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    初代SLのファインダーをのぞいた日から、SL2-S、SL3と乗り継いできた。だからこそ、6000万画素でもBRAW出力対応でもない「SL3-P」のウワサを、どこか他人事として聞き流していた。2台持つなら無印とSの組み合わせが最適解——そう信じていたからだ。ところが実機を受け取ってから30分、その前提はあっさりと覆されることになる。ライカ バリオ・エルマリートSL f2.8/70-200 ASPH.とともに借り受けたSL3-Pを、6K・L-Logの作例を交えてレビューする。

     

    宮下直樹(みやした・なおき)
    TERMINAL81 FILM フォトグラファー・シネマトグラファー

    1978年京都生まれ。広告代理店の営業職を経て、2007年よりフリーランスに。京都の伝統工芸・芸能を支援するオウンドメディア「VOICE OF KYOTO」を立ち上げ、2015年からフォトグラファー/シネマトグラファーとして活動。京都と東京を拠点に、ドキュメンタリー、アート、プロダクト、ランドスケープなど国内外の撮影を、空撮を交えて手がける。言語に頼らずブランドの世界観を伝えるブランデッド・ドキュメンタリーに定評。KYOTOGRAPHIE KG+にて個展を複数開催し、2018年「Nomad,」はAWARD部門に選出。

    WEB/X/Instagram

     

    はじめに

    LEICAを使いはじめたのは、LEICA SLからだ。いくつかのマウントを経由して、最終的にLマウントをこの先のパートナーとして使い続けたいと思ったのがきっかけだった。初代SLのファインダーをのぞいた時のクリアな視界は圧倒的で、その後手にしたHasselblad X2Dなど話にならないほどだった。

    そこからBRAWにも対応した動画機能が充実のSL2-S、6000万画素センサーで高画素機としても申し分のないSL3と乗り継いで、今にいたっている。3台ともに個性があり、それぞれが特徴を兼ね備えた、今なお色褪せることのない素晴らしいボディだ。

    SL3を手にして一年以上がたち、SL2-Sの頃と同じように一台でスチールもムービーも手掛けてきた。その間も、頭の片隅にはずっとSL3-Sの存在があった。もし2台持つならSL無印とSの組み合わせが最適解だろう、そう思っていたのも正直なところだ。

    気づかないふりがそろそろ限界なのを知ってか知らずか、巷にSL3-Pが出るらしいというウワサが広がるようになった。6000万画素でもなく、BRAW出力にも対応していない。ありがたいことにそこまで興味を持つこともなく、やりすごせるはずだったのだが、幸か不幸か、今こうしてレビュー記事を書くことになっている。

    ファーストインプレッション、持ち出す前からすでにほしくなった

    ボディが届く日の前日はやはり落ち着かない。なんだかんだと楽しみにしていたのだ。玄関のチャイムが鳴って数分後にはSL3-Pのボディを手にしていた。

    本体の電源を入れ、メニューを開くとお馴染みの洗練されたUIが立ち上がる。動画の設定画面を開くと随分と進化しており、スムーズにコーデックやその他の設定を終えることができた。(自分のSL3のファームウェアを、4.0以降にアップデートしていないことに、この時気づく。)

    これだけでも既にテンションが上がってしまったのだが、もちろんそれだけではない。SL3ともSL3-Sとも違い、本体正面にLEICAの赤バッジはなく、シャッターボタンも本体と同様の黒に塗り潰されている。このシャッターボタンが黒いことは、思った以上にSL3-Pの個性を際立たせている。Mシリーズと同じとはいわないが、指先が余計な主張をしない分、意識が自然とファインダーの中に向かう。撮影者の存在を極力消しにいくような、PシリーズらしいDNAを感じさせる仕上げだ。

    フォーカスモードをAFcに設定し、室内で軽く振り回してみると、驚くほど自然かつスムーズにフォーカスが意図した動きをトレースしてくれた。SL3で動画を撮る時は特にAPS-Cレンズを使うことで性能を底上げしていたのだが、SL3-Pはそれよりも圧倒的に快適で、信頼に足るAF性能をみせてくれた。

    外に出て試し撮りするまでもなく、「素直にほしい!」そう思わされた。受け取ってからここまで、おそらく30分もかかっていなかったように思う。

    作例

    LEICA SL3-P L-Log テストフッテージ

    LEICA SL3-Pと合わせて借り受けた、ライカ バリオ・エルマリートSL f2.8/70-200 ASPH.をマウントしてモデルをAFcで撮影してみる。両目をしっかり捉えると追従も非常にスムーズで特に不安に感じる場面もなかった。

    モデルが横を向いた際にも目をしっかりフォローしており、思わず二度見するレベルの食いつき具合だ。前後に歩いてもらってもピントを外すことはなく、フルサイズでこの精度であれば仕事の現場にも安心して持ち込めるだろう。LEICAで6Kの撮影が実用的になるのは個人的には非常に嬉しいニュースだ。

    試しにSIGMA 35mm F1.2 DG II | Artをマウントして使ってみたが、F1.2という非常に浅い被写界深度であっても、AFはしっかりと機能していた。手元のLマウントアライアンスのレンズ資産を活用できるとなると撮影の幅も一段と広がる。

    先ほどのテストフッテージは、L-Logで撮影した6Kの素材にLEICAのLUTを当てただけのものだ。露出を決めてしまえば、そのまま作品にも使えるLEICAらしい落ち着いたルックも、また大きな魅力のひとつだといえる。

    まとめ

    個人的には間をとったようなPを手にするより、無印とSの2台持ちが最適解と思っていたが、実際に手にしたことでその評価は覆されてしまった。

    SLシリーズで6000万画素でのスチール撮影が必須でなければ、SL3-Pはスチル用途としても非常に魅力的な一台だ。SLシリーズでも際立つAF性能を備え、画素数も充分。そして、BRAWでの収録や高感度性能を重視するのでなければ、SL3-Sに対してはっきりと劣る動画性能・機能は見当たらない。

    SL3-Pは、どっちつかずの一台ではなく、見た目のルックスにも際立つ個性を備え、無印とSのお株を奪うほどの機能性を備えた真打ともいえる一台だった。

    2台持つなら? と聞かれたなら、「SL3-Pを2台」というのが今の本音だ。

    余談だが、同じくLマウントの元SLユーザーと数時間だけ都内で撮り歩きをしたところ、翌日には購入を告げるLINEが届いた。SLから少し距離をおいてしまった方にも、ぜひまた手にしてほしい。SL3シリーズからであったとしても、その進化の程度に間違いなく驚かされるはずだ。

     

     

    ●Leica SL3-P製品概要

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