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     2025年12月11日のThe Game Awardsで,「Order of the Sinking Star」が発表された。2016年の「The Witness」以来,10年ぶりとなるJonathan Blow氏の新作だ。倉庫番風のブロック押しを基礎に,進行とともに4種類のパズルメカニクスが組み合わさっていく見下ろし視点の作品で,1000以上のパズルを収録し,通常クリアで約250時間,全パズルを解くなら500時間を超えるとされている。プラットフォームはPC,PlayStation 5,XBOX Series X|S,Nintendo Switch 2,Nintendo Switchで,2026年10月8日に発売される。
    「Order of the Sinking Star」のワールドマップ

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     Thekla代表でゲームデザイナーのJonathan Blow氏は,2008年にXBOX 360のダウンロード販売プラットフォームであるXBOX Live Arcadeで「Braid」を出し,個人規模の開発者がコンソールのダウンロード販売で成功しうることを証明した人物である。
    「Braid,Anniversary Edition」の画面

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     世に出した作品は,キャリア最初の商業作品を含めても3本しかないが,ゲームデザインや業界のあり方についての氏の発言は,たびたび業界の議論そのものを作ってきた。

     4本目のリリースまでに10年がかかったのは,氏が同時にプログラミング言語Jai※を作っていたからでもある。
     「The Witness」の開発中にC++への不満から着手したもので,「Order of the Sinking Star」はJaiで書かれた自社製エンジン上で動作する。ゲームを作るために言語から作るという遠回りだ。

    ※ Jai……Blow氏が2014年から開発を続けているプログラミング言語。ゲーム開発における生産性と実行性能の両立を狙ったもので,一般公開はされていない

    「The Witness」は3Dのオープンワールドに線を引くパズルで,「Braid」とは似ても似つかない。

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     そんなBlow氏の実績をビジネス的な視点でみると,確実に稼げる道をあえて選んでいないように感じる。
     たとえばBraidの発売後,明らかに影響を受けたと思われるフォロワー作品は数多く出たが,Blow氏は「Braid 2」を作らなかった。作っていれば,Braidほどとはいかなくても一定数の販売は約束されただろうし,発表時点で資金を集めることは容易だったはずだ。
    「Braid,Anniversary Edition」のキーアート

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     The Witnessは発売初週に累計500万ドル超を売り上げ,Braidの初年度売上を1週間で上回った。こちらも続編を作っていれば,同規模といわないまでもある程度の売上は期待できたはずだが,Blow氏はそれを良しとせず,10年かけてまったく別の新作を手掛けている。
    「The Witness」の島の一角。湿地に渡された通路の各所に,線を引くパネルが据えられている

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     外野からみていても安易なお金稼ぎには走らないという姿勢が分かるだろう。こういった人は業界に皆無とはいわないが,ゲームがビジネスとして根付いた現在では,珍しい側の人であることは間違いない。そんな氏がゲーム開発にどう向き合い,何を意識しているのかなどをChinaJoy 2026の会場で聞いた。
    Jonathan Blow氏。Thekla代表でゲームデザイナー。1998年の「Wulfram」でキャリアを始め,2008年に「Braid」,2016年に「The Witness」を発表した。2014年からはプログラミング言語Jaiの開発も続けており,「Order of the Sinking Star」はJaiで書かれた自社製エンジン上で動作する

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    4Gamer:
     よろしくお願いします。「Order of the Sinking Star」そのものについて細かいことを聞くと,本作の特性上,どうしてもネタバレを避けられません。ですので,ゲーム開発というものをどう考えているのかといった話を聞かせてください。

    Jonathan Blow氏(以下,Blow氏):
     分かりました。

    4Gamer:
     あなたの過去の発言では,ゲームにおけるストーリーにはあまり力をいれていないようでしたが,それは今も変わっていないですか。

    Blow氏:
     2008年ごろに私がやった講演では,ゲームにおけるストーリーがなぜ好きではないか,何が問題だと思っているかを話しています。ですが,こういった考え方は変わっていくものです。

