価値観の違いが象徴的に描かれていました。演じながらどんなふうに感じましたか?
私自身がまさに正論タイプで、文にすごく共感していました。「正論の何が悪いんだ」って、いまだに思ってしまっているところがあります。
ただ、まっすぐ生きていることは絶対に間違っていないし、その子たちはすごくがんばっていると思うんだけど、まっすぐとまっすぐがぶつかったときは、やっぱり話し合って進み方を考えないといけない。生きていくうえでそれが必要だということは、この作品を通して改めて教えてもらった気がします。
― 仲里依紗さんとの共演はいかがでしたか?
私と里依紗ちゃんは、これまで歩んできた道も、キャリアも違うのですが、一緒にやっていて、「前世に何かあったのかな?」と思うほどに過ごしやすかったです。毎日が楽しくて。
彼女と対峙すると、私の中ですべてがあらわになってしまう。嘘がつけなくなる。すごく正直にさせられるお芝居をされていました。

― 髪を短くしたのも役作りの一環ですか?
お話をいただいたときから、文がどんな人か?を考えていました。よくいえば筋の通った人だけど、見方を変えれば自分の正しさ以外を信じられない人。多分髪を切ることになるだろうなということは、初めのお打ち合わせからプロデューサーさんに伝えていました。衣装合わせやカメラテストで各部がチェックしながら、ブラッシュアップしていきました。
― 文は形成外科医から美容整形の世界へ転身することになりますが、美容外科医を演じるために、どのような役作りをしましたか?
職業が明確な役のときは、その現場に立っている人の意見を聞くことが一番の教科書だと思っているんです。今回は高須クリニックさんが全面協力をしてくださったので、患者さんと話されるときの空気であったり、会話の進め方など、たくさんのことを教えていただきました。
皆さんすごく清潔感があって、安心できる環境づくりを大切にされていました。高須クリニックでは、取材の一環として模擬カウンセリングも受けさせていただいたんですけど、この方になら自分の顔や体を変えることを任せてもいいと思えるような信頼感は、美容外科医にとって大切な資質だと思いました。

自分が楽しいと思えるチョイスをしたほうが相手も気持ちいい
― 正しさとは何か、美しさとは何か、観ているとその基準が揺さぶられる作品でした。松岡さんが美しいと思うのはどんな人でしょう?
尊敬しているのは、おぐし(御髪)がいつもきれいな人。
私はいつもおぐしが乱れがちなので……街を歩いている子たちって、たぶんメイクの研究と同じぐらい、おぐしの研究もしていると思うんですよ。皆さん本当に素敵にセットされているので、ヘア剤とか聞いてみたい(笑)。
自分のしたい格好とか、好みを理解して素敵に着こなしている人もかっこいいなと思います。
― 人前に立つ俳優としてさらされる視線や評価とは、どういうふうに折り合いをつけていらっしゃいますか?
かつて、とくに20代中頃は、皆さんが不快じゃないもの、皆さんが良しとする総合点の高い見た目でいたほうがいいのかな?という思いはありました。それをメイクさんや衣装さんとも相談したりして。
でも、それこそ「ダウンタイム」に出会ったこともあると思うのですが、ここ1、2年は「もういっか」と思うようになりました。30歳になったのもあるかな。自分が楽しい、好きだと思えるチョイスをしたほうが相手も気持ちいいんじゃないかなと思っています。
みんながかわいいと思う女の子像、みたいなものを追いかけてみるのは、20代に置いてこようかなというのが最近の気分です。

― とはいえ、自分らしくあり続けるって難しいですよね。
それは絶対そう。
― 人前に出る仕事でそんなことが本当に可能なのかと、ちょっと意地悪にも思っちゃうんですけど。
テレビに出ている姿とオフの姿がまるで変わらない人も実際にいますよ。でもきっと、天性のものだなと思う。私はたぶんちょっと違います。生活しているときは、生活者なんです。でも、私のこの肉体をもってして俳優をしているという意味ではこれがいいかな、と思います。
そして、年を重ねて同世代のクリエイターさんがたくさん活躍されていたり、今回の現場でも年下の方も大勢いらっしゃったりして、当たり前の会話をたくさんの人とできることで、すごく働きやすいです。働くうえで年齢がすべてではないと思いたいし、私の伝え方も全然違うと思うんですけど、言葉の意味が変わる感じが少しあります。10代が一番多感で、20代もまだいっぱいいっぱいで、ようやく地に足がついてきたのかも。

Profile _ 松岡茉優(まつおか・まゆ)
1995年、東京都出身。NHK連続テレビ小説「あまちゃん」(13)で注目を集める。日本アカデミー賞では『勝手にふるえてろ』(17)、『蜜蜂と遠雷』(19) 、『騙し絵の牙』(21)で優秀主演女優賞、『万引き家族』(18)で優秀助演女優賞を受賞。その確かな演技力が高く評価されている。その他の主な出演作に映画『愛にイナズマ』(23)、ドラマ「ギークス/GEEKS」(24)、「最高の教師1年後、私は生徒に■された」(23)などがある。今後の出演作に、映画『男ともだち』(11月6日公開)が控えている。
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Information
Netflixシリーズ「ダウンタイム」
Netflixにて世界独占配信中
出演:松岡茉優 仲里依紗 間宮祥太朗 田中みな実 萩原利久 長井短 渡辺大知 中川家礼二 シシド・カフカ 城田優 増子直純 武田創世 泉里香 田村健太郎 篠井英介 天野はな 景井ひな 研ナオコ 野呂佳代 古川凛 安達祐実 風間俊介 Kōki, 永作博美 渡部篤郎
監督:Yuki Saito
エグゼクティブ・プロデューサー:髙橋信一
プロデューサー:三宅はるえ 茂木克仁
脚本:池上純哉
Netflixシリーズ「ダウンタイム」を見る

