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    特集:第38回出雲駅伝

    藤井みさ

    2026/10/14

    (最終更新:2026/10/14)

    おなじみとなった「真実はいつもひとつ」のポーズでゴールする工藤(撮影・藤井みさ)

    第38回出雲全日本大学選抜駅伝競走

    10月12日@島根・出雲大社正面鳥居前(勢溜)〜出雲ドーム前の6区間45.1km

    優勝 早稲田大学 2時間05分56秒
    2位 國學院大學 2時間06分54秒
    3位 アイビーリーグ選抜 2時間07分24秒
    4位 順天堂大学 2時間07分33秒
    5位 中央大学  2時間07分36秒
    6位 帝京大学  2時間07分41秒
    7位 駒澤大学  2時間07分45秒
    8位 日本大学  2時間08分15秒

    10月12日に開催された第38回出雲駅伝で、早稲田大学が16年ぶりの優勝を果たした。強力なルーキー、安定感のあるエースを擁し、優勝候補として大きな注目を集めての駅伝シーズン初戦。選手たちが実力通りの力を発揮した形となった。

    戦力がそろい、優勝候補として出雲に

    早稲田大には今年、強力なルーキーが入学。シーズン当初から増子陽太(1年、学法石川)、本田桜二郎(1年、鳥取城北)がトラックで結果を残し、そこに刺激される形で新妻遼己(1年、西脇工業)も調子を上げてきた。

    前日会見で花田勝彦監督は、エントリーされた8人の誰が走ってもいい形で順調にきている、とチームの状態を説明。「優勝候補として注目されるようになってきたのは非常にうれしいですね」と言いつつも、「やはり連覇している國學院は非常に強いので、今回も大本命と思っています」と、当日変更でエントリーされるであろう野中恒亨(4年、浜松工業)の存在も警戒した。

    増子(左から2番目)が当日変更で走るのかどうかも注目された(撮影・藤井みさ)

    今回のオーダーでは1区の吉倉ナヤブ直希(3年、早稲田実業)、3区の鈴木琉胤(2年、八千代松陰)、6区の工藤慎作(4年、八千代松陰)が前年と同じ区間にエントリー。一方で2区には本田、4区には新妻とフレッシュなルーキーを、5区には昨年エントリーされていたが、4日前に疲労骨折が判明し走れなかった山口竣平(3年、佐久長聖)を置いた。補欠登録となった増子が当日変更するのかも注目を集めたが、変更はなくスタートを迎えた。

    2区で流れを作り、4区からは先頭で独走

    1区は先頭集団が塊になって進んだが、6km手前で順天堂大の小林侑世(4年、春日部東)がスパートしてレースが動くと、吉倉は次第に先頭集団から離れた。それでも粘り、トップとは16秒差の7位で2区につないだ。

    2区は5.8kmの最短区間で、各校スピードに自信のある選手が集まった。本田は徐々に前に追いつくと、4.4km地点で先頭集団は7人に。残り1kmすぎで中央大学の岡田開成(3年、洛南)がスパートすると、本田もそこについていく。最後は岡田に先着し、トップでエース区間の3区へ。

    本田は区間賞でトップに立ち、流れを変える走りを見せた(撮影・高野みや)

    襷をもらった鈴木は先頭でレースを進めたが、後ろから日本大学のシャドラック・キップケメイ(4年)が猛烈な勢いで追い上げる。キップケメイは従来の区間記録を40秒も更新する異次元の区間新記録。鈴木も区間記録を更新する走りだったが、トップとは9秒の差がついた。

    4区、新妻の走りは圧巻だった。走り出してするすると日大の首藤海翔(1年、倉敷)に追いつくと、1.1kmで前へ。そのまま引き離し、単独走を続けて区間賞・区間新記録をマーク。5区の山口も勢いそのままに、10年間破られていなかった区間記録を更新した。

    鈴木は従来の区間記録を5秒上回る好走。しかしキップケメイが異次元だった(撮影・高野みや)

    5、6区は上級生が優勝を決定づける走り

    山口は昨年の疲労骨折の後、箱根駅伝でもうまく走れなかったという思いがあり、駅伝に対して怖いイメージがあったという。しかし今回の結果で払拭することができた。体調を崩して心配な部分もあったが、立て直して今回の走り。「速さ以上の強さというところは証明できたというか、確認できたかなと思います」