     実際「Braid」は「The Witness」より少しストーリーが多かった,というより,ストーリーがより明白でした。
     そして「Order of the Sinking Star」は,そのどちらよりもずっとストーリーが多いです。それが「Order of the Sinking Star」にふさわしかったですし,うまく機能したからですね。

    4Gamer:
     まずゲームのアイデアがあって,そこからシステムを作り,そのシステムの上にストーリーを乗せていく。開発はそういう手順で進めていくのでしょうか。

    Blow氏:
     おおむねそのとおりですが,ゲームごとに変わります。「Braid」の場合,ストーリーが何になるかは最初からおおよそ分かっていました。ストーリーが基本アイデアの一部だったわけです。ただ細部は,ワールドや,そこで起きたことに基づいて後から詰めていきました。
     
     「Order of the Sinking Star」は,複数の世界が寄り集まってくる話,ということだけは最初からなんとなく決めていました。ただ非常に漠然としていて,キャラクターが誰で,何をしているのかが分かるところまで持っていくには,相当な作業が必要でしたね。

    4Gamer:
     作品全体を通して,ゲームにおけるストーリーの重要度をどのくらいに置いていますか。

    Blow氏:
     そのゲーム全体の目的が何かによって,かなり変わります。私はメカニクス優先のデザイナーなので,ストーリーがメカニクスの邪魔をすることは絶対に避けたい。

     というのも,ストーリーのことを一切気にせず,メカニクスだけをやると決めたとしても,それをうまく形にするのは非常に難しいからです。数多く試さなければならないですし,努力しなければならない。そこにストーリーを先に決め打ちしてしまうと,できることに影響が出て,ゲームの形がどこかで制限され,メカニクスの発見を妨げかねないわけです。

     だから私は常に,まずゲームプレイが何なのかを見つけて,そのうえでストーリーがそこに合うようにします。

    4Gamer:
     「Order of the Sinking Star」でも,その順番は同じだったのでしょうか。

    Blow氏:
     今回のゲームには,うまい巡り合わせがありました。メカニクスの多くがキャラクターに結びついているんです。特定の能力を持つキャラクターがいて,その能力を軸にキャラクターのストーリーを設計できる。そうすればメカニクスと関係づけられるんです。それでも,非常に難しい作業でしたけどね。

    「Order of the Sinking Star」の画面。見下ろし視点で,広場に複数のキャラクターがいる

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    4Gamer:
     設計の話が出たので,もう1つうかがいたいことがあります。ゲームにおける確率の考え方です。
     たとえば任天堂の多くのゲームは,計算し尽くされていて,ここまで行けばこのタイミングでこれが出る,というのが必ず起こるように作られています。

     一方で,ランダムで何かを起こして偶然に頼っているゲームもあります。そういうゲームは,偶然のおかげでものすごく面白くなることもあれば,うまくいかないこともあります。そうした確率の要素を,あなたはどの程度自分のゲームに入れますか。

    Blow氏:
     これは明確に2つの異なるスタイルですね。デザイナーはどちらか一方をやるものだと思います。求めている結果が違うので。

     ランダムでないほう,非常に決定論的なゲーム……いや,これは正しい言葉ではないですね。どちらも決定論的ではあるので(笑)。
     とにかく,ランダムを使わないほうの話ですが,この場面をこう体験させたい,こういう効果を出したい,というものがはっきり決まっているなら,そのとおりに起きるよう作ればいいだけです。
     一方,よりダイナミックな種類のゲームでは,狙っているものがそこまで具体的ではありません。何が起きるかを,あらかじめ決めきれないですから。

