CEATECエグゼクティブプロデューサーの鹿野清氏
いよいよ「CEATEC 2026」が開幕する。一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)が主催するCEATEC 2026は、10月13日~16日の4日間、幕張メッセ(千葉市美浜区)で開催。ホール4からホール8までの5ホールを使用し、821社/団体が出展する。会期中には11万人以上の来場を見込んでいる。今年は、一般社団法人日本自動車工業会が主催する「Japan Mobility Show Bizweek 2026」が、幕張メッセのホール2およびホール3で併催され、217社/団体が出展することになり、会場内は行き来が自由だ。合計すると、延べ1038社/団体が出展する巨大イベントが開催されるとも言えるのだ。
CEATECエグゼクティブプロデューサーの鹿野清氏は、「今年のCEATECは、見て、触って、体験できる展示が増え、AI時代における『日本らしさ』を伝えることができる展示会になっている。そして、CEATECそのものが、フェーズチェンジする兆しが見える展示会でもある」と位置付ける。開幕にあわせて、鹿野氏にCEATEC 2026への意気込みを聞いた。
今年の注目ポイントは「AIの社会実装」。「5年後に社会実装されている技術を、いま、見ることができる」
――いよいよCEATEC 2026が開幕します。注目点はどこですか。
[鹿野氏]今年のCEATECでは、「AIの社会実装」という点に注目してほしいですね。
ポイントは4つあります。1つめは、ロボットや機械がAIによる判断および制御によって、状況に応じた作業を遂行する「フィジカルAI」、2つめは、デジタルツインにAIを組み合わせることなどにより、災害への備えやインフラの維持管理を支援する「予測・シミュレーション」、3つめは、電源・冷却・ネットワークなど、AIの利活用拡大を支える基盤技術を活用した「電力・熱・通信インフラ」、そして、4つめは、音・におい・温度などをセンサーで捉え、AIの解析や判断につなげる「五感・センシング」です。
日本らしい技術や製品、サービスを、触って、見て、聞いてもらえる展示会になります。5年後には、確実に社会実装されているという技術やソリューションを、いま、見ることができる展示会になっています。
今年は「体験できる」「触れる」「感じることができる」展示が増加。AI時代における「日本らしさ」を示す場になる
――CEATECは2016年に「家電見本市」から脱却し、「Society 5.0の総合展」や「CPS/IoT Exhibition」へと舵を切りました。いまは、「デジタルイノベーション総合展」と位置付け、「共創」のためのイベントへと進化しています。つまり、今年のCEATEC 2026は「脱・家電見本市」に踏み出してから、10年目の節目を迎えたとも言えますが。
[鹿野氏]10年前には、ほとんどの人が聞いたことがなかったCPS(Cyber Physical System)という言葉が、いまではデジタルツインとして一般化していますし、一部の用途に限定されていたIoTは、どこにでも存在し、欠かせないものとなっています。10年後の世界を見せる展示会であることが証明されたとも言えますし、未来の社会を見せるという役割は、いまも変わっていません。
また、CEATECには、IT・エレクトロニクス産業以外からも多くの企業が出展し、共創の場として定着し、さらに、その延長線上で自動車産業との共創を促進するJapan Mobility Show Bizweekとの併催が実現したことで、産業の枠を超えた共創は、さらに進展することになりました。この点でもCEATECが果たした役割は大きいと自負しています。
ただ、「脱・家電見本市」から10年目ということで、私たちがなにかを特別に意識することはありません。その一方で、今年はCEATECそのものが、また新たな進化を遂げたことに手応えを感じています。AI時代において、米国・中国が先行するなかで、日本はどこで強みを発揮するのか。その方向性が、今回のCEATECの展示やコンファレンス、あるいはCEATEC AWARDの受賞者の結果からも感じることができます。
つまり、AI時代に向けて、日本のモノづくりやデジタルイノベーションの取り組みが、次のフェーズへとチェンジする兆しが見える展示会になっていると言えます。
――具体的にはどんな点ですか。
[鹿野氏]2026年は「フィジカルAI元年」と言われますが、それを支える技術やデバイス、ソリューションが、CEATEC 2026では一堂に展示されます。産官学が一体となり、しかもさまざまな産業界の出展者が、フィジカルAIとはなにか、そこで日本の強みはどこに発揮できるのかを示すことができるのではないかと考えています。
また、「Society 5.0の総合展」へとシフトしたことで、ソリューションに関する展示が増加したり、コロナ禍でオンライン展示会に移行せざるを得なかったりといったことなどが背景となり、一時はパネル展示が増え、触ったり、体験したりする展示が減少した時期もありました。展示を「見て」、コンファレンスを「聴いて」、未来の社会を「感じて」「考えて」、共創に向けて「動き出す」という「CEATEC体験」を打ち出してきましたが、足りない部分があったという反省がありました。
しかし、今年のCEATECは、体験できるものが多く、触れるもの、そして、感じることができる展示が増えています。そこにも、フェーズチェンジの側面があります。
