2026年09月28日 14時40分
AI

意思決定AIモデル「Jev」に「ポケットモンスター 赤」をプレイさせる実験が行われ、37時間40分のプレイを経て殿堂入りを果たしました。ゲームクリアまでにJevが下した判断は合計1万6150回で、AIの利用料金は合計1.65ドル(約260円)だったとのことです。
Jev Plays Pokémon Red
https://jev-pokemon.vercel.app/
JevはAI企業のTypeSafe AIが開発した意思決定モデルです。一般的な大規模言語モデル(LLM)が得意とする文章生成とは異なり、あらかじめ用意された複数の選択肢から高速に判断する処理を得意としており、入力100万トークン当たりの料金は0.042ドル(約6.5円)で出力は無料となっています。
ChatGPT共同開発者がLLMとは異なる方法で処理するAIモデル「Jev」を開発、GPT-5.6 Terra級の性能でタスクを安価かつ超高速に実行可能 – GIGAZINE

Jevに「ポケットモンスター 赤」をプレイさせる実験を行ったのは、AIサービスの開発企業「Frigade」のCTOであるクリスチャン・マティーセン氏です。マティーセン氏は「Jevは判断を高速かつ安価に繰り返せるため、ゲームのように大量の選択を連続して行う用途で性能を試せる」と考えたそうです。
ただしJevが完全に自力で攻略したわけではなく、ゲームボーイのエミュレーターからRAMを読み取り、現在地や手持ちポケモン、戦闘状況、画面に表示された文章などを取得する専用プログラムが用意されていたとのこと。さらに「進行する」「回復する」「レベルを上げる」「ポケモンを捕まえる」といったその場で実行可能な選択肢と、タイプ相性や予想ダメージ、目的地までの距離などの判断材料をJevに提示し、Jevが次に実行する行動を選択する仕組みでした。

マップ上の細かな移動にはA*と呼ばれる経路探索アルゴリズムが使われており、例えばJevが「目的地へ向かう」と判断すると、専用プログラムが目的地までの移動経路を計算して実際のボタン入力を行います。一方で、どこへ行くのか、誰に話しかけるのか、どのポケモンを捕まえるのか、戦闘中にどの技を使うのか、ポケモンを入れ替えるのかといったゲーム進行に関わる判断はJevが担当しました。名前の入力や買い物、回復、技を覚えるかどうかといった選択もJevが決めたとのこと。

また、ゲームの進行に必要な大まかな目標と複数の小目標が攻略ガイドとしてあらかじめ設定されています。例えば次に訪れるべき場所などは攻略情報としてJevに与えられていました。
マティーセン氏によると、開発当初はJevに十字キーやAボタンなどを1回ずつ直接選ばせる方式も試したそうです。Hacker Newsで「『シオンタウンへ東に進む』のような抽象的な選択肢ではなく、どのボタンを押すかだけをAIに判断させるものだと思っていた」と指摘された際、マティーセン氏は「最初はまさにそう実装していました。残念ながらJevはマサラタウンから出られませんでした」と説明しています。
攻略中には同じ行動を繰り返して進めなくなる場合もあるため、ゲームの状態が変化しなかった選択肢を記録し、別の行動を選びやすくする仕組みも導入されています。同じ失敗を繰り返した場合には別の選択肢を選び、それでも抜け出せない場合は最後に到達した節目から再開します。Jev単体の判断能力だけに任せるのではなく、さまざまな周辺システムで支える構成というわけです。
最終的にJevは約1660回の戦闘を経験し、パーティーが全滅した回数は16回。四天王には15回挑戦しており、最も苦戦した場所はチャンピオンロードだったとのこと。殿堂入り時のパーティーはレベル83のリザードン、レベル62のゴローン、レベル45のニドクイン、レベル44のスピアー、レベル39のゴースト、レベル29のオコリザルでした。約3920万入力トークンを使ったにもかかわらず、Jevの利用料金は1.65ドル(約260円)に収まっています。

プロジェクトのソースコードはGitHubで公開されており、誰でも実験を再現できるようになっています。ただしリポジトリにROMは含まれておらず、実行には利用者自身で「ポケットモンスター 赤」のゲームデータを用意する必要があります。
GitHub – christianmat/jev-pokemon: Jev, an AI decision model, plays Pokémon Red. It beat the game in 37h 40m. · GitHub
https://github.com/christianmat/jev-pokemon
