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    サイバーパンク飲食店経営シム『Nivalis Nights』レビュー。いかにしてサイバーパンクラーメン屋の経営を失敗し、なんとか立て直し、しかもささやかな勝利まで掴んだか

     サイバーパンク飲食店オーナーの一日は長い。朝起きたら温室に直行して野菜を収穫し、そのまま1号店のラーメン屋“ノワール”へ。古株のシェフとウェイターロボとともに一心不乱に開店ラッシュの注文をさばき続け、それがひと段落したらあとはマネージャーに任せて次の店に。そうして深夜の外出禁止令が発動する直前まで、各店でのヘルプが続く……。

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     ここには焼き尽くすべき都市も、酸性雨の中に溶けていく感傷も、世界を揺るがす衝撃の真実もない。いや本当は多少あるんだが、「オーナーの人件費はゼロとする」という悪手にすがってなんとかやっている限界経営者にとってはそれどころじゃないのだ。

    サイバーパンク飲食店経営シム『Nivalis Nights』レビュー

    へいトンコツ・ラーメン一丁。ウェイターロボ君、あっちのお客さんにお持ちして。チキンラーメンのお客さんちょっと待ってくださいね、いまやりますんで。そちらのお客さんのご注文もすぐ伺いますんでね。

     日本語対応でPC向けに配信されている『Nivalis Nights』は、サイバーパンク都市“ニヴァリス”を舞台とした生活シムだ。プレイヤーはラーメン屋“ノワール”を突然譲られることとなり、飲食店経営のキャリアに乗り出すこととなる。
    経営失敗からの立て直し生活で、初めてニヴァリスの住人になれた気がした しかし冒頭で書いたように、コツを掴むまでは経営は意外と手がかかって結構忙しい。ノリで新メニューを増やしたりスタッフを増やしたりしていると、気付けば次第に増えていく材料費や人件費に圧迫されて、食材も調理もちゃんとしてて客の評判も高いのに普通に赤字を叩き出すことすらある。

     かく言う記者も、店の評価がちょっと上がったところで「あとはスタッフに任せてクエスト進めてもいいでしょ」とナメていたら、見事にその罠にハマった。資金が尽きるまでにはまだ時間があるが、早く立て直さないとその余裕すらなくなる……。

     ボクセルグラフィックで描かれる美麗なディストピアの風景を眺めつつ、クエストで人助けしながらたまに釣りとかもして、気楽に経営しよう……というサイバーパンクスローライフな夢は、そこで完全に打ち砕かれた。

    サイバーパンク飲食店経営シム『Nivalis Nights』レビュー

    「なんか良さげなメニュー足せばいいんでしょ?」とノリでメニュー拡大。後に利益が食材費に圧迫されつつあることに気がつく。

    サイバーパンク飲食店経営シム『Nivalis Nights』レビュー

    スタッフも「時給低めで増やせばなんとかなるっしょ?」で増やしすぎて不満も溜まりまくりだったので、一回整理しなきゃ……。

    サイバーパンク飲食店経営シム『Nivalis Nights』レビュー

    ほんと地域に個性があって美しい。だが、それを楽しむには時間的余裕、ひいてはそれを許容する経済的余裕が必要だ。

    コストを減らせ! ラーメン屋ノワール再生計画 まずは手がかかる割に数が出ていないメニューを削って、ストックの不要になった食材も売り払い、先代からの原点であるチキンラーメンとビールから出直しだ。さらに食材費を浮かすために、「毎回取りに行くの面倒だし」と敬遠していた食材の温室栽培にも取り組み直すことに。開店時間をちょっと遅らせれば、毎日店開ける前に取りに行けるよな、俺?

