スペイン・マドリードで、87歳の住民が70年住んだ家を強制退去させられたことをきっかけに、家賃高騰や住宅不足に抗議するデモが起きている。
【画像】87歳のマリカルメンさんが強制退去させられる様子と抗議活動
AP通信によると、強制退去されたのはマリカルメンと呼ばれているマリア・デル・カルメン・アバスカルさんだ。
年金で生活しているマリカルメンさんは、不動産投資ファンドから年金では支払えないほどの大幅な家賃の引き上げを求められるなど、賃貸契約をめぐる争いが続く中、9月23日に強制退去させられた。
マリカルメンさんが、ストレッチャーで救急車に乗せられて病院へと搬送される映像はスペイン国内外で広く拡散し、怒りや批判を巻き起こしている。
強制退去の後にマドリードなどでデモが行われ、参加者は鍵を鳴らして立ち退きに抗議。入居者の権利保護強化や、家賃高騰や立ち退きを抑制する対策などを求めた。
さらに、週末の26日に開催された抗議活動には数万人が参加し、一部の参加者はマドリードの中心にあるプエルタ・デル・ソル広場にテントを張って泊まり込み、翌27日にも抗議活動が続けられた。
プエルタ・デル・ソル広場にテントを張って抗議活動を続ける市民(2026年9月27日)
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マリカルメンさんの闘い
エル・パイスによると、マリカルメンさんの住んでいたアパートは父親が1956年に賃貸契約をして、マリカルメンさんは両親が亡くなった後も、家賃統制の下で部屋を借り続けていた。
しかしCNNによると、2018年に不動産会社「ウルバヘスティオン(Urbagestión)」がアパートを購入したことで状況が一変。
ウルバヘスティオンはマリカルメンさんの家賃を月額500ユーロから2650ユーロへと引き上げて、契約を終了させようとしたという。
その後、家賃は1650ユーロまで引き下げられたが、年金が月額1350ユーロのマリカルメンさんには支払えない額だった。
マリカルメンさんは裁判を起こし、一審では勝訴したものの、控訴審の裁判官が判決を覆し、最高裁も所有者側の主張を認めた。
立ち退き直前には、匿名の人物がマリカルメンさんの家賃を支援すると申し出たが、ウルバヘスティオンは契約継続を拒否したという。
住宅価格高騰と広がる怒り
スペインの都市部では、住宅危機(ハウジング・クライシス)が大きな問題になっている。
低所得者層が多い地域を再開発し、中・高所得者層が流入することで元々の住人が住めなくなる「ジェントリフィケーション」によって住宅価格が高騰する一方、手頃な価格の住宅が不足して、社会に強い怒りが広がっている。
その原因の一つとされるのがオーバーツーリズムで、バルセロナでは短期民泊として利用されるアパートが増えて住宅が不足し、家賃が急激に上がっているとして市民の抗議活動が起きてきた。
スペインの不動産情報サイト「イデアリスト」によると、マドリードの1平方メートル当たり家賃は10年前の2016年の8月と比較して、ほぼ倍になった。
マリカルメンさんの強制退去がきっかけになった抗議活動は、マドリードだけではなく、バルセロナなどでも行われた。
バルセロナで開かれた、マリカルメンさんの立ち退きに抗議する集会(2026年9月23日)
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住宅は「人権」。不動産投資の規制を求める声
マリカルメンさんは現在入院している病院で撮影された映像で「私は自分の家を守れませんでしたが、他の人たちにも闘い方を知ってもらいたくて、闘ってきました。私の家は私の人生でしたが、出ていかなければいけなくなりました。でもそれは、私が闘いをやめるという意味ではありません」と語っている。
今回のマリカルメンさんの強制退去を受けて、不動産投資の規制や、住宅を基本的人権と捉えるよう求める声が高まっている。
ガーディアンによると、スペインの労働組合「労働者委員会(CCOO)」のウナイ・ソルド氏は、「家は人が暮らすためのものであって、大企業がビジネスをするためのものではない」と述べ、不動産投資が利益にならない税制を作るよう求めた。
手頃で安心して暮らせる賃貸住宅普及を目指す「国際賃借人労働組合」事務局長のダン・ニカンダー氏は、「これは、住宅を人々が暮らす家ではなく資産として捉えて金融商品化する問題の一部です」とNBCの取材にコメント。
「住宅は基本的人権です。商品であるべきではありません」と強調し、不動産投資を規制する責任が政治家にはあると述べている。
人権団体アムネスティ・インターナショナルスペインも「マリカルメンさんのケースは孤立した出来事ではありません。スペインの何千もの世帯が耐えている苦しみの一つにすぎないのです」と声明で述べ、政府に行動を起こすよう求めている。
