
伊東四朗(C)日刊ゲンダイ
【芸能界クロスロード】
スポーツ界は選手引退の季節。テニスの錦織圭が19年のプロ人生に幕を下ろし、プロ野球ではヤクルトの石川雅規投手ら多くの選手が現役を引退。セレモニーも行われた。
芸能界では、俳優の伊東四朗が1日の公式サイトで「卒寿(90歳)をもちまして引退させていただきます」と報告。来年6月15日の誕生日を区切りに芸能界を引退すると明言した。
共演歴のある久本雅美は「本当にすごい」とリスペクトするなど、後輩は引退を惜しみながらも「お疲れさまでした」と偉大な先輩の決断にエールを送った。
スポーツ選手の引退理由は「体力の限界」とはっきりしているが、芸能界の引退はさまざまだ。昔からあるのが寿引退。山口百恵や堀北真希、フリーアナの夏目三久も有吉弘行との結婚を機に家庭に入った。
自分の意思で引退した歌手もいる。安室奈美恵は40歳、森昌子は61歳の時に歌手生活に終止符を打った。
「歌を届けるのが歌手の仕事。思うような声が出ない、ステージで歌う体力、気力が薄れたことからケジメをつける人も少なくない」(音楽関係者)
数々のヒット曲を持つちあきなおみは夫の死をきっかけに1992年に歌手活動を休止。以後、公の場にも姿を見せず、事実上の引退といわれている。
かつて、引退してもその後数年で復帰したのがキャンディーズ個々のメンバーと都はるみだった。
「忙しさから解放されるために引退という形を取り、自由を謳歌した。その後、復帰しても歓迎ムードでした」(音楽関係者)
芸人では上岡龍太郎が「芸能生活40周年を迎えたら完全隠居する」と公言した通り58歳で引退。何度となく復帰の噂もあったが、3年前81歳で他界した。
その上岡を慕っていた島田紳助は暴力団との交際が発覚して自ら責任を取るように身を引き人気絶頂期に引退していった。
問題を起こし引退に追い込まれたタレントもいた。
江角マキコは落書き騒動などスキャンダルに巻き込まれ2017年に50歳で潔く引退した。
自ら起こした事件が引き金となり引退に追い込まれたのが旧ジャニーズのアイドル、山口達也と中居正広だった。
成宮寛貴は「相棒」人気もあり、俳優として脂の乗っていた2016年に薬物使用疑惑を報じられ引退を発表。姿を消したが、2年前の11月、大阪・ボートレース住之江のトークショー登場をきっかけに俳優の仕事を徐々に再開。昨年、配信ドラマに出演後、日本テレビの「メシドラ」で地上波復帰を果たした。
近年の芸能界の引退は「負」のイメージが強いが、伊東の引退は負を払拭。すがすがしささえ感じる。
「俳優は年を重ねても年齢に応じた役ができる。あえて引退宣言など必要ない」(演劇関係者)といわれるなか、宣言した理由を伊東は「黙ってそのままやめちゃうのも、卑怯だから発表しただけ」とシンプルな考えも好感が持たれる。
伊東は浅草で芸を磨き三波伸介・戸塚睦夫と結成した「てんぷくトリオ」で一世を風靡。三波、戸塚が若くして他界後、タレントとして活動。小松政夫と共演し、ベンジャミン伊東として「電線音頭」でお茶の間を沸かせた。その後も軽妙なしゃべりで「伊東家の食卓」など冠番組を持つ人気者になった。俳優でも朝ドラ「おしん」の父親役で名優の片鱗を見せ、晩年は俳優に重心を移し主役、脇役問わずドラマに欠かせない存在感を放った。
「無事これ名馬」の俳優として数々の足跡を残した伊東。引き際もお見事だ。
(二田一比古/ジャーナリスト)