     お次は人件費削減だ。時給が高いスタッフを泣く泣く解雇して、手薄になった分は自分が店に立つしかない! (本当はよくないけど)自分の労働は固定費がかからない上に、シェフもウェイターも掃除もマネージャー役も臨機応変に最速で切り替えられるのは自分だけだ。さらに複数のレビューが言及していた質素な椅子を入れ替え、装飾も多少整えてリニューアル……。

    サイバーパンク飲食店経営シム『Nivalis Nights』レビュー

    「市場になんでも売ってるんだから栽培はやり込みたい人向けだよね?」とナメていたが、時間さえかければほぼノーコストで頻繁に使う食材を用意できるので、経営手腕が足りてない時こそ頼るべきだった。

     そこからしばらくはマジで朝から晩まで働き詰め。初期バージョンは不足した食材を自動で補充してくれるマネージャー役のAIの質が悪かったので、彼らに頼らずに済むよう、営業中の追加の買い出しにまで走り回っていた。

     積もりに積もったストーリークエストをやる暇なんかなくて「なんでこんなキツい思いをしてるんだ?」とも思ったけど、でも立て直しに成功してスタッフに任せられるようになった時、そこで初めて本当にニヴァリスの住人になれた気がした。

    サイバーパンク飲食店経営シム『Nivalis Nights』レビュー

    ショップに並んでる商品がやたらめったら多いのは最初に面食らう部分だろう。でも店のメニューに不足してる食材は“買い出しリスト”から絞り込めるし、買い出しやってくうちに「米はこの辺」ってわかるようになる(日本語での検索も機能してるが実際はあんまり使わない)。ちなみに現バージョンではマネージャーの補給にそこそこ頼れるので、緊急買い出しに走る回数も減った。

    自分がいなくてもそこそこ回る店を目指す 現在はマネージャーなどのAIが多少改善されて大分楽になってるんだけど、“ある程度はスタッフだけでも店が回るようにする”のがとりあえずの目標になってくるのは変わらない。そもそも最初はシェフとウェイターを1人ずつしか雇えないので、店舗拡大をした時は第3のスタッフとしてしばらく張り付きっぱなしになる。

     そこから評価が上がるにつれて段々とスタッフも増やしていけるので、採用&シフト割りや食材マネージメントも考慮したメニュー構成の腕の見せどころ。それらがうまくいくと、段々と1日の介入度合いを減らしていけるようになる。ほとんど介入しなくてもよくなったら、店舗拡大やクエスト再開を考えるタイミングだ。

    サイバーパンク飲食店経営シム『Nivalis Nights』レビュー

    すべての役割を最速で切り替えて対応できるのはプレイヤーだけ。注文取り、調理、皿の片付け、マネージャーAIが発動する前の小さな買い出しなど、スタッフが対応しきれない分のあらゆることを対応していけば強引に軌道に乗せられる。問題はそこからだ。

    本格的な経営シムでもADVでもない、サイバーパンクの街の一部になる体験 そんな感じに忙しい本作なんだけども、ではゴリゴリの経営シムかというと、その土台はあるけどそうなってはいない……というのが悩ましい。

     たとえばメニューそれぞれには「労働者層はビールが好きだが富裕層は好まない」といった社会階層による好みがあって、メニュー構成の参考にできるようになっている。でも毎日の売上に対しての階層分布のデータはあるけど、各エリアの人口分布や、“朝と昼は労働者が多いけど夜は富裕層が増える”といった人流のデータはないので、データからディープに戦略を練るようなことはあまりできないのだ。

    サイバーパンク飲食店経営シム『Nivalis Nights』レビュー

    売り上げステータスから見られるのは客観的な人口分布ではなく、その日に食べていってくれたお客の分布でしかない。試行錯誤しながらそこから全体像を推定しろということかもしれないけど。ところでこの画面の見方もあまりちゃんと説明されないので導線を整備して欲しいところ。

     逆にカジュアルにお店屋さんごっこを楽しむゲームにもなっていなくて、チュートリアルや情報の導線が弱いので、「え、このウザキャラのクエスト進めないとこれ教えてくれないの?」となったり、プレイを進めて自分で把握しないといけないハマりどころが無数に存在する。“ニンジンの足がやたら早くてすぐ腐る”とか、“ほかの店でメシを食うとたまにレシピがアンロックされるらしい”とか、“そもそも店でメシを食うには椅子に座ってウェイターを待つ必要があり、食い終わって店を出るまでにゲーム内時間で2時間ぐらいかかる事もある”とかね!

    サイバーパンク飲食店経営シム『Nivalis Nights』レビュー

    タダメシ要求ばっかりしてくるお前から顧客統計の存在を知らされるとは思わなかったよ!

