日本人の今を映す鏡
だがここで注目すべきは、前年比の数字そのものではなく「年単位で待たされる新車購入」が当たり前になった結果、ユーザーのマインドがどう変質したかである。
「近隣のディーラー数軒へ行き、値引きを競わせ、翌月ぐらいには納車され、家族でドライブに行く」という、ふた昔前は当たり前だった消費サイクルが失われた結果、ユーザーはますます冒険ができなくなった。1年も2年も待つからこそ「絶対に後悔したくない」「リセールで大損したくない」という心理が働き、結果として「最も無難な選択肢」あるいは「並んででも手に入れるべき鉄板銘柄」へと雪崩を打つことになった。
数字の裏にあるのは自動車流通の構造の疲弊と、それに適応せざるを得なくなったユーザーの防衛本能なのだ。
見渡す限りのトヨタ勢と生活実用車、そして一部の資産型高級車。一見すると退屈きわまりないランキングだが、その実、これほど現代日本の空気感を残酷なまでに映し取った鏡もない。
ロマンよりも実利。理想よりも保身。そして冒険よりも、取りあえずの正解。それが――繰り返しになるがクルマに限らず、多くの日本人における直近のマインドセットなのだろう。
だがそんな防衛的なマーケットだからこそ、あえてその潮流にあらがうような個性派モデルや、トップ10の強固な壁のすぐ外側で意地を見せる新型マツダCX-5のようなチャレンジャーたちの戦いぶりには、ひと際強いシンパシーを覚えずにはいられない。
数字の裏にある「日本の今」を冷静に見据えたうえで、それでもあえて“正解”から外れてみること。リセールうんぬんを気にせず、己の“好き”を貫き通すこと。それこそが今、情報過多で何かと息苦しい時代における、クルマ好きに残された最強最後のぜいたくなのだろう。
(文=玉川ニコ/写真=トヨタ自動車、本田技研工業、向後一宏/編集=関 顕也)
新型「CX-5」のインテリア。マツダは同モデルを「日常からレジャーまで、多様なライフスタイルにマツダらしく寄り添う一台」と紹介しており、セールスにおいては、新規顧客が半数を超えている点が特徴という。
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トヨタ車以外で気を吐いているのが、ホンダのコンパクトミニバン「フリード」。非トヨタでは唯一の“トップ10常連”で、ホンダ車のなかでも登録台数はトップとなっている。
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