「一気に卒業しないでよ!」――櫻坂46の山下瞳月(21)が、少しおどけながら口にした本音だ。16thシングル「愛MUST BE」(10月14日発売)は、同期・谷口愛季が初めて表題曲のセンターに立つ作品であると同時に、キャプテンの松田里奈と、最年長の田村保乃にとっても大切な一枚になる。
9thシングル「自業自得」で初めて真ん中に立ったとき、隣にいたのは田村だった。当時は気づけなかった優しさ、今だからわかる後悔。そして新国立競技場で7万人を前に披露した「静寂の暴力」。後編では加入4年目の彼女が抱える不安と、それでも守りたいと願う場所について聞いた。【インタビュー後編】

山下瞳月(C)モデルプレス山下瞳月:谷口愛季の初センターに「本当にぴったりの曲」― 今回、同期の谷口愛季さんが初めて表題曲のセンターを務めます。9枚目、10枚目でその経験をされている山下さんは、発表を聞いたとき、どのようなお気持ちでしたか。なにか言葉を交わしましたか。
【山下】発表の少し前に、谷口と一緒に散歩をする機会があったんです。時期によって活動の話をしたりしなかったりするのですが、先輩方が卒業されていって、三期生も何人かがセンターを経験する中で、個人的にも谷口の表題曲センターを見たいという気持ちがあって、それを本人にも伝えていました。
その後に発表を聞いて、素直に嬉しかったですし、そのシングルに一緒に参加できることも嬉しかったです。「谷口らしい曲だったらいいな」と期待していたんですけど、本当にぴったりの曲だったので、素直に喜びました。
― センター経験者だからこそ分かる、発表から初披露までの間で一番大変なことはなんでしょうか。
【山下】私はどんなジャンルの曲がくるのかが一番怖かったです。自分に得意なジャンルがあるわけではないので、挑戦的な曲がきてほしい気持ちもありつつ、「これならできるかな」という守りに入るような曲なのかなとか、いろいろと緊張していました。谷口自身もあまり弱みを見せないタイプなので、私から深く入り込むようなことはしない方がいいと思い、あまり深い言葉はかけていません。
― センターを経験されてから、さまざまな楽曲に参加されています。また真ん中に立ちたいという気持ちはありますか。
【山下】「I want tomorrow to come」が終わったときは「一度違う広い視野で見てみたい」と思っていました。グループの変化や活動を経て、2年前よりも「グループの一員として活動している」という意識が強くなりましたし、今は「どのポジションでなにをしたいか」「どういうキャラクターでいきたいか」を主張する時期は終わったのかなと思っています。
加入前は理想のアイドル像がありましたが、現状を考えると、自分にできる最適なポジションで、ファンの方から見て「私ってこうだよな」と思ってもらえるような立ち位置を任せていただけるのが嬉しいです。センターに対するネガティブな感情やマイナスな意見は、自分の中からは消えたので、任せていただければ頑張りたいです。
山下瞳月:田村保乃・松田里奈へ「一気に卒業しないでよ!」― このシングルは、松田里奈さんと田村保乃さんにとっても大切な作品になります。「自業自得」で山下さんが初めて表題曲センターを務めたとき、田村さんが横にいらっしゃいました。当時、先輩から受け取ったもので、今もご自身に残っているものはありますか。
【山下】保乃さんは私がグループに加入するきっかけになった一人なので、卒業をお聞きしたときはとても寂しかったです。「自業自得」の期間は私自身の視野が狭くて、人からなにかを与えてもらった記憶が、全部後付けになってしまっているんです。
振り返ってみると「あのときあんな言葉をかけてもらっていたな」「あんな連絡をもらっていたな」と思い当たるのが、保乃さんであることが多くて。その優しさを当時きちんと返せていたかというと、そうではなかったんじゃないかという後悔が少しあります。残りの期間、時間を大切にしたいです。
まつり(松田)さんも同じで、今在籍しているメンバーの中で、私から話しかける先輩のトップ2がお二人なんです。「一気に卒業しないでよ!」という気持ちが一番強いですけど(笑)、ここで「後輩としての立ち位置を少し変えるタイミングなのかな」と前向きに捉えています。お二人をたくさん笑わせたいという気持ちを持ちつつ、最後まで理想の先輩像であるお二人の背中を見て、いろいろなことを吸収したいと思っています。