    サイバーパンク飲食店経営シム『Nivalis Nights』レビュー

    レシピ改造できるメニューは売る前から階層別の好みがわかるのに、通常のメニューは売ってみないとわからないのとかも、なんだかなぁという感じ。ちなみに使用食材だけでなく、調理法を変えることで必要な調理器具も変えられる。たとえば豚骨ラーメンも鶏肉にできる。

     ジャンル的な軸足が独特なところに置かれているのは、アドベンチャーゲームとしての部分についても同様だ。チュートリアル的な性質のあるクエストを除くと、ほとんどのクエストは指定の場所に行って会話を選択するだけで進行するライトなもの。だけど英語フルボイスで結構な分量があって力は入っている(恋愛要素も含めて関係値変動システムが有効に機能しているとは言い難いけど)。

     いろいろ分かりづらくもあるなかで、強いて言えばこのゲームは“サイバーパンクの街”の一部となる体験を軸としているように思う。エリアごとにきちんと個性が与えられている街の風景は美しく、そのなかをクエスト消化の合間や、店の営業終了後のわずかな時間の探索で駆け抜けているとハッとするような時間があるし、クエスト外で歩いているNPCを偶然見かけてちょっと嬉しくなったりする。

    サイバーパンク飲食店経営シム『Nivalis Nights』レビュー

    何かの合間に街でNPCを見かけて「へー、お前ここ来るんだ」ってすれ違うのがちょっと楽しい。

     メインクエストの終盤に至っては深夜の外出禁止令下の街に連日行くハメになるんだけど、システムに慣れていると「じゃあひとまず店の面倒見て、営業終了後にちまちま対応するか」という結論になる。なんだかちょっと地味だけど、多分それでいいのだ。本作の主人公は屈強なサイボーグ戦士でも世界を揺るがすスーパーハッカーでもなく、ニヴァリスという街で周囲の人を助けつつ、なんとか事業を営んでいる普通の人なんだから。

     ストーリーのネタバレは避けようと思うが、それまで関わってきたNPCが意外なところで出てきたりする展開にもアガったし、ちょっとビターだけど世界の真実を知るとともにささやかな勝利を手にしたエンディングには満足。個人的にはそういう方がサイバーパンクっぽく感じるしね。

     なお失敗込み&赤字が怖くてしばらく必要以上に店に張り付いてたのであまり参考にならないと思うが、一応クリアーまでかかったのは55時間。とはいえこれは経営とメインストーリーのどっちを優先するかの比重によって大きく変わってくるはずだ。

    サイバーパンク飲食店経営シム『Nivalis Nights』レビュー

    経営的にそこまで成功しなくてもエンドロールはみられるが、せっかくだから何店舗か回せるようにしたいよね。長いカウンター席と室内で構成されてる“トシガミ”など、レイアウト的な違いもあって楽しい。ここは海鮮丼屋にしたなぁ。

    いまでも十分楽しめるけど、今後のアップデートに超期待 本作はアーリーアクセスではなくて正式発売されているゲームなんだけども、前作『Cloudpunk』のような家庭用ゲーム機への展開もまだ発表されていないことから、まずはPCで出して改良していこうという今どきの戦略を取っているんじゃないかなぁと思う。

     実際に発売後も活発なアップデートで段々良くなってきていて、先に触れたようなAIマネージャー周りの新機能以外に、パフォーマンスの改善なども行われている。現時点では、“ゲームが目指す方向性と合えばいまでも十分に面白いが、大規模パッチやMODで神ゲーになる素地がある、癖のあるゲーム”といった感じだろうか。

     個人的にはチュートリアルや序盤の導線のオーバーホールは当然として、今あるデータを活かした形での深い経営シム要素や、エンディング後も遊べるエンドレスモード的なものを入れて欲しいところだ。

    サイバーパンク飲食店経営シム『Nivalis Nights』レビュー

    追加の家を借りると出勤や買い出しダッシュが楽になったりするんだけど、ちょっと費用が高すぎるんですよね。その額溜まる前にクリアーしちゃうので、エンドレスモードでこういう要素を活用していきたい。

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