    4Gamer:
     今お話ししていたダイナミックなほうというのは,具体的にどういうゲームをイメージしていましたか。

    Blow氏:
     良い例が「Spelunky」※です。これももう古いゲームかもしれませんが,レベルをランダムに生成して,そこにいろいろな種類のオブジェクトやモンスターがいる。その数が十分にあるので,プレイヤーのやることに反応して互いをトリガーし合い,驚きが生まれます。

     どちらもデザイナーがやるに値する,正当なやり方です。ただ,同時に両方をやろうとすると混乱するので,どちらかを選ばなければならないでしょう。とはいえ,どちらも非常に有用だと思います。

     私の作品はすべて,あらかじめ作り込んだ非ランダム型でしたが,「Order of the Sinking Star」の次に作るゲームは,ランダム型になるかもしれません。

    ※ Spelunky……Derek Yu氏が2008年に発表したアクションゲーム。2012年にHD版が登場している。ランダム生成されるダンジョンを攻略していく

    4Gamer:
     「Order of the Sinking Star」の次にランダム型を作るかもしれないというのは,ゲーム作りに対する考え方が変わったということですか。それともそんなに深い話ではなく,ただ新しいことをやってみたいということですかね?

    Blow氏:
     同じことを何度も繰り返すのが好きではないので,新しいことをやりたい,というのが大きいです。
     それと,実はランダム寄りの領域にあるゲームのアイデアがあって,もうプロトタイプを作ってあるんですよ。本当に面白いので,フルゲームに仕上げたいですね。

     時間はかかるので,来年ということはありませんが。10年以内にはやるつもりです。だからこれは考え方の変化ではなくて,ただ私が新しいことを探求し続けて,自分が理解していることや得意なことにそれを足していくのが好きだ,というだけの話ですね。

    中毒にさせるゲームは,絶対に作らない

    4Gamer:
     ここまでは作る側の話でしたが,遊ぶ側を意識した話もうかがいたいです。
     プレイヤーにゲームを続けてもらう,最後まで遊んでもらううえで,最も重要な要素は何だと考えていますか。

    Blow氏:
     ……人を中毒にさせておくこと,ゲームに貼り付けておくことを軸に設計されたゲームがありますよね。私はそういったものが嫌いです。絶対に作りません。
     開発者カンファレンスに行くと,報酬をどう配置すれば遊び続けさせられるか,みたいな話をしている人がいますが,ああいうものが嫌いなんです。

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    4Gamer:
     では,どうあるべきだとお考えですか。

    Blow氏:
     私にとっては,自然でなければならない。楽しめるぶんだけ自然に遊べばいいし,こちらがきちんと仕事をしていれば,おのずとよいゲームになっていると思います。
     プレイヤーは,ゲームの中にある実際のアイデアと,ゲームが与えてくれるもので楽しむべきであって,ゲームがプレイヤーを操って引っ張っていくものではないでしょう。

    4Gamer:
     なるほど。あくまでもプレイヤーの選択を尊重する仕組みであり,プレイヤーを作り手がコントロールするのは間違っていると。

    Blow氏:
     この件については,もう1つ言っておきたいことがあります。すごく興味深いと思っていますが,XBOXに実績という概念が加わり,PlayStationにはトロフィー機能が実装されました。ああいうものは,人工的にプレイヤーをゲームの中で引っ張り回すための仕組みです。

     ところが,任天堂のゲーム機にはそういうものはありません。とても良い決断だと思いますし,同時に驚きでもあります。もしかしたら彼らも私と似たようなことを考えているのかもしれませんが,そこは分かりません。ただ,あの決断は評価しています。

    4Gamer:
     一方で,ビジネスとして考えたときに,1分でも長くプレイヤーに遊んでもらうようにするというのが主流になるのは,ある意味,仕方ないのではないでしょうか。

    Blow氏:
     そうかもしれないし,そうでないかもしれないですね。
     ヒットしているゲームのデザイナーを直接知っていて,彼らがなに考えているかも理解していますが,実際のところ,そういう発想ではないんです。