    新妻から山口へ、区間新記録リレーとなった(撮影・高野みや)

    5区にエントリーされた選手のうち、山口は5000mも10000mも持ちタイムトップ。「区間賞を取って当たり前」というプレッシャーはかなりあった。さらにトップでの襷渡し。「本当に不安ではあったんですけど、前の4人の頑張りをここで崩すわけにはいかないんで、もう死んでもいいやぐらいの気持ちで走りました」

    そしてアンカーは工藤。力強い足取りでさらに後続を引き離し、最後は名探偵コナンの「真実はいつもひとつ」のポーズでゴール。手をたたいて「1」を上に掲げると、歓喜の輪の中に飛び込んだ。工藤は仲間に胴上げされ、3回宙を舞った。

    工藤は襷をもらった時点で、自分が堅実な走りをすれば優勝を確定できると感じた。「頼もしい後輩たちが(襷を)持ってきてくれたので、そこで本当に安心してレースができましたし、そのままゴールすることができて、一安心だなといったところです」

    「下級生たちに自分の背中を見て頑張ってほしい」。工藤は最上級生としてチームを引っ張る(撮影・藤井みさ)

    16年ぶりの優勝をどう受け止めるか、と聞かれると「しっかり戦力が整って、勝たなくてはいけないレースでしっかり勝ったなというのが、強い早稲田が帰ってきたことを本当に証明できたのかなと思います」と話す。

    今回走った4年生は工藤のみ。下級生の活躍について問われると「スタートラインに立ったら、1年生も4年生も関係ないです。純粋に戦力として強い選手たちなので、本当に頼もしいと思います」。

    練習をしていく中では、工藤がチーム内でもっとも強い存在だ。下級生が自分に追いつけるように積極的に練習をしていると感じるといい、「そういった面では自分も気が抜けないですし、下級生たちも本当に背中を見て頑張ってきてもらえればと思います」と先輩らしく表現した。

    花田勝彦監督「理想としていた展開になった」

    レース後、花田監督はまず「本当に選手はよく頑張ってくれたなと、すごく感謝しています」と選手たちへの思いを口にした。

    6区間中、4つの区間で区間賞を獲得。花田監督は選手たちに「優勝するのであれば、複数の区間賞を取れないと勝てないよ」という話をしていた。その言葉を実践するような選手たちの走り。「そういう意味では、理想としていた展開になったかなと思います」

    「圧倒的な個」とそれを支える選手たち。花田監督が理想とするチームに近づきつつある(撮影・藤井みさ)

    このあと全日本大学駅伝、箱根駅伝も……と期待してしまうが、花田監督は「チームの構成上、短い距離で適性のある駅伝ではあったので。ある意味勝たなきゃいけなかった、勝って当たり前だったと思います」という。

    他チームに比べて人数も少なく、選手層は決して厚くない。だからこそ主要な選手が区間賞を取り、区間新記録を出せるようなチームを作らないと、と考えている。「やはり平均的なチームよりは『圧倒的な個』がいた中で、そこを支えるメンバーがいる、というのが理想ではありますね」

    文字通り、「圧倒的な個」を体現する選手たち。ルーキーでは今回は本田と新妻が結果を出したが、まだ「スーパーリザーブ」の形で控えた増子がいる。花田監督がかつて「早稲田三羽烏」と呼ばれたことになぞらえて「令和の三羽烏」とも呼ばれるが、ここに上杉敦史(1年、八千代松陰)も加わり、「カルテット」となりそうな勢いもある。

    出雲を勝ったことで、三冠への挑戦権を得た早稲田。花田監督は「三冠は本当に運もあると思うので」と言いつつ「まず一つでも勝てたことで、チームとしては勢いが出るのかなと思います」とも言う。ここから2区間増え、距離も伸びる全日本大学駅伝を勝てたら、箱根駅伝優勝も意識できるが「まだまだ三冠への道は、そんなに近くはないと思っています」。

    勝ったことで追われる立場に。早稲田の新たなフェーズがはじまる(撮影・藤井みさ)

    「他大学も非常に力が拮抗しています。今度は追われる立場になりますので、自分たちらしいレースができるように頑張りたいと思います」

    燕脂の躍動が、伊勢路、そして箱根路でも見られるだろうか。今後の駅伝シーズンがさらに楽しみになってきた。

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