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2026年9月17日(木)から9月21日(月・祝)まで、千葉県・幕張メッセにて開催される東京ゲームショウ2026(9月17日ならびに18日はビジネスデイ)。
ホール4-C08のSystem 3ブース(マップではUkiyo Studiosブース内)では、System 3が手掛ける『Putty World 35th Anniversary』のグラフィックデモ版が体験できた。なお、本作はNintendo Switch 2向けタイトルとして、2027年夏ごろに発売予定となっている。
なんだか、どこかで見たことがあるような懐かしいような。
ピンときた古株ゲーマーもいるだろう、『パティームーン』(スーパーファミコン/1993)だ。タイトルは覚えていなくても、スーパーファミコンでこの青いスライムのような主人公・パティーを見た覚えがある人は意外と多いはず。35周年でパティーのゲームをリメイク、あるいはリマスターしたと、この時点では誰もが想像するのでは。
実際の本作のテーマは、「もし1990年代半ばにNintendo Switch 2のハードウェアが存在していたら?」だ。

このテーマを知ってからだと、このゲーム画面の不思議な感覚がわかるだろうか。
1990年代半ば。スーパーファミコンが登場した1990年から始まり、1994年に現れたプレイステーションに全ゲーマーが驚愕したあのころ。あの時代にスーパーファミコンやNINTENDO 64どころかSwitch 2があったら、当時のレジェンドゲーム開発者たちはどうなってしまうというのか。
今回はSystem 3創立者にしてCEOであるMark Cale(マーク・ケイル)氏がみずから実演プレイで、本作のグラフィックとテーマの根幹について解説してくれた。さらに、気になった点についての追加質問にも回答をいただいた。
System 3のCEO、マーク・ケイル氏。『Putty』シリーズはもちろん、『The Last Ninja』シリーズや『Constructor』シリーズなど、数々のタイトルを40年以上にわたり開発、パブリッシングしてきた人物だ。
なお、今回出展されたのは開発初期段階の技術デモ版であり、グラフィックについては今後まだ多くの部分を変更・改善していく予定である点はご了承いただきたい。
35年前のゲームをもう一度作ったら、Switch 1では性能不足になった まずは本作の概要から。開発のきっかけは近年のレトロゲームブームからで、過去のシリーズ作品をいま作ってみようという話だったそうだが、そこで冒頭でも紹介したテーマが出てくる。
「もし1990年代半ばにNintendo Switch 2のハードウェアが存在していたら?」
System 3がフランチャイズしている『
Putty』シリーズの35周年を祝うタイトルに、このテーマを採用。するとどうだろう、1990年代半ばの昔ながらの作りかたがよみがえってきた。
ここでマーク・ケイル氏と開発チームは、当時からある伝統的な手法と現代の技術を融合した、独自の開発環境を構築。そういえばSwitch 2は1990年代に持っていったが、Unreal EngineやUnityは持っていったとは言っていなかった。


なんと、使用キャラクターを1体ずつ3DS Maxで3Dモデルとして制作し、アニメーションを1コマずつレンダリングして2Dスプライトとしてゲームに落とし込んでいる。画像はワイヤーフレームデータのもの。
2Dのゲームだが、キャラのアニメーションは3Dモデルを用意し、昔の開発現場のように1コマずつ用意。こうすることで昔の作りかたをしつつも、最新ハードのSwitch 2に適応したゲームが作れたという。簡単に言っているが、Unityなどを使うのと比べたらめちゃくちゃ時間がかかる作りかただ。
最初に『Putty』が誕生したのが1992年。35周年となる本年に、パティーならではの自身の形を敵キャラなどに変える、イギリスらしいユーモアを見事に再現したアクションの数々がよみがえった。




