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    ミドルサイズSUVの「CX-5」とコンパクトSUVの「CX-30」

     マツダの屋台骨であり、初代が生まれてからこれまでの間、幅広い層の人気を集めてきたCX-5。そのCX-5が、2025年春に新型になり3代目となって登場した。驚いたのは、現時点でのパワートレーンは、直列4気筒2.5リッターガソリンエンジンにマイルドハイブリッドシステムを組み合わせた「e-SKYACTIV G 2.5」の1種類のみということ。

     ディーゼルエンジンは廃止され、2027年には高効率な直列4気筒2.5リッターガソリンエンジン「SKYACTIV-Z」と、独自のハイブリッド技術を組み合わせたパワートレーンが登場する予定だという。新たな技術も楽しみではあるが、新しく登場したマイルドハイブリッドは、はたしてどんなパワートレーンなのだろう?

     実はこの「e-SKYACTIV G 2.5」は、2026年7月にマイナーチェンジしたCX-30にも搭載されることとなった。両者はサイズ感もキャラクターも違うモデルではあるものの、どちらのモデルも検討する人もいるはず。ということで、新しいマイルドハイブリッドを搭載したCX-5とCX-30を乗り比べ、その魅力も探ってみることにした。

    左のCX-30も右の新型CX-5も、同じガソリンエンジン「e-SKYACTIV G 2.5」を搭載しているが、ボディサイズ以外にどんな違いがあるのだろうか? 乗り比べてみた同じエンジンでもキャラクターはまったくの別物

     まずは、ミドルサイズSUVの基準点ともいえるCX-5からステアリングを握る。走り出して最初に感じたのは、その圧倒的な静粛性と上質感だ。イグニッションをONにした瞬間から、微振動の少なさやアイドリングの静かさがドライバーへと伝わってくる。

     日常の街乗り領域では、マイルドハイブリッドによるトルクアシストが効果的。発進時から十分なトルク感があり、大柄なボディをスムーズに走らせてくれる。CX-5のような重いクルマでもスイスイ走れるように調律されたパワートレーンのセッティングは、実用域での扱いやすさを最優先にしていることがよく分かる。

    マイルドハイブリッドによるトルクアシストが効果的に感じた

     一方、これまでマツダの代名詞だった「クリーンディーゼル」のパワフルな走りに慣れているユーザーからすると、このマイルドハイブリッドはどう映るのだろう? 結論からいえば、純粋なパワー感やトルクの太さという点では、ディーゼルから乗り換えても大きな不満は出ないのではないかと感じた。

    直列4気筒2.5リッターガソリンエンジンは、最高出力131kW(178PS)/6000-6200rpm、最大トルク237Nm/3800-4000rpmを発生する

     しかし、ディーゼル特有の「底から湧き上がるようなトルク感」や「トルクの余裕から醸し出される安心感」といった雰囲気があるかというと、そうではない。「ディーゼルならではの、ゆとりある走りの雰囲気が好きだ」というこだわり派にとって、このマイルドハイブリッドがその五感のニーズを満たせるかどうかは、乗り手の好みに委ねられる部分かもしれない。

     また、室内空間がこれだけ静かになった分、追い越し加速などで一歩踏み込んでパワーを引き出そうとした瞬間、エンジン音が思ったよりも車内に響いてくる傾向がある。普段が静かなだけに、高回転域でのエンジン音の主張が少し目立つ印象だ。

    発進時から十分なトルク感があり、大柄なボディをスムーズに走らせてくれる

     乗り心地に関しては、先代に比べると一段と良くなった印象。サスペンションは、芯にちょうどいいコシ感が残されていて、非常に扱いやすく安心感がある。ハンドリングもマツダらしさがきちんと残っていて、ステアリングを切った分だけ思った通りにラインをトレースでき、とにかく運転しやすい。唯一気になったのは、タイヤの硬さによって路面からのコツコツとした微振動を感じる場面があったことくらい。