――あらためて、日本の強みを示すことができるCEATECになったと。
[鹿野氏]いや、残念ながら、そこまで言い切ることはできません。振り返ってみますと、CEATECが2000年に1回目を開催したときには、日本のモノづくりの強みやデジタル家電市場をリードしていく技術力の高さを、世界に向けて発信する展示会であったと言えます。日本の強みを示すことができていました。それに比べると、AI時代における日本の強みは、まだ示すことができている状況ではありません。
しかし、日本らしさを示すことができる場になったとは言えます。日本の強みを示すには、もう少し時間がかかるかもしれませんが、日本らしさとはなにかといったことが、CEATEC 2026の会場の端々で感じてもらえるはずです。
例えば、フィジカルAIといったときに、米国や中国では、ヒューマノイドロボットなどにフォーカスしがちですが、日本のフィジカルAIは、そうではなく、もっと幅広いものを指しています。日本はヒューマノイドロボットでは遅れているという指摘もありますが、フィジカルAIという観点で市場を俯瞰したときに、私はそこがポイントではないと思っています。
今年のCEATEC AWARDでは、経済産業大臣賞はTDKの「スマートグラス用ディスプレイ向けメタオプティクスミラー」、総務大臣賞は三菱電機グループの「タスク汎用音源分離技術(TUSS)」、デジタル大臣賞は日立製作所の「HMAX by Hitachi」が、それぞれ受賞しました。いずれも大手企業が受賞するという結果であり、これには私もびっくりしました。
ただ、見方を変えれば、日本の大手企業が持つ「日本らしさ」が、高い評価を得た結果だと言えるのではないでしょうか。日本がAI時代においてできることはなにかを示し、AI時代における日本の企業のあるべき姿の「道しるべ」と言えるものが示されたのではないでしょうか。
CEATEC AWARD 2026には62件のノミネートがありましたが、AIに関連するデバイス、ソリューションなどが、全体の3分の2程度を占めています。AIの広がりが、垂直方向にも水平方向にも広がっていることを感じることができます。その点でも、AIの奥深さを感じることができる展示会になると言えますし、AI時代における日本らしさの潮流を感じることもできます。数十年間にわたり、日本のモノづくりの存在感が薄くなったとも言われますが、CEATEC AWARDを受賞した展示などを見ていただければ、これらが、AI時代における日本のモノづくりの復活や、日本が推進するデジタルイノベーションの進化へとつながるものだと確信してもらえるのではないでしょうか。
例えば、日本には多くの社会課題があり、これを解決するための方法が模索されるなか、CEATEC AWARD 2026のデジタル大臣賞を受賞した日立製作所の「HMAX by Hitachi」は、1つのソリューションではなく、「ハーモナイズドソサエティの実現を支えるAIソリューション群」として、複数のソリューションによる社会課題解決を提案しました。これまでは、特定の領域に特化した提案だったソリューションが、複数のソリューションを組み合わせて、さまざまな課題を解決する提案へと進化しています。これまで以上に現実に向き合ったソリューション群だと言えます。
これは、多くの日本の企業に共通した取り組みです。ヒューマノイドロボットのような派手さはないものの、地道に取り組みをベースに、地に足の着いた提案であり、むしろ、「日本らしさ」の象徴と言えるかもしれません。CEATECは、こうした日本の企業らしい展示が行われる場でもありたいと考えています。
いまのCEATECが「イノベーター」が来場する展示会。「出展者が変わり、出展内容が変わり、来場者が変わっている」
――CEATEC 2026では、11万人超の来場者を見込んでいますね。
[鹿野氏]昨年は9万8884人の来場者数でしたし、一昨年にJapan Mobility Show Bizweekと併催したときには11万2014人の来場者数となっています。少なくとも、これを超えたいという思いを込めています。ただ、11万人という数は、それほど重要だとは思っていません。むしろ、どんな11万人が来場してくれるのかということが重要です。CEATECには、イノベーターと呼ばれる人たちに来てほしいと考えています。
――記者会見で投影した資料では、来場者の目標数のところに「イノベーター:110,000人超」と表記していましたね。
[鹿野氏]イノベーターというと、もともとはイノベーションを起こす人を指していました。また、エンジニアなどのテクノロジーリーダーをイノベーターと称していたこともありました。しかし、CEATEC 2026に来てほしいイノベーターとは、イノベーションに関わるすべての人たちを指しています。イノベーションをリードするだけでなく、それを支援する人、イノベーションに関心がある人、そして、学生たちもイノベーターの卵として捉えています。

[鹿野氏]家電見本市の時代の2007年には、20万人以上の来場がありました。それに比べると11万人しか来ないと言われるかもしれません。しかし、いまのCEATECは、イノベーションに対して強い関心を持った人たちが11万人も訪れる展示会であり、それがいまのCEATECの姿です。展示ブースでは、専門知識を持ったエンジニアたちが出迎え、自らの言葉で説明するといった対応が中心となっています。また、ディシジョンメーカーと言われる立場の人たちの来場も増加傾向にあります。これも、10年以上前のCEATECにはなかったものです。