実際にアニメーションデータも見せてもらった。こちらはパティーが変身し、ロケットを撃つところ。




キャラがスケボーでジャンプするところ。近年のハードらしくスムーズなアニメーションなのだが、なにかが違う。
このぬるぬるとスムーズにアニメーションするが、どこか“ゲームだ”と思わせるものがあり、ゲームの世界に引きずり込まれるような感触。筆者にはものすごく覚えがある。
1980年代の、ファミコンなどのドットグラフィックではない。そのつぎの世代、スーパーファミコンやプレイステーション初期の2Dアクションゲームだ。最新技術で作られたはずのアニメーションが、あの感触を持っている。
本作のパティーはこの通り、表情も豊か。短時間のデモプレイの中だけでも、相当な数のアニメーションパターンが見られた。
アニメーションと聞くと、フレームレートについても気になるところ。Switch 2は60fpsに対応でき、そのことも速くナチュラルなアニメーションにひと役買っている。昔の作りかたで制作されたアニメーションだが、昔を知る人はこのフレームレートに明らかに違いを感じ取れるかと思う。
そもそもフレームレートだけでなく、90年代にあったメモリのきびしい制限がSwitch 2ではないも同然。アニメーションパターンだけでなくボイスも実装された。パティーのためだけに独自の鳴き声のような言語を作り、その言語パターンは2000にも及ぶという。
60fpsと聞いたあたりで、ピンときた人もいるのではないだろうか。そう、この段階でSwitch 1では、本作のアニメーションやグラフィックなどといったこだわりを表現できなくなり、ラグなども発生するようになったという。