     後席に乗り込んでみると、その圧倒的な広さに驚かされる。乗降性も優れており、お尻を滑り込ませるようにして乗り込んでみると、163cmの私でも頭をルーフにぶつける心配がなかった。私がドライビングポジションを決めた状態で、後席に座ってみると、膝前のスペースには、肘から拳までの長さほどの圧倒的な空間があり、足を簡単に組めてしまう。頭上も拳4個分がすっぽり入るほど広大だ。これだけの広さと快適性があれば、ファミリーユースでのロングドライブも同乗者から不満が出ることはまずないだろう。

    圧倒的な広さに驚かされた

     ここで、購入を検討する上でのリアルな視点にも触れておきたい。実は今回試乗したパワートレーン「e-SKYACTIV G 2.5」を搭載するCX-5の「Gグレード」は、価格帯としてCX-30の上位グレードとガチンコでバッティングする。しかし、CX-5の「Gグレード」の内装に目を移すと、元々走りの質感が格上げされていることも相まって、インテリアのシンプルさにやや物足りなさを感じるのも事実だ。「もうワンランク、高級感が欲しい」と感じる人もいるかもしれない。

    スイスイ走れるように調律されたパワートレーンのセッティングはさすが

     特に気になったのはシートバックに使われているファブリック素材で、実車を見ると少し毛羽立ちやすそうな印象を受ける。長期的に乗ることを考えると、比較的早い段階で使用感が出てしまうのではないかという懸念が残る。

     もし、お財布に少し余裕がある、あるいはCX-5が持つワンランク上の上質感に惚れ込んだのであれば、もう少し予算を足して、インテリアの満足度も高まる上位グレードを選択肢に入れるのもいいかもしれない。4人乗車が多く、荷物をたくさん積みたいというファミリー層であれば、このCX-5を選んでおけば間違いはないはず。

     続いて、よりコンパクトなCX-30へと乗り換える。CX-30は、従来の2.0リッター純ガソリンモデル「e-SKYACTIV G 2.0」と、新たに設定された2.5リッターマイルドハイブリッド仕様「e-SKYACTIV G 2.5」の両方を試乗。

     まず、従来の2.0リッターガソリンモデルのステアリングを握る。その第一印象は「必要にして十分」というものだ。このクラスのコンパクトSUVとして考えれば、パワー感も静粛性も合格点を大きく超えている。踏み込んだ瞬間にわずかなタイムラグを感じる場面もあるが、一度動き出してしまえば中間加速のトルクが力強く、非常に扱いやすい。

    e-SKYACTIV G 2.5を積んだCX-30は、モーターのアシストと排気量アップが効いていて、車体がさらに軽快に、そしてキビキビと動く

     足下からは少しロードノイズを拾うものの、エンジン自体は思ったよりも静かだ。時折、元気よく回るエンジン音が車内に届くが、むしろこれは「クルマを運転している感覚」として心地よく、ネガティブな印象はなかった。先ほど試乗したCX-5が「あまりに静かすぎるため、かえって入ってくるエンジン音が目立つ」のに対し、CX-30は全体の遮音バランスが自然に整っている。

     そして、いよいよ本命である「e-SKYACTIV G 2.5」搭載モデルに試乗。アクセルを踏み込み、走り出した瞬間から明確な違いを感じた。とにかく初速からのトルクが厚い。モーターのアシストと2.5リッターへの排気量アップが効いており、車体がさらに軽快に、そしてキビキビと動く。先ほどの2.0リッターモデルで気になった踏み始めのラグは解消され、ドライバーの意志に対してクルマが遅れなく付いてくる。

    直列4気筒2.5リッターガソリンエンジンはCX-5より最高出力が1PS、最大トルク1Nm高く、最高出力132kW(179PS)/6000rpm、最大トルク238Nm/3750-4000rpmを発生する

