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     東京ゲームショウ2026のセガ/アトラスブースで巨大な存在感を放っていたのが,RGGスタジオの完全新作「STRANGER THAN HEAVEN」(以下,STH)の展示ゾーンだ。

    画像ギャラリー No.001のサムネイル画像 / 喉越しだけじゃない。苦くて旨い,男の一生。「STRANGER THAN HEAVEN」の展示ゾーンで,その神髄を浴びるように味わえた[TGS2026]

     その構成は異例のものといっていい。ゲームを実際にプレイできる「試遊」,作中の5つの時代や世界観を歩いて巡る「ウォークスルーミュージアム」,そして未発表楽曲や映像を大スクリーンと音響で浴びるクローズドな「シアター」と,3つの独立した体験が用意されていた。

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     なぜこれほどさまざまな展示が必要だったのか。実際にブースを巡って感じたのは,いわゆる記号的な分かりやすさに頼らず,主人公である大東 真の一生をまっすぐに描き切ろうとする,本作のただならぬ「覚悟」だった。
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    [2026/09/20 01:21]

    シアターでは人生の苦さと執念を「歌」で浴びた

     ブース内に設置された専用シアターでは,主人公の大東 真が「興行師」として関わるショービジネスの世界観と,作品を彩る音楽群が15分ほどの映像に凝縮されていた。

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     ゲーム中にも挿入されると思われる映像とともに,城田 優さんやディーン・フジオカさん,Official髭男dismの藤原 聡さん,Adoさん,Tori Kellyさんといった,ジャンルも国籍も超えた豪華キャスト陣の歌唱を“浴びる”体験だ。上映が終わった瞬間,静まり返っていた場内に自然と拍手が湧き上がった。

     「STH」の楽曲は,いわゆるミュージカル調でも,大正・昭和歌謡のヒップホップアレンジでもない,鮮烈な印象を残すものだった。

     特に胸に残ったのは,藤原さん演じる「タカシ」のピアノの弾き語りだ。曲から伝わってくるのは,人生のほろ苦さ,やるせなさ。そして,ままならない現実に対する,いい意味での「諦めの悪さ」のようなものだった。

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    作中に登場するアーティストたちのポスターも貼られていた

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     「龍が如く」シリーズのような現代劇とも,いわゆる時代ものとも違う。「STH」という作品が持つ独自の空気感と,展開されるドラマの重みを,まずは音楽の形で叩きつけられた気がした。夜の闇と生々しい痛み,「大東真」という人間の呼吸

     そして日本のファンが本作をプレイできる初の機会となった今回,試遊版ではコンバット(戦闘)と,限定的ながら街歩きを体験できた。

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     これまでの試遊版との大きな違いは,「夜の闇」の深さを感じられたこと。都市が整備され,どこもかしこも明るい現代の街並みとは異なり,表通りにすら濃い影が落ち,緊迫感,そしてクライム&バイオレンスな気配が漂っている。敵が近づいてくると大東が自然に武器を手にする動作も,その緊迫感を後押しするかのよう。

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     コンバットのシステムや手触りについては過去記事が詳しいが,しっかりガードを固めつつ,タイミングよく弾いて体勢を崩すのが基本となる。
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    [2026/06/23 12:00]

     今回,新たに日本刀や金槌が使えるようになっていたが,最も印象深かったのはバールの手応え。

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     その重々しい一撃は,「敵をなぎ倒して爽快」どころの話ではない。直接ヒットしていない周囲の敵までが恐怖で腰砕けになり,そこに次々とフィニッシャー(強力な追い打ち)を叩き込んでいける。それは爽快な体験というより,相手の恐怖や痛みまでもがコントローラ越しに伝わってくるかのようだった。

     なんとも生々しい作りだ。状況や年代によっては,体が思うように動かないもどかしさすらも感じられるのかもしれない……ふとそんなことが頭をよぎった。

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     また,アクションの合間に垣間見える描写もなかなか細かい。店で注文したビールをコップに注ぐなり,一気に飲み干し,母国語である英語でつぶやく。そして店を出るときには「ごちそうさん」と挨拶する。

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     幼年期をアメリカで過ごし,日本の極道に染まっていく大東の「染まっていく部分」と「どうしても染まり切らない部分」。その微妙な境界線とアイデンティティが,ふとした仕草の端々から立ち上っていた。

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    5つの時代,2人の男の“縁”をたどるウォークスルーミュージアム

     そして誰もが自由に見ることができたウォークスルーミュージアムは,最もアクセスしやすい展示でありながら,今回最も衝撃を受けた展示だった。

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     1915年の小倉から始まり,呉,ミナミ,熱海,そして1965年の新宿へ。本作が描く「5つの時代」が壁面に表現され,その合間にキャストやスタッフの映像が流れているという構成なのだが,熱海の展示まで進んだときにハッとさせられた。

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     光の当たり具合によって顔が見えにくくなっている真城らしき男と,その姿を見つめる大東の立ち位置。TGS 2026でのインタビューによれば,空間全体で2人の男の切り離せない“縁”を表現する展示意図があったとのことだが,2人の関係性の変化を匂わせているようにも見える……。

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     そしてその先に待っていた1965年 新宿の大東の姿を見て,筆者は後頭部を殴られたような衝撃を受けた。この時代の大東は,これまでアップ中心の見せ方で全身が分からなかったが,そこには,長い時を経て擦り切れてしまったかのような男がいた。

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     なお,付近には,大東と真城の背中に入る入れ墨のデザインも展示されていた。大東は「白頭鷲と龍」,真城は「源頼光の酒呑童子退治」。

     和彫りの世界では異質な,アメリカ的モチーフの白頭鷲と,定番の龍。それを一つの背中で対峙させる大東の図柄は,2つの文化を背負い,そのせめぎ合いのなかにいる彼の生き方をストレートに表しているように思える。

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     一方,真城の「源頼光の酒呑童子退治」は,絶対的な悪や時代の波に立ち向かう武勇と秩序の象徴にも見える。あるいは,異物を排そうとする執念。これはどう受け止めていいものなのか……。

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     シアターで熱量を浴び,試遊で痛みを確かめ,ミュージアムで時の移ろいと因縁を目撃する。3つの展示を巡って確信したのは,本作が一筋縄ではいかない「複雑な味わい」を持った作品だということ。

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     スッキリした喉越しだけが通り過ぎていくようなゲームではない。試遊中に大東があおっていたビールのように,ずっしりと苦く,けれどその奥に確かな旨味がある。本作は恐怖や痛み,もどかしさといった負の感覚までをも,大東の人生の一部として体験させてくれそうだ。

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     そんな複雑な味わいの全体像を届けるには,これだけ手を尽くす必要があったのだと納得させられる。TGS 2026会場にていち早く,文字どおり本作の「空気に触れる」ことができた人は,本当に幸運だったのかもしれない。

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