Samuel Boivin / Shutterstock.com6月に7万円台を突破した日経平均は、その後AI関連株の上昇が止まり、調整に入った。そんななか、注目のAI関連株を含む55銘柄が、10月1日に株式分割を行うという。それらをリストアップし、そのなかの注目の8銘柄のファンダメンタルズを解説する。
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7月以降、AI関連株の上昇がぴたりと止まった。
そのため、日経平均株価は6月の7万円超えからピークアウトし、現在は6万5000円前後を推移している。だが、1年前は4万円前後を推移していたことを考えると、いまだに最高値圏内を維持していると言っていいだろう。
俯瞰してみると、コロナ禍以降、増収増益が続く企業が多かった。だが、今期はコスト高の影響で減益を見込む企業も現れている。予断を許さない状況だ。
そんな中でも、55銘柄が10月1日を効力発生日として分割を行う。特に今回は、ここ数年、絶好調の日経平均を牽引してきた、あの半導体銘柄も含まれている。
「株式分割」とは何か?国内では100株を1単位とする「単元株制度」により、個別株投資のハードルは高い。そんななか、東京証券取引所(東証)は株式の投資水準について、最低購入金額は「50万円未満」が望ましいとしてきた。
そこで、昨今では「株式分割」を実施する企業は多い。株式分割とは1株を小分けにすることだ。例えば1株3000円の銘柄を10株に分割する場合、1株300円となる。すると最低購入価格が、1単元で30万円だったものが、3万円になるのだ。
なお、分割によって株価は低減するものの、株数そのものは増える。そのため、分割の前後で投資家が保有する株式の”価値”は変化しない。「株式分割」を行う企業の狙い企業が株式分割を行う主な目的は、さらなる投資を呼び込むためだ。分割後はより少ない金額で購入できることになり、新規で購入を考える投資家にとっては魅力的な銘柄となる。
また、企業が成長を続け、株価が大幅に上昇してしまった場合に、一定の流動性を確保するために分割が行われる場合がある。特に日本市場では単元株制度を導入しているため、最低購入金額が高くなった銘柄の株式分割は効果的だ。
以下が10月1日に株式分割を行う、55銘柄の一覧リストだ。また、下記リストのなかの太字が、筆者が注目する7銘柄となっている。この7銘柄については記事後半にて、それぞれのファンダメンタルズを解説していく。
1. 大和ハウス工業|総合デベロッパーへの多角化に成功
効力発行日:2026年10月1日
市場:東証プライム
分割比率:1/2
配当利回り:3.90%
株主優待:グループが運営する宿泊・商業施設などの商品券
大和ハウス工業は10月1日を効力発生日として2分の1の株式分割を実施する。投資単位当たりの金額を引き下げ、流動性や投資家層の拡大を図る。株価は株主還元への懸念から、今期は下落傾向にある。だが、最低投資金額は4500円前後を推移しており、50万円に近い。
同社は戸建事業における地方23道県からの撤退が話題となったばかりだ。大都市圏を中心とする太平洋ベルト沿いにリソースを集中させる。大和ハウスが手がけるのは5000万円以上の高額物件であり、地方でのニーズ減少が見込まれている。
なお、同社はハウスメーカーとして認識されているが、住宅・商業・ホテル・データセンターと手広く事業を展開しており、実態は総合デベロッパーだ。売上高の規模は5兆円台で、単独で3割以上を占める超える事業は無い。米国では戸建事業を拡大しており、ポートフォリオの多角化に成功している。
2. 日本ハム|コスト高を乗り越えられるか
効力発行日:2026年10月1日
市場:東証プライム
分割比率:1/3
配当利回り:2.70%
株主優待:ハム、ソーセージなど
日本ハムも同様に株価を引き下げ、投資家層を拡大することを目的に株式分割を実施する。現在の株価は約6000円で、最低投資金額は50万円を超える。それが3分の1になるので、20万円前後で購入可能になる。
25年度の売上高は1兆4574億円で事業利益は683億円だ。海外売上高比率は約2割。今期は第1四半期時点で増収、事業利益の増益だったが、最終利益は税負担の増加により減益となった。通期では増益を見込んでいる。
なお、モルガン・スタンレーMUFG証券がコスト高を背景に同社の目標株価を引き下げたことで、株価は軟調に推移している。海外売上高比率が高くないこともネックのようだ。
3. 東京エレクトロン|株価はピークアウトも業績は好調
効力発行日:2026年10月1日
市場:東証プライム
分割比率:1/5
配当利回り:1.18%
株主優待:なし
半導体製造装置大手の東京エレクトロンは5分の1の株式分割を実施する。現在の株価は5万円台であり、最低投資金額は500万円を超える。分割によって少しでも投資しやすい環境を整える。50万円未満の基準を認識しつつも、市場の動向などを総合的に判断し、5分の1に決めたという。