     CX-5から乗り換えると、この圧倒的な軽快感とキビキビ感は実に新鮮で、純粋に運転が楽しいと思わせてくれるキャラクターに仕上がっていた。ただ、なぜか2.0リッターの純ガソリンエンジンよりも、2.5リッターハイブリッドの方が、強めに加速しようとした際、エンジン音が大きめに車内に響く傾向があった。

     また、タイヤの特性か、路面の凹凸に対して少し突っ張るような硬さを感じる場面もあったが、それ以外はトータルで高い完成度を誇っていた。パワートレーン、ステアリング、ブレーキの感覚が「軽快にスイスイ走る」という1つの方向性に向けて気持ちよく調律されている。クルマの動きに齟齬がなく、乗っていてとにかく爽快感があった。

    路面の凹凸に対して少し突っ張るような硬さを感じる場面もあった

     何よりエクステリアのデザインが今見ても非常にスタイリッシュでかっこいい。日常の使い勝手に目を向けると、CX-30のジャストサイズ感はやはり大きな武器だ。日本の狭い街中や駐車場でも持て余さないサイズ感は、私のような女性ドライバーを含め、多くの人が扱いやすいと感じるはずだ。

     また、日常使いで1点だけ気になったのが、マツダコネクトのディスプレイ。CX-30は、横長で細いタイプで画面が少し見づらく、タッチパネルになっていないのでどうしても使いにくさがある。もちろんApple CarPlayなどのスマートフォン連携は問題なく使えるが、CX-5とのインターフェイスの世代的な違いは大きく感じるかもしれない。

    CX-5のディスプレイは大型(試乗車は12.9インチ)で見やすくGoogle連携で使い勝手は高いCX-30のディスプレイは横長でタッチパネルではないが、Apple CarPlayなどのスマートフォン連携も可能なので利便性はよい

     パッケージングにおいて、CX-5との差が最も顕著に現れるのが後席と荷室の空間だ。CX-30の後席ドアを開けると、その広さはCX-5とは完全に別物である。実際に座ってみると、膝前のスペースは肘から手首の長さほどで、足を組むのはギリギリといったところ。ヘッドクリアランスは拳2個分ほどだ。ただし、ルーフライニングが白い素材で仕立てられているため、後席に座った際の圧迫感は抑えられていた。

    後席はCX-5より窮屈なものの圧迫感は少ない

     同じ「e-SKYACTIV G 2.5」という新世代のパワートレーンを共有することになったCX-5とCX-30。しかし、実際に乗り比べてみると、そのキャラクターは驚くほど明確に分かれていた。CX-5はファミリーユースでも、快適な使い勝手や上質感を求める人のための1台。圧倒的に静かで乗り心地がよく、大人4人が快適に長距離を移動できる広大な後席と荷室を備えている。

     子供連れのファミリーユースや、荷物をたくさん積んでアウトドアに出かけるといった使い方であれば、CX-5が適しているだろう。もし予算に余裕があるなら、シンプルなGグレードの内装から質感を格上げした上位のLグレードを選ぶことで、その上質な走りに見合った所有欲を満たしてくれるはずだ。

    CX-30は全体の遮音バランスもよく感じられた

     対するCX-30は、軽快な走りとスタイリッシュさを追求した都市型クロスオーバーSUV。新採用されたハイブリッドによる初速からの豊かなトルクは、軽量なボディと相まって、CX-5では味わえないキビキビとした爽快なドライブフィールを提供してくれる。普段は1~2人乗車がメインで、後席や荷室は必要な時に使えればいいと割り切れるのであれば、日本の道路にジャストなサイズ感と高いインテリアの質感を持つCX-30の方が、日々の満足度は高くなるだろう。

    「豊かな居住性と熟成の重厚感」を取るか、それとも「俊敏なフットワークと扱いやすいサイズ感」を取るか。同じ遺伝子を持ちながらも、マツダはそれぞれに見事な最適化を施していた。自分のライフスタイルに寄り添うのはどちらのSUVか、その「調律の違い」を体感してみてほしい。

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