Switch 1と2での、グラフィックの比較。当然ながら2のほうがコントラストがくっきりとした、美しいグラフィックになっている。
本作は今回のデモ版から製品版に向けてグラフィックアップデートを重ね、さらにモーションステートやモーフィングデータなど、1フレームごとの情報量を増していくという。これにはキャラクターだけでなく、エフェクトやステージ背景などのアートも含まれる。これだけのグラフィックとアニメーションデータを常駐させるには、かなりのメモリ容量とストリーミング性能が必要。Switch 1では追いつかないのだ。
ではマーク・ケイル氏たちがどうしたかというと、Switch 2専用ソフトにする方向に舵を切った。35年前にSwitch 2を持っていって作ってみたゲームが、現行の最新ソフトに並ぶクオリティーのタイトルになったわけだ。いまやレジェンドとなっている古参開発者の皆さんって、やっぱりいい意味で変態なんだなぁと思う。
TGS会場では青みが強いモニターに出力されていたので確認しきれなかったが、グラフィックが美麗なだけでなく、昔のタイトルによくあった“あたたかみ”も表現されているという。
プレイすると伝わってくる“あのころ”感
マーク・ケイル氏による実演だけでなく、筆者もコントローラーを持って実際に本作をプレイ。開発の最初期段階にあたるテクノロジーデモ版で、グラフィックや敵の挙動、ゲーム内容などは今後変更される予定とのことだったが、このデモ版でも数多くのアクションを体験できた。
LRボタンで左右に撃ち分けられるパンチなど、初代『Putty』と基本的な操作方法も同じ。
実際にゲーム内でアニメーションを見てみると、パンチなどの伸び縮みが明らかに昔のタイトルよりもスムーズかつスピーディーで、テンポよく遊べる。昔は1本しかなかったスティックもいまは2本あるので、右スティックだけでパティーの本体を伸び縮みさせたりと、操作はだいぶ直感的にできる。
右スティックで体を伸ばすことで、狭いところに入ったり段差を上ったりと、自由な移動が可能。
バルーンのように膨らんで空を飛ぶ。操作のほぼすべてがレバーやボタンのワンアクションで出せるので、かなりプレイしやすかった。
道中に出現する敵キャラクターも多彩。今回のタイトルは『Putty』、『Super Putty』、『Putty Squad』のシリーズ3タイトルの世界を統合したものになっているが、そこへさらに約45体のエネミーや、ステージの最後に待ち受けるボスキャラを新規追加したという。
ただでさえ全キャラを作り直しているのに、完全新規のキャラまで追加してくるとは。
Switch 2で1990年代の制限がなくなったことで追加された要素は多く、たとえば先述したパティーの言語はアクションによってさまざまなパターンがあり、今回のバージョンでは収録しきれていないが2000単語にも及ぶという。え、2000?
プレイを進めると、最初に感じた1990年代、その前半くらいに抱いたゲームプレイの感覚がさらによみがえってくる。キャラを動かすこと自体が気持ちよくて楽しい、ゲームをプレイすること自体にワクワクしていたあのころ。話題の新ハードをお年玉などでやっと購入し、どれだけすごいゲームが遊べるのかとワクワクしながら電源ボタンを押していたあのころ。いかん、懐かしすぎて泣きそうだ。
変身だけでなく、スーパーボムを手に入れて画面の敵を一掃したり、体を伸ばすことで侵入可能なルートを見つけたりと、さまざまな形の気持ちよさ、おもしろさが味わえた。
90年代を振り返って知る“気持ち”の大切さ
デモプレイ終了後、マーク・ケイル氏にはブース内で引き続きインタビューに応じてもらえた。以下、その模様をお伝えしていく。
――近年のレトロゲーム再来ブームが1980年代中心となっているところで、1990年代半ばというテーマを選ばれたのはなぜでしょうか。
マーク
個人的に、私が90年代のゲームの見た目が好きだからという部分は大きいですね。ゲームの歴史の中で、いちばん好きな時代です。それに加えて、つぎのレトロゲームブームは1990年代が来るのではないかと考えているのも理由です。
80年代のピクセルの見た目やドットグラフィックについては、すでにやり尽くされている感もあります。つぎのフェイズに入るとして、チームとしても90年代のゲームに取り組んでいこうと考えていました。
――本作のテーマは、いわばSwitch 2を持って35年前にタイムスリップしたようなものではと思っています。当時の開発環境ではやりたかったけど無理だった、Switch 2が来てくれたからこそ本作で実現できた要素はありますか?
マーク
本作の開発は、いわば好機です。90年代は任天堂さんやセガさんのゲームにおける、大きなハイライト、黄金期だと考えています。両社が黄金期だったゲーム史における重要な時期であり、彼らが作ってきてくれたこの時代を再度現代に取り出し、ゲームに導入できる機会だったわけです。
ユーザーの皆さんにも、“90年代のゲーム”をもう一度見たいという想いを持つ人は少なくないと考えています。90年代ゲームならではの魅力というのは、とても大きいものではないでしょうか。
――90年代ゲームだからこその魅力について、どのようなものだとお考えですか。
マーク
80年代は非常に限定された環境でのゲーム開発となっており、90年代はそれらと比較して、まだ制約はあるもののプレイアビリティー的には格段によくなり、ゲームプレイに関しては幅が広くできた黄金期でした。スーパーファミコン(スーパーNES)やメガドライブ(GENESIS)といったハードがあったからこそ生まれた時代ですね。――1988年から1990年の、90年代初頭からの流れですね。
マーク
そのあとプレイステーションが登場する1994年ごろから2000年にかけて、ゲーム史はポリゴンの時代に入っていくのですが、私はこれらよりも90年代の“あたたかみ”があったレンダリング、色合いや光彩がすごく気に入っています。
そして本作でもうひとつ重要なのが、任天堂さんが自社開発したゲームのようなプレイアビリティーを作りたかったという点です。


言われてみればたしかに、本作の画面や色合いからはあのころの任天堂タイトルの“あたたかみ”を感じる。アクションの手触りも、スーファミ時代の任天堂タイトルを思い起こさせてくれた。
――テーマに沿って本作を開発してみて、いまのゲームと35年前のゲームの開発において大きく違うと感じた部分を教えてください。
マーク
あえて言うなら、エンジンがものすごく違うんです。たとえばUnreal EngineやUnityなどは、エンジンの中にすべてが詰まっており、ゲームの作りやすさは大きく変わりました。
私たちは今回レトロなゲームの作りかたに戻ったことで、手動でひとつひとつ作り上げる、とてつもなく時間がかかるゲーム制作を体験しています。当時といまとでは、時間という難しさもまた大きな違いになっていると思います。


