【前に追従 VS 吸収運転】信号バラバラの道、先に着くのは?【渋滞シミュレーション Vol.8】
前に追従 VS 吸収運転。
コメント欄でいただいたリクエスト
「ランダムな信号変化をする道で、前に追従するか渋滞吸収運転をするべきか」
を試しました。青になる時刻がバラバラな信号が6つ並ぶ道で、同じ時刻に入る2台を比べます。
最初の信号で、上は強めにブレーキ、下はゆっくり止まりました。信号の変化は上下で同じです。下は渋滞吸収運転で、車間をあけ、早めに減速します。次の信号で、上はブレーキを踏み、下は踏まずに通過しました。
5つ目の信号では、上が先に赤で止まり、下は着くとすぐ青に。最後の信号でも上が先に止まりましたが、下も追いつき、ほぼ同時に出発しました。
上が先にゴール。約4分半の道のりで、上が2.8秒早く着きました。強めのブレーキは上4回、下0回。すぐ後ろを走る車のブレーキも、下の方が約3割少なくなりました。信号の並びや車の来かたを変えた200通りでも、ゴールの差はほとんどが数秒でした。
なお、車間をあけるだけ、ブレーキをゆるくするだけでは、後ろの車のブレーキは減りませんでした。減ったのは「車間をあけて、早めにゆっくり減速する」の両方がそろったときです。
次回もコメント欄でいただいたリクエストから「信号の間隔がバラバラ。帰りは?」です。
■ この動画のシミュレーション[計算結果]
・道路: 1車線・約2.4km。信号が6つ(間隔は250〜400mのばらばら)
・信号: 周期90秒・青45秒・黄3秒(残りは赤)。青になる時刻は信号ごとにばらばら。上下で同じ
・到着: 1時間あたり500台(上下で全く同じ)。車は時速50kmで走りたい設定
・運転: ほかの車はすべて、車間1.0秒・加速2.0m/s²・ブレーキ2.0m/s²(街なか向けの設定)
・上(前に追従): 注目車もほかの車と同じ運転
・下(渋滞吸収運転): 注目車だけ、車間2.5秒・加速1.0m/s²・ブレーキ1.0m/s²(車間をあけ、早めにゆっくり減速する)
・この回の注目車(同じ時刻に入る2台): 上は4分28秒、下は4分31秒。上が2.8秒早く到着。止まった回数はどちらも3回(1つ目・5つ目・6つ目の信号)
・強めのブレーキ: 上4回、下0回
・すぐ後ろの5台の強めのブレーキ(合計): 上18回、下12回
・200通り(到着する車の並びと、信号の間隔・青になる時刻を変える)で試した結果:
・着く時間の差(下−上): 中央値2.6秒。5秒以内が170/200。下が先に着いた回はなし。下が青に間に合わず赤を1回多く待ち、1分以上遅れた回が10/200
・注目車の強めのブレーキ: 上3.5回、下0.63回(下が少ない回が195/200)
・止まった回数: 上3.1回、下2.8回(同じ回数が108/200)
・すぐ後ろの5台の強めのブレーキ(合計): 上17.7回、下13.0回(約3割少ない。下が少ない回が174/200)
・どの運転が効いているか(下の注目車の運転だけを変えて200通り。強めのブレーキの回数):
・車間だけあける(車間2.5秒、加速・ブレーキは上と同じ): 注目車2.3回、後ろの5台17.2回
・ブレーキだけゆるく(車間は1.0秒のまま): 注目車2.8回、後ろの5台17.5回
・車間をあける+加速もブレーキもゆっくり(この動画): 注目車0.63回、後ろの5台13.0回
→ 片方だけでは後ろの車のブレーキはほとんど減らず、両方がそろったときに約3割減った
・計算の刻みは0.05秒。半分(0.025秒)にしても、強めのブレーキの回数は同じで、着く時間の差の違いも1秒未満でした(20通りで確認)
■ 見方
・車の動きは「IDM」(前の車との距離と速度差でアクセル・ブレーキを決める)というモデルで計算しています。車の位置を手で描いてはいません。赤信号では停止線で止まり、黄信号は無理なく止まれるときだけ止まります。
・「強めのブレーキ」は、減速が1.5m/s²を超えた回数です(0.5m/s²未満に戻ったら次を数える)。急ブレーキではありません。上のふだんのブレーキの強さ(2.0m/s²)でも数えられます。
・注目車自身の「上4回、下0回」は、下のブレーキをゆるく設定したことによる部分が大きい数字です。設定で直接決めていない「すぐ後ろの車のブレーキ」の方が、渋滞吸収運転の効果を表しています。
・渋滞吸収運転でも、黄色に変わったときなどに、まれに強く踏むことがあります。
・ブレーキの強さ・車間の値は説明用に決めた値です。渋滞吸収運転は、もとは高速道路の渋滞を和らげる運転として提案されたもので、この動画は信号のある一般道で、リクエストに合わせて比べたものです。
・反対方向の車・右左折・歩行者は計算していません。道路の長さ・交通量・信号の時間は説明用の設定で、特定の道路の予測ではありません。
■ 参考文献
・渋滞吸収運転(東京大学・西成活裕教授らの提案)と、2009年の実証実験(警察庁・JAF、中央道上り小仏トンネル付近。渋滞吸収車8台で、渋滞中の平均速度が時速約50kmから約80kmに回復)
日刊工業新聞 ニュースイッチ(2016年5月7日)「「渋滞学」の研究、がん治療につながる!?」
https://newswitch.jp/p/4578
・渋滞吸収走行は、自分が早く着くためより、後ろの車のための運転という解説
ベストカーWeb(2021年4月13日)「え…車間距離を開ければ渋滞が減る!?? 高速道路の渋滞は誰が悪いのか」
https://bestcarweb.jp/feature/column/269694
・追従モデル(IDM)
Treiber, Hennecke, Helbing (2000)
https://arxiv.org/abs/cond-mat/0002177
■ シリーズ「渋滞シミュレーション」
Vol.1 事故も信号もないのに、なぜ止まる?
Vol.2 24台 VS 20台
Vol.3 制御1台 VS 制御なし
Vol.4 車線変更 VS 変更なし
Vol.5 交互合流 VS 早め合流
Vol.6 順番に青 VS 一斉に青
Vol.7 すぐ発進 VS 3秒遅れ
Vol.8 前に追従 VS 吸収運転(この動画)
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