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    東南アジアを流れるメコン川には、世界最大級の淡水魚が生息している。写真は、体重300キロの巨大な淡水エイを放流する救助チーム。(COURTESY OF CHHUT CHHEANA, UNIVERSITY OF NEVADA, RENO / WONDERS OF THE MEKONG)

    東南アジアを流れるメコン川には、世界最大級の淡水魚が生息している。写真は、体重300キロの巨大な淡水エイを放流する救助チーム。(COURTESY OF CHHUT CHHEANA, UNIVERSITY OF NEVADA, RENO / WONDERS OF THE MEKONG)

     カンボジア東部の都市、コンポンチャムでのこと。漁の最盛期である2026年1月上旬、チア・セイラ氏がメコン川沿いを車で北上していたところ、携帯電話が鳴った。ある漁師が、体重100キロ近いメコンオオナマズ(Pangasianodon gigas)を捕まえたという用件だった。メコン川の広大な流域の、車で数時間ほどかかる場所からかかってきたものだ。絶滅の危機にある巨大魚を救助するために結成された全国緊急対応チームの一員であるセイラ氏は、車をUターンさせた。

     数時間後、セイラ氏と同僚は現場に到着し、近絶滅種(Critically Endangered)に指定されているそのメコンオオナマズを計測し、タグを付けた後、川に戻した。すると再び電話が鳴った。

     今度は首都プノンペン近郊からだ。そこで漁師たちが、カンボジアの「魚の王」として知られ、同じく近絶滅種の体重約80キロのパーカーホ(Catlocarpio siamensis)を誤って捕獲していたのだ。再び緊急対応チームが動員され、ほどなくしてこの巨大魚も川へと戻された。

    「かつて、巨大魚に関する報告が1件もなかった時期もありました」とセイラ氏は語る。「今では、電話がひっきりなしにかかってきます」

    淡水魚を研究するホーガン氏(左)が、メコン川で誤って捕獲された巨大魚の放流を手伝っている。(COURTESY OF ZEB HOGAN, UNIVERSITY OF NEVADA, RENO / WONDERS OF THE MEKONG)

    淡水魚を研究するホーガン氏(左)が、メコン川で誤って捕獲された巨大魚の放流を手伝っている。(COURTESY OF ZEB HOGAN, UNIVERSITY OF NEVADA, RENO / WONDERS OF THE MEKONG)

     絶滅しつつあると考えられてきた種にとって、この急増は驚くべきことだ。かつてメコン川全域に豊富にいた巨大魚は、乱獲やダム建設、定期的な水位変動の乱れによって命を奪われてきた。6カ国にまたがり、世界最大の内陸漁業を支えるメコン川には、地球上のどの河川よりも多くの種の巨大魚が生息している。そのなかには体重が270キロを超えるものもいる。(参考記事:「メコン川に大異変、世紀の低水位を記録、深刻な食料危機の恐れも」)

     だが、ここ数十年で、その数は激減した。

     しかしカンボジアでは、自然保護活動家たちが粘り強く活動を続け、漁業コミュニティーや地方当局と緊密に連携し、メコン川流域での協力体制を強化してきた。2025年後半には、カンボジア全国を対象とするホットライン、「メコン・フィッシュ・アプリ」、専任の緊急対応チームによって、それまでは散発的だった救助活動が、全国規模の組織的な取り組みへと変貌を遂げた。

     2025年11月中旬から2026年2月上旬にかけて、チームは誤って捕獲された大型魚92匹を生きたまま放流した。内訳はメコンオオナマズ24匹、パーカーホ23匹、タイガーバルブ(Probarbus jullieni)32匹、カイヤン(Pangasianodon hypophthalmus)13匹だ。

     30年にわたってメコン川の魚を研究してきた、米ネバダ大学リノ校の魚類生物学者であり、ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラー(探求者)であるゼブ・ホーガン氏にとって、この変化は驚くべきものだった。「長年、これらの種が絶滅に向かう様子を見守ってきた身としては、確認される数が減るどころか増えているのは、ほとんど想像もできなかったことです。しかし、それは現実であり、興奮しています」(参考記事:「ギャラリー:地味と言わないで!実は多様な淡水魚 写真18点」)

    ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラーであるゼブ・ホーガン氏が、新しいスマートフォンアプリがメコン川での自然保護活動に変革をもたらしている現状について解説する。カンボジア王立農業大学と共同開発されたこのアプリによって、漁師たちは絶滅危惧種の混獲をほぼリアルタイムで記録できるようになった。(VIDEO BY STEFAN LOVGREN)

    約300キロのメコンオオナマズの味は?

     巨大淡水魚は、地球上で最も絶滅の危機にひんしている動物の一つだ。ホーガン氏によれば、巨大淡水魚とは、「体重90キロ以上、または体長180センチ以上に成長する種」を指す。

     一部の地域では、こうした巨大淡水魚が1970年以降に95%以上も減少している。その一例が、体長6メートルを超えることもあったハシナガチョウザメ(Psephurus gladius)で、2000年代に絶滅していたと宣言された。(参考記事:「世界の巨大淡水生物、40年間で約9割も減っていた」)

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