これらをひとつひとつ手作り。いまのアセットなどが充実している環境からは想像がつかないたいへんさかと思う。
――35年をさかのぼった本作だけでなく、40年以上ゲーム開発に携わっておられる立場から見て、昔と比べていまのゲームが失ってしまったと感じているものはありますか?
マーク
とても重要な質問だと思います。私が失われてしまったと考えるのは“エモーション(気持ち)”です。現代ではUnreal EngineやUnityといったエンジンで、経験が浅くてもゲームを作れる環境が成り立っています。しかしこれは同時に、エンジンに含まれるさまざまな他人が作ったものをベースにゲームを作るということでもあります。――たしかに共有されたアセットなどの利用は、もはや一般的になっていますね。
マーク
見た感じはすばらしいものになりますが、そこからどうしても深さやあたたかみが抜けてしまいがちです。制作者本人のクリエイティビティーに関する情熱、ゲームに対する情熱というものが、失われていると感じるのです。
最新エンジンによる短縮された作りかたが世界基準になりつつあり、どんな人でもゲーム開発に挑戦できる時代ですが、個人的には大量に世に出ている9割くらいのゲームに気持ちに訴えてくるもの、好きになれるものがなく、プレイしたいと思うゲームを探しにくくなっているように感じます。
――本作で任天堂タイトルのようなあたたかみやプレイアビリティーを追求したのも、そのあたりに理由があるのでしょうか。
マーク
そうですね。任天堂さんのファーストパーティーゲームには、いまなおプレイしたいと思わせるものが残っていると思います。だからこそ、任天堂さんのようなゲームを私たちも作りたいと考えています。
もちろんほかのゲーム会社さんも大ヒットタイトルを世に出していますが、それらですら昔と比べると感情や情熱が少なくなっていると感じることが増えています。自分がプレイしたい、これを買わなければと思うようなタイトルが、昔よりも減ってしまっていると思えるのです。
プレイ中、ヘルメットを被った敵を踏んでからパンチすると敵をなぎ倒しながら滑っていくのを見たときにも、任天堂の雰囲気を感じた。
――そのあたりに関係しつつジョークめいた質問になってしまうのですが、今回は35周年のタイトルを現代で開発されましたが、逆に35年後の未来になると、ゲームはどのように変わると思われますか。
マーク
すごく危険ですが、いい質問ですね(笑)。個人的には、AIがゲームをどんどん作っていく世界になるのではと考えています。
すべてAIで作れることで、ゲーム作りの情熱や技術、感謝や尊さといったものがすべて失われて、何百万というゲームすべてが同じような内容になってしまうのではないでしょうか。
――ディストピア映画みたいな世界じゃないですか。
マーク
手作りのゲームだからこそのよさがすべて失われると考えると、想像の世界とはいえ非常に怖い危機的状況ですね。――そうならない未来を願います……。では最後に、本作『Putty World 35th Anniversary』を通じてゲーマーの皆さんに伝えたいメッセージをお願いします。
マーク
このゲームをプレイすることで、昔ながらのゲームならではのよさというものを改めて感じてほしいと思っています。こうした昔ながらのゲームは多くの人がご存じの通り、実際にプレイすることで初めてよさがわかるという側面を持っています。
本作はプレイすることでキャラクターのクセや動きを学び、経験を積み上げていくことで楽しめるゲームになっています。すべてのプレイヤー、すべての年齢層の皆さんに、どういうものが任天堂さんの黄金期を作り上げてきたのか、どういうものがいいゲームを作り上げてきたのか、それらを感じ取っていただければ幸いです。
