(CNN) 月の表面に最近、彗星(すいせい)か小惑星の破片が激突したことを示す、大きな跡が見つかった。
2024年4月11日から5月22日までの間に、3~6階建てのビルほどの大きさだったとみられる岩石が月の東端に衝突したが、当時はだれも気づかなかった。昨年になって発見されたクレーターは、幅が222メートルでフットボール用コートの長さの2倍以上、深さは43メートルと、スクールバスを3台重ねたほどに達していた。
研究の成果は16日、米科学誌サイエンス・アドバンシズに発表された。太陽系内で見つかった新たに形成されたクレーターとしては、観測史上最大だという。
研究チームは「クレーター形成のモデルによると、この規模の衝突が月面で起きるのは132年に一度」と推測。「統計上めったに起きない現象で、観測できるのは事実上、生涯に一度のチャンスだ」と書いている。
チームはこれを「マゲッチン・クレーター」と名づけた。アポロ計画時代に月のクレーター形成を研究した科学者、故トーマス・マゲッチン氏にちなんだ名称だ。
これまでに月面で発見された現代のクレーターとしては、推定70メートルの直径が最大だった。
月は地球と違い大気で保護されていないため、何十億年もの間に降り注いだ岩石で無数のクレーターができている。
穴だらけの中で新たなクレーターを探すのは、干し草の山から針を見つけるような作業でもある。だが研究チームは、17年前から月を周回する米航空宇宙局(NASA)の探査衛星「ルナー・リコネサンス・オービター(LRO)」の力を借りて、暗い輪に囲まれた大きな明るい斑点をとらえることができた。
チームはLROのデータを基に、衝撃の大きさや周囲への影響を調べた。その結果明らかになったのは、NASAなどの宇宙機関が持続的な探査対象として優先する月では、今も衝突活動が盛んだということ、月面に人が滞在したりインフラを構築したりする場合の脅威としてそれを監視する必要があるということだ。
チームのメンバーの1人で、米テキサス州に本社を置く航空宇宙企業「インテュイティブ・マシーンズ」でLROカメラを担当する主任調査員のマーク・ロビンソン氏は、「17年の運用を経た今もほぼ毎日、出勤して月からの最新の画像を見るたびに驚きがある」と話す。
月の変化を見守る
LROは09年の打ち上げ以来、七つの装置を使って月面の温度、組成、地形、放射線量の分布図を作成してきた。月の極軌道を周回し、高度97キロの上空から2台のカメラで月面を撮影している。

「ルナー・リコネサンス・オービター(LRO)」はマゲッチン・クレーターなどの月面の変化をマッピングする助けになっている/NASA Goddard/Intuitive Machines/Robert Wagner
その結果、これまでに少なくとも1000カ所で新たなクレーター、10万カ所で土砂崩れなどの変化が見つかっている。この中には、月面に衝突した着陸機の跡も含まれている。
多くのくぼみやクレーターは、観測できないほどの微小な隕石(いんせき)で形成される。直径1メートルあまりの岩石による新たなクレーターは毎年約140カ所に現れ、その直径は9メートルほどに達することもある。
科学者らは2~3年ごとにLROの詳細な画像に目を通し、新旧の画像を比べて大きな変化がないかを調べる。
研究チームのロバート・ワグナー氏が、昨年10月24日にマゲッチン・クレーターを発見した。インテュイティブ・マシーンズでLROカメラのデータを扱う画像処理の専門家だ。月面上の明暗の変化を強調した過去と現在の画像を見比べていた時だった。
「私は手を止めて何もかも放り出し、この斑点は一体何だろうと調べ始めた」と、ワグナー氏は振り返る。