    4Gamer:
     具体的には,どなたのことでしょうか。

    Blow氏:
     たとえば「Mewgenics」は私の友人のEdmund McMillen氏※が作っていて,彼は「Braid」にも少し関わっていました。彼は人にたくさん遊ばせようとしているのではなく,ただ中身がぎっしり詰まった非常に大きなゲームを作っているだけです。そして,そういうゲームを遊びたい人がそれを評価して,遊びに来る。

     少なくともPCではヒット作のほとんどがそういう形だと思います。「Subnautica」や「Slay the Spire」「Mina the Hollower」など。最近のインディーとしては非常に大きなヒットですが,どれもプレイヤーを操るような発想で設計されていないと思います。

    ※ Edmund McMillen氏……「Super Meat Boy」(2010年)や「The Binding of Isaac」(2011年)で知られるゲームデザイナー。「Mewgenics」は同氏が長年開発を続けてきた新作にあたる

    4Gamer:
     その考え方だと,スマートフォンで遊ぶような基本無料のゲームは,あまり作りたくないということでしょうか。

    Blow氏:
     惹かれませんね。「Order of the Sinking Star」をモバイルで出す可能性はあります。まだ決めていませんが,仮に出すとしても,このゲームをそのまま移植するだけです。ああいう要素は一切入れません。

    4Gamer:
     市場としては,かなり大きいですよね。

    Blow氏:
     ああいうゲームで非常に大きな金額を稼いでいる会社があるのは理解しています。
     ただ,私はやりたくない。……そうですね,多くの場合あまりポジティブなことだとは思わない,と言いかけたのですが,断言するのは難しいです。

     人の時間をただ浪費させるやり方かもしれないですが,楽しんでいる人がいるのも事実です。特に序盤,まだ夢中になっていない段階では,その人はポジティブな時間を過ごしていますし,それは良いことかもしれません。

     結局のところ,デザイナーはそれぞれ,何が正しいかを自分で判断しなければならないのだと思います。私自身に関していえば,あの種のゲームは決して作りません。好きではないので。

    4Gamer:
     私も子供のころはゲームにものすごくハマって,何時間も遊んでいました。ただ実際に自分が親になって,子供が何時間も中毒的にハマっていくのを見ると,これはどうなんだろうと思うところはあります。
     一方で,ゲームを作っている人はなるべくたくさん遊んでもらいたいはずで,そこの線引きが難しいのではないでしょうか。

    Blow氏:
     難しい質問ですね。デザイナーとして,私は当然,ゲームの中には体験するにも遊ぶにもポジティブで面白いものが入っていて,人はゲームから何かを学ぶと信じています。ただのシューターだと本人が思っていても,遊んでいれば何かを学んでいる。だから新しいゲームを始めたばかりのころは,ほとんどの場合,その良い段階にいるはずです。

     ただ,どこかの時点で,手応えのない体験に変わって,新しいものが何も得られなくなるかもしれません。そこは確信がありませんし,時間の長さだけで判断できるものでもないでしょう。

    4Gamer:
     ご自身にそういう経験はありますか。

    Blow氏:
     たとえば,これはずいぶん昔の話ですが,私は「Counter-Strike」をかなり遊びました。
     構造的には非常に単純なゲームですが,何ラウンドも何ラウンドも遊んで,たぶん3000時間くらいにはなると思います。そのうちの大部分は,ネガティブな意味で中毒になっていたわけではありません。マルチプレイだから面白い状況が生まれて,常に何か見どころがあったんです。
     とはいえ,学校の勉強をしなければならないのにゲームがそれを邪魔しているなら,それはやはり良くないですよね。(笑)

    4Gamer:
     作り手の側からそこに線を引くのは,やはり難しそうです。

    Blow氏:
     まったくそのとおり,難しいところです。……幸い,自分の作るゲームに関しては,その問題に直面してこなかったんです。私のゲームはシングルプレイのパズルゲームで,終わりがあります。終わりまでいけば,多少は再プレイするかもしれないですが,もうやり切ったことになる。それでいいわけです。

     キャリア最初の商業作品はそうではなくて,マルチプレイゲームでした。あれは今言ったような話に近かったかもしれません。ただ,大成功したゲームではなかったですし,その問題は起きませんでした(笑)。

    4Gamer:
     リプレイ性の高いジャンルだったら,どうでしょう?