同じ日にモデルプレスの取材に応じた山下瞳月、松田里奈(C)モデルプレス山下瞳月:新国立競技場で見た景色「普段と変わらないパフォーマンスができた」― 今年を振り返る時期になってきました。4月には新国立競技場でのライブもあり、「静寂の暴力」では暗闇と無音の中、涙を流されていました。今振り返って、どんなステージでしたか。
【山下】「新国立競技場」という名前を聞いただけで、パフォーマンスに対するギアが一段上がってしまうような、特別な会場だと思います。ですが7万人の中で「静寂の暴力」を披露するという特別な意識はあまりなくて、純粋に楽曲をBuddies(櫻坂46ファンの愛称)の皆さんの前で届けたいという気持ちが強かったです。久しぶりの披露だったのでどう受け取っていただけるか不安はありましたが、普段と変わらないパフォーマンスができたと思います。
― 普段と変わらない、つまりは常に最高のパフォーマンスをする、ということですね。
【山下】はい。初日を終えた後、演出家の方が「良い意味で、櫻坂46はいつもと同じパフォーマンスをしてくれた」とおっしゃってくださいました。ツアーなどで、最終日になってテンションが上がって、それまでやらなかったことを最終日だけやってしまうことがあるのですが、加入当初から「でもそれは全公演に来てくださる方や、1公演しか来られない方に対して失礼ではないか。今やってみたい、挑戦してみたいという自分の持っている技を、最初から使わずに最後までためておくのは違うのではないか」と言われてきました。
私自身もその言葉に納得しつつ、でもなかなか挑戦できずにもがいていた時期もありました。そんな中で新国立競技場の初日に「メンバー全員が良い意味でいつもと同じパフォーマンスをできた」ことは「もっと視野を広げたり、アジアツアーに行ったりしても、櫻坂46のパフォーマンスが確立している証拠だ」と言っていただけたので良かったなと思います。
― 11月にはZOZOマリンスタジアムで6回目のアニバーサリーライブがあります。4周年のアニラのときは「不安でいっぱいな時期があった」とおっしゃっていましたが、改めてあのステージに立つにあたり、どんな自分を見せたいですか。
【山下】ちょうど4周年のときは「I want tomorrow to come」の時期で、参加する楽曲数が一気に増えたアニバーサリーライブでもありました。自分の中でいっぱいいっぱいになってしまい「自分がセンターとしてライブを締めることができるのか」と不安でいっぱいでした。
それまでは先輩方が締めてくださっていたので、本当に大丈夫なのかなと思っていて。でもそれを経て2年が経ち、自分自身もかなり変わったと思います。今は楽しみな気持ちでいっぱいですし、まつりさんと一緒にできる最後のライブになると思うので、笑顔で楽しいライブにしたいです。
― 今でも不安な感情が一気に押し寄せてくることはありますか。
【山下】あります。常に考えていることですが、グループに加入して4年目になり、自分のことよりもグループ全体を考えるようになりました。今の私たちがいろいろなステージに立てているのは、先輩方が積み重ねてきてくださった結果です。
そこに自分が加入してから、なにかプラスになるものを足せているのかという実感が、4年経ってもまだあまり持てていなくて。先輩方が次々と卒業されていく中で、三期生として、そして自分自身として、櫻坂46をどう守り、引っ張っていけばいいのかという不安はとても大きいです。大切に守っていかなければならない場所なので、そのことはずっと考えています。

山下瞳月(C)モデルプレス山下瞳月:夢を叶える秘訣「まずは一度触れてみるくらいで」― 以前も伺った「夢を叶える秘訣」について、改めて聞かせてください。当時は「少し軽い気持ちで挑戦してみることが大事」とおっしゃっていました。
【山下】この4年間、違う環境に身を置くことで、自分の考えや性格が大きく変わったと実感しています。オーディションを受けて一歩踏み出して、普通に生きていたら関わらないような職業の方やスタッフの方々と、20代のうちから関わらせていただけるのは本当にありがたいなと思いました。
やはり広い視野を持ち、少しでも気になることがあれば気軽に挑戦してみるのが一番いいと思います。最初から完璧を目指すのではなく、まずは一度触れてみるくらいでいいので、なんでもやってみることが大事だと考えています。
― そう思うようになった具体的なエピソードはありますか。
【山下】グループに加入してから、今まで興味がなかったことに関心を持つようになったのは、お仕事で出会ったスタッフさんたちの影響が大きいです。加入前は趣味がまったくなかったのですが、常にカメラに映るお仕事をする中で、写真や動画を撮っていただく機会が多くなり、撮影機材に興味を持つようになりました。
自分で良いカメラを買って挑戦してみたりと、この世界に入らなければ、あるいはこの方々と関わらなければ知らなかった世界を実際に体験できていることが、とても楽しいです。些細なことかもしれませんが、そういった経験が楽しいと感じています。
― 貴重なお話をありがとうございました。
★「自分の気持ちを乗せすぎない」。山下瞳月がこの2年で手にしたのは、そんな表現の技術だ。かつては歌詞と自分の感情がリンクしなければ手応えを持てずにいた。今は曲の主人公が何を伝えたいのかを優先する。「愛MUST BE」で谷口愛季の質感に自分を寄せていけるのも、その変化があったからだろう。
同期がセンターに立ち、憧れた先輩たちがグループを離れていく。「一気に卒業しないでよ!」と笑った声の奥には、受け取ったものを返せていただろうかという小さな後悔がある。それでも、守らなければならない場所についてずっと考え続けている21歳の静けさこそが、櫻坂46が次に進むための強さなのだと思う。★
(modelpress編集部)
PHOTO:矢沢隆則

山下瞳月(C)モデルプレス山下瞳月(やました・しづき)プロフィール2005年1月22日生まれ、京都府出身。身長152cm。A型。愛称は「しーちゃん」。2023年に櫻坂46三期生として加入。9thシングル「自業自得」、10thシングル「I want tomorrow to come」で2作連続の表題曲センターを務めた。グループは2026年、女性グループ初となるMUFGスタジアム(新国立競技場)でのグループ誕生5周年記念ライブを開催し、14万人を動員。8月30日には全国ツアー「Sakurazaka46 ARENA TOUR 2026 -What’s lonesome?-」を完走した。10月14日に16thシングル「愛MUST BE」をリリース、11月にはZOZOマリンスタジアムで6周年記念ライブを控える。
モデルプレスの取材に応じた山下瞳月(C)モデルプレス
櫻坂46「愛MUST BE」TYPE-A(提供写真)
櫻坂46「愛MUST BE」TYPE-B(提供写真)
櫻坂46「愛MUST BE」(提供写真)