同社の株価は6月に7万円台を推移していたが、その後は下落し続けた。既にAI関連株特需の恩恵を受けたと判断できる。
ただし今期の業績は好調だ。データセンター向けAIサーバーの需要拡大が半導体需要を引き上げ、同社の業績も伸びた。第1四半期の売上高は前年度比33.3%増の7324億円で、営業利益は同46.1%増の2114億円。業績次第では株価も再び伸びるかもしれない。
効力発行日:2026年10月1日
市場:東証プライム
分割比率:1/15
配当利回り:2.70%
株主優待:電子マネーなど(新設)
東京海上HDは15分の1の大胆な株式分割を実施する。現在の株価は約8000円で、最低投資金額は80万円程度。分割後は10万円未満で購入できるようになる。併せて株主優待を新設しており、個人投資家を呼び込む狙いがあることは明らかだ。
同社の業績は右肩上がりで上昇し続けてきた。国内で主力とする損害保険がやや軟調だが、生命保険事業が伸長した。
長期では少子高齢化による支払額の拡大が懸念材料だが、同社はM&Aを通じて海外事業を拡大させており、収入に占める割合は国内事業と同等だ。米投資会社のバークシャー・ハザウェイ(Berkshire Hathaway)との資本業務提携により共同でM&Aを進めるとしており、海外事業の拡大が見込まれる。
効力発行日:2026年10月1日
市場:東証プライム
分割比率:1/2
配当利回り:2.63%
株主優待:電子マネーなど(新設)
三井住友FGは株主優待を新設しつつ、株式分割を実施する。東京海上と同様に投資家層の拡大が目的とみられる。三井住友FGの株価はコロナ禍以降、長期で伸び続けており、現在では6000円台後半を推移する。4年前のおよそ4倍にも成長した。
業績も拡大し続けており、25年度の経常収益は10.8兆円規模、経常利益は2兆円を超えた。大規模金融緩和が24年3月に終了し、日本は「金利ある世界」に突入した。貸出金利が上昇するため、銀行にとっては本業の稼ぎが増えることを意味する。
また、同社がクレカを軸に銀行口座・ポイントを管理できるサービスOliveは、利用者が増え、個人リテール領域の拡大に貢献している。
効力発行日:2026年10月1日
市場:東証プライム
分割比率:1/2
配当利回り:2.30%
株主優待:優待カード
三越伊勢丹HDは投資しやすい環境を整え、新たな株主層を拡大することを目的に株式分割を実施する。現在の株価は3000円台前半。分割後は10万円台で購入できるようになる。
今期第1四半期の売上高は前年度比3.8%増の1289億円、営業利益は同20.6%増の189億円で好調だ。中国政府による日本への渡航自粛が影響するとみられたが、最近では円安を背景にインバウンド向け全体の百貨店売上が伸びており、中国人客の減少を補っている。また、昨今の株高・不動産価格の高騰を背景に国内の準富裕層やパワーカップルが増えており、国内客による貢献度も大きい。
東急や西武など中間層向けの百貨店は衰退する一方、同社が手がける伊勢丹新宿店と日本橋・銀座の三越は富裕層やインバウンド向けが盤石だ。苦しい局面を抜けたと判断できる。
効力発行日:2026年10月1日
市場:東証プライム
分割比率:1/3
配当利回り:0.00%
株主優待:なし
キオクシアHDは投資家層の拡大を目的として3分の1の株式分割を実施する。現在の株価5万円台で最低投資金額は500万円を超える。東証の推奨値は50万円未満だが、大胆な分割にならないよう抑えた。
同社は東芝のメモリ事業から派生した企業であり、AI特需の恩恵を受けた銘柄の一つとして認識されている。株価は25年まで1万円を下回っていたが、AI需要拡大により今年6月には10万円を突破した。しかしその後は失速し、5万円台に落ち着いた。
27年3月期第1四半期の売上高は前年度比4倍の1.7兆円台だが、株価は6月に上がり過ぎたと判断され、伸びていない。また、財務健全性の改善と投資を優先しているため、無配を貫いている。
まとめ
以上、10月に株式分割を行う55銘柄の内、筆者が気になる大物銘柄7つについて解説した。いずれもプライム上場の中でも超大物銘柄で、昨今の株価上昇により分割を決断した。今回は半導体・金融関連の銘柄が目立つ。東京エレクトロンやキオクシアHDなどの半導体関連株は事業成長が続くものの、株価の面ではAI特需でピークアウトしたと判断できそうだ。
日本ハムは人口減少が続く国内を主力としており、海外展開に課題が残る。筆者は個別株投資において、成長性や海外比率、配当利回りを重視している。そうした点から、今回の銘柄の中では比較的配当利回りの大きい大和ハウス工業や三越伊勢丹HD、東京海上HDが気になるところだ。
現段階で10月1日以降に分割を実施する銘柄の数は少ない。だが株価次第では新たな発表があるかもしれない。今後も引き続き分割銘柄をピックアップしていく予定だ。

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