    Blow氏:
     もしリプレイ性がいくらでもあるようなジャンルで作るのなら,デザイナーが倫理観を持って振る舞い,良い決断をすることが重要だと思います。というのも,ゲームが成功したとき――ビデオゲームの魔法は,非常に多くの人に届きうるということです。しかも今はダウンロードできるので,パッケージを作る必要すらない。

     つまりデザイナーとして成功する作品を作れば,その1つ1つの決断が非常に多くの人に影響するわけです。だから真剣に受け止めるべきだと思いますし,私はいつもそうしています。もっとも,私のゲームは1万時間遊ぶようなゲームではありませんけどね(笑)

    インディーとは自分で決められること

    4Gamer:
     インディーゲームという言葉についてもうかがわせてください。人によって指しているものが違っていて,最近は特にそう感じます。あなたのなかでのインディーゲームの定義があれば教えてください。

    Blow氏:
     定義には,あまりこだわらないんですね。何かの意味をめぐって争うのは,生産的とは思えないので。
     代わりに,インディーという考えについて自分が価値を置いているものなら言えます。ただ,同意しない人がいても議論したくはないです。私には私の価値観がある,というだけの話ですから。

    4Gamer:
     価値を置いているのは,どういう点でしょうか。

    Blow氏:
     私にとって重要なのは,その人たちが自分のやりたいことをやれているか,自分で決断できているか,創作の自由を持っているか,という点です。たとえパブリッシャからいくらか資金をもらっていても,その答えがイエスならインディーだと思います。私にとってはそこが重要なところです。

     パブリッシャから資金をもらっていて,そのパブリッシャが主人公をどう設計するかも指示する,みたいな体制であれば,それは,たとえ小さなチームであってもインディーだと私は思いません。

    4Gamer:
     なるほど,チームや予算規模の大きさではなく,創作の自由を保てているかどうかがキーということですね。これはパブリッシャによる縛りの話ですが,ファンの期待も別の縛りになりえますか?
     ゲーム開発者の過去作を見て,同じようなものを求めている層も一定数いると思います。

    Blow氏:
     その問題を解くために,私はいくつかのことをやってきました。まず1つ目は,一度も続編を作ったことがない。だから,人は私にそれを期待しないんです。
     同じものを反復するシリーズを作れば,そういうファン層がついてくるわけです。

     もう1つは,10年かけてゲームを作ると,今ゲームを遊んでいる人の多くは前の作品を覚えていない,ということです。ずいぶん昔ですから,また同じものが来るとは期待しないでしょう(笑)。

    4Gamer:
     いや,結構覚えている人は多いと思いますよ。

    Blow氏:
     かもしれません(笑)。ただ,この問題への対処としてもう1つ良い点があります。「Braid」は2Dプラットフォーマー,「The Witness」は3Dで線を引くゲーム,そして今回は倉庫番スタイルで,見下ろしのカメラでブロックを押していくゲームです。画面を一瞬見ただけで明らかに違う。
     この3本のあいだで同じものを期待するのは,非常に難しいと思います。そもそもそれが何を意味するのかも分からない。

    「The Witness」。浅瀬に乗り上げて朽ちた船と,草に覆われた船体の一部

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    4Gamer:
     確かに並べてみるとまったく違います。

    Blow氏:
     同時に,私のゲームを実際に遊んで気に入ってくれている人には,共通の筋が見えるとも思っています。すべてに通じる美学がある。ただ,それはスクリーンショットを見て分かるものではないので,人が要求してくるようなものではないと思うんです。