出展者が変わり、出展内容が変わり、来場者が変わっているのが、いまのCEATECであり、結果として、出展者と来場者の対話が増え、来場者の滞在時間が伸びているという結果が出ています。誤解を恐れずに本音を言うと、11万人超の来場者数の達成よりも重視したいのが、滞在時間の増加、あるいは複数日の来場といった指標です。じっくりと見て、体験して、対話をしてもらう。そこに、CEATECの価値があると感じています。
――出展者数は過去3番目の規模となっていますが、各社のブースのひとつひとつが小さくなっているという課題を感じます。
[鹿野氏]電機大手などが大きなブースを構えるという構図ではなくなっているのは確かです。かつてのCEATECのように大型の製品を展示するのではなく、それぞれの企業が目的を持った展示を始めていることが背景にあります。
一方で、CEATEC 2026で最大規模のブースとなるのは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と、電池サプライチェーン協議会(BASC)であり、そのほかにも、独立行政法人や国立研究開発法人、業界団体が大きなブースで出展しています。こうした機関が一堂に集まる展示会はほかにはありません。
じつは、展示の傾向が変化しています。ホール5およびホール6に初めて設置する「X(Transformation)パーク」は、CEATEC 2026の目玉展示の1つですが、ここには、187社/団体が出展し、「AI」「パートナー(共創)」「ウェルビーイング」「社会インフラ」「R&D/戦略」「サステナブル」「エンターテインメント」「産業変革」の8つのテーマのもとで各社が共同展示を行います。CEATEC全体として、個社の展示が減少し、共同出展が増加し、その結果、共創の姿を見せる展示が増加しています。これは、独立行政法人や国立研究開発法人、業界団体の出展でも同様の傾向が見られています。共創を目的としたCEATECとしては当然の流れであり、健全な結果だと言えます。
また、スタートアップ企業や大学・研究機関の出展者数は246社/団体となり、過去最大規模となっています。ここでも変化があります。これまでは、それぞれの技術を展示することが中心でしたが、VCやCVCと連携した共創の場を設けたり、この領域において、Japan Mobility Show Bizweekと連携した企画を用意したりといったことを行っています。
CEATECの今後の役割として、日本のスタートアップ企業や大学・研究機関を成長させるための仕組みを開発し、提供していく必要があると感じています。こうした仕掛けができるパートナーと連携したり、JEITAの市場創成部と連携したりといったことを通じて、CEATECの場を利用しながら、スタートアップ企業や研究機関などが、成長できるきっかけづくりにも貢献したいと考えています。これもCEATECの新たな役割です。
――CEATEC 2026では、新規出展の比率が全体の41%を占めています。見方を変えれば、継続出展が約6割しかないと言えます。ここにも課題を感じますが。
[鹿野氏]スタートアップ企業などは、出展における特例措置を用意しているものの、コスト面から毎年継続して出展するのは難しいと言えます。スタートアップ企業などの出展数が過去最高となれば、その裏返しとして新規出展者の比率が自ずと増加することは仕方がないとも言えます。CEATECに一度出展をしてもらい、そこで成果を獲得してもらって、次のステップにいってもらい、また次にどこかの機会に出展してもらいたいですね。もちろん、「新規出展比率が41%もあって大丈夫なのか」と心配する声もありますが(笑)、私はCEATECが方向性としては間違ってはいないと思っています。実際、今年のCEATEC 2026は、全体で過去3番目の出展者数となり、スタートアップ企業などの出展では過去最高を更新しています。
AI時代における「日本らしさ」とはなにか?CEATEC 2026で体験して理解してほしい
――Japan Mobility Show Bizweekとの併催が、2024年に続いて2回目となります。今回はどんな成果を期待していますか。
CEATECエグゼクティブプロデューサーの鹿野清氏
[鹿野氏]日本のIT・エレクトロニクス産業も、日本の自動車産業も、変革が求められるとともに、厳しい局面にあるのは明らかです。しかし、両方の産業に共通した認識は、厳しい局面だからこそ、新たな共創が必要であり、イノベーションを起こさなくてはならないということです。だからこそ、今回も併催が実現したと言えます。むしろ、2年前よりも、両者が強い想いを持って、今回の併催に挑んでいると言えます。日本を代表する2つの産業ががっちりと組んで新たな共創を創出する場であり、2つの産業同士の「染み込み方」がより浸透しているという印象を持っています。これまで以上に、2つの産業による共創が進むと期待しています。
――CEATEC 2026の来場者にメッセージをお願いします。
[鹿野氏]CEATEC 2026は、会期中の4日間を通じて、AI時代における日本らしさとはなにかといったことを、より理解してもらえる展示会およびコンファレンスになると思います。日本らしさを発信することが、今回のCEATEC 2026の意義だと思っていますので、そうした視点からもCEATEC体験をしてほしいですね。ご来場をお待ちしています。
CEATEC 2026見どころガイド