    4Gamer:
     一定のヒット作を持ちながら,続編を作らなくていいというのは,クリエイターとしてはかなり恵まれているように思えます。
     外からのプレッシャーで,嫌々とまでは言わないにせよ,続編を作らなければならない状況になる人もいるのではないでしょうか。

    Blow氏:
     ええ。それが,インディーであることと大きな会社にいることの違いの1つです。
     昔はよく,「自分の仕事の大きな部分はビジネス的に悪い決断をすることだ」と冗談で言っていました。

     ビジネス的に良い決断というのは,シリーズを続けて続編を作ることですね。もうみんながその名前を知っていて,1作目が良いという評判も聞いている。私はそれをやったことがないです。いつか作るかもしれませんが,これまでは一度もありません。新しくて違うことをやりたいからです。

     大きな会社にいる人には,その自由がないかもしれない。自由を得ようとすれば新しい仕事を探さなければならないし,それは簡単ではありません。

    4Gamer:
     話題は変わりますが,いろいろなデザイナーと話をしてきて,自分が遊びたいゲームを作りたいという人もいれば,自分が作りたいゲームと遊びたいゲームは全然別だという人もいます。あなたはどちらでしょうか。

    Blow氏:
     絶対に前者ですね。自分が遊びたいものを作ります。しかも私は,ほかのゲームがやっていない,メカニクス的に違うことをやろうとしているので,なおさら重要になります。

     それが自分の遊びたいものでなかったら,本当に奇妙な話ですよね。どうやって成立するのかすら分からないです。

    4Gamer:
     雑に言ってしまうと,自分が楽しめればそれでいい,というある意味で我が強いとも受け取られる考えかたかもしれません。

    Blow氏:
     もちろん,ほかの人にも遊んでほしいので,どうすれば魅力的になるかを考えます。ただ,それも自然な形でやりたいわけです。
     変わったゲームなのに,人を騙して好きにさせるための要素を足すのではなく,この変わったものがなぜ面白くて,格好よくて,時間を使う価値があるのかを人に伝える方法を,作業として考える。これは決して簡単ではありません。

     ときにはゲームの説明の仕方を考えることもありますが,多くの場合それはデザインそのものに入り込んでいきます。レベルを設計して,これの何が良いのかがプレイヤーに伝わるようにするという形です。

    4Gamer:
     少し概念的な話になりますが,あなたにとってゲームは作品ですか? それとも商品でしょうか。

    Blow氏:
     どちらでもありえます。どう作られたか,どういう意図で作られたか次第です。
     私がゲームを作るときは,間違いなくアートを作ろうとしています。もちろん,買ってもらいたいとも本当に思っています。それで食べているわけですから。ただ,設計しているときの決断にそれが影響しないようにしています。影響させてしまうと,それは商品になってしまうので。

     頭の中で切り分けていて,最初のうちは自分が遊びたいもの,一番面白いものだけを設計する。そして終盤になってから,どう人に伝えるか,どういう人たちがこのゲームに興味を持ってくれそうかを考える。今のところ,それでうまくいっています。

    4Gamer:
     なぜ,それでうまくいくのでしょう? 開発者の多くはそうありたいと思っていても,なかなか実現できていないと感じています。

    Blow氏:
     うまくいく理由の一部は,何を作るかの決め方がほかの人と違うからだと思います。商品という発想で入ると,実は目立つのが非常に難しい。商品を売ってお金を儲けたいというのは,多くの会社が考えることです。そうなるとどうなるか。市場で今何が熱いかを見よう,前の四半期に何がよく売れたかを調べて,それと似たようなものを作ろうとなるわけです。

     全員が同じ材料をもとに判断すれば,決断は似てきて,ゲームも似通ってきて,互いに際立つのが難しくなります。それに,個人の創造性の火のようなものも,やはり持ちにくくなるわけです。

    4Gamer:
     そういうゲームを強く批判する人もいますね。

    Blow氏:
     一部のインディーはこの件について非常に強い態度を取っていて,ああいうゲームはひどい,存在すべきではない,といったことをいう。私はそうは思いません。

     商品を作るビジネスにいるなら,それでいいんです。人が求めるものを作ることで,社会と世界に貢献しています。多くの雇用を生んでいますし,多くの家族を支えています。それも良いことです。

    4Gamer:
     そういったゲームが市場のすべてにならなければいいわけですね。

    Blow氏:
     もしゲーム開発者のやることがそれだけになったら,そのときはゲームが死に始めるかもしれないですね。新しいことが何も見つからなくなるので。
     だから,お金を失うことをいとわず,誰も好まないかもしれない愚かなことをやる創造的な人も必要になるわけです。そういうところから,いずれ大きなゲームになっていく新しいアイデアが出てくるわけですから。

    4Gamer:
     まさにインディースピリットという感じですね。そんなあなたが,ゲームを作っていくうえで,一番大切にしていることは何でしょうか。

    Blow氏:
     それは非常に難しい質問ですね。

    画像ギャラリー No.010のサムネイル画像 / [インタビュー]なぜ続編を開発しないのか。Jonathan Blow氏に聞く,10年に1本というゲームの作り方

     ……どんなゲームにも,最初に持っていたアイデアがあります。これから始まるすべての作業を始めようと思えるくらい,自分を興奮させたアイデアです。
     経験があればあるほど,それが膨大な作業だと分かっています。商品としてのゲームではなく創作としてのゲームの話をしているのなら,そのアイデアは,これだけの努力に見合うと自分で分かるくらい特別なものだったはずなんです。

    4Gamer:
     そういったアイデアには,どう向き合っていくのでしょうか。

    Blow氏:
     そのアイデアに忠実であり続けること,それを覚えていること,そして何が良くて,何が美しいのかを覚えていることが大切です。
     プログラムに時間がかかりすぎ,見た目も良くなくて,ゲームプレイの手触りも良くないというときでも,ビジョンを思い出して,もとのアイデアにしがみついて,確実に実現させなければなりません。

     非常に難しいことですが,それができたときは遊べば結果がはっきり見えるでしょう。ああ,これは本当に何かを成し遂げているな,と思えるはずです。

    4Gamer:
     逆にそれができないこともあるわけですね。

    Blow氏:
     そうです。私自身のキャリアで最初の商業作品では,それができていませんでした。アイデアはあったのに,忘れてしまったんです。

     当時は新人でしたし,ゲーム作りが必ずしも上手ではなかった。作っている最中に,面白かったものが何だったのかを忘れてしまったわけです。まあまあのものは作りましたけれど,今やっているようなものではありませんでしたね。

    4Gamer:
     最初にいったように,「Order of the Sinking Star」の細かいことはまったく聞いていませんが,あなたのゲームを待っている人は,ここまでの話にこそ共感を覚えて,期待感が高まったのではないかと思います。

    Blow氏:
     楽しんでもらえたらいいですね。「Order of the Sinking Star」は10月8日に発売されます。気になった人は,ぜひ実際に遊んでみてください。

    4Gamer:
     では最後に,日本の読者に伝えたいことがあればお願いします。

    Blow氏:
     日本のゲーマーは,ときにゲームに対して非常に真剣だということを知っています。だから,私もゲームを作ることに対して非常に真剣で,良いものを作るために最善を尽くしているということを知ってほしいです。

     もちろん,私が作るパズルゲームは万人向けではありません。アクションゲームだけを遊びたい人もいるでしょう。ただ,こういうものを遊びたい人,題材を非常に真剣に扱ったものを求めている人にとっては,このゲームはそれを,ほかでは見られない形でやっていると思います。楽しんでもらえたら嬉しいです。

    4Gamer:
     ありがとうございました。

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