グーグルが8月に発売したスマートウォッチ「Pixel Watch 5」は、前モデルからの買い替え需要を強く喚起する製品ではない。一方で、新規購入層にとっては機能面で不足のない完成度を備えており、41mmと45mmのどちらを選ぶかが実用上の分岐点となる。本稿では両モデルを試用した結果を踏まえ、サイズ選びの判断材料を整理する。
価格は41mmのWi-Fiモデルが6万2800円、LTEモデルが7万9800円。45mmはWi-Fiモデルが6万7800円、LTEモデルが8万4800円となっている。前世代のPixel Watch 4と比べると、41mmで1万円、45mmで8000円の値上げとなった。
前モデルとの違いはSoCとGPS測位が中心
2025年発売のPixel Watch 4は、ディスプレイや充電方式の変更、心電図(ECG)機能の日本展開といった追加要素が盛り込まれていた。これに対しPixel Watch 5は、システム・オン・チップ(SoC)とGPS測位のアップデートが中心で、外観上の変更はない。前モデルからの買い替えという観点では、訴求点の少ない世代交代といえる。
搭載SoCは、Pixel Watch 4の「Qualcomm Snapdragon W5 Gen 2」から、そのカスタム版となる「Qualcomm Snapdragon W5 Gen 2 高性能版」に変更された。CPUの処理能力が最大12%向上し、メモリ容量は2GBから3GBへ50%増量。これにより処理速度が20%高速化したとされる。ただし試用期間中、この処理性能の向上を明確に体感するには至らなかった。健康管理や運動記録、通知確認が中心の使い方であれば、影響は限定的だろう。
GPS測位では、Googleマップの3D建物モデルを使った補正と、DGNSS基地局網によるリアルタイム補正を組み合わせることで、ルートトラッキングの精度が前世代比で2倍に向上している。高層ビル街や森林などGPS電波が届きにくい場所での計測精度が改善されており、そうした環境でトレーニングするユーザーには実用的な進化といえる。
ハンドジェスチャーの拡張と睡眠計測の改善
目立たない改良点だが、実用上の価値が高いのがハンドジェスチャーの拡張だ。ダブルピンチ(親指と人さし指を2回合わせる操作)で、エクササイズ開始時のメニュー決定やスタート操作が可能になった。さらにウォッチフェイス画面からダブルピンチで通知を表示し、そのままスクロールまで行える。料理中など手が汚れている場面で通知を確認できる利便性は大きい。すべての操作をジェスチャーで完結できるわけではないが、通知確認を手を使わずに済ませられるメリットは評価できる。
睡眠ステージの検知精度は15%向上した。センサーの変更ではなくソフトウェア面の改善で、従来の統計モデルから畳み込みAIモデルへ移行。臨床で使われる睡眠ポリグラフ(PSG)を基準に検証したという。ただし、ユーザー側で直接検証することは難しく、参考値として捉えるのが妥当だ。
付属アプリは「Fitbit」から「Google Health」に改称された。Geminiが計測データに基づいたアドバイスを提供し、表示も整理されていて分かりやすい。血管と代謝のトレンドを追う新機能「Health Guardian」は搭載が予告されているが、提供は9月以降で、発売時点では利用できない。
サイズ選びの判断軸は手首周りとバッテリー
41mmと45mmの仕様は共通で、異なるのは大きさ、電池持ち、価格の3点だ。選択の判断軸として、まず手首周りが挙げられる。付属バンドの対応サイズは、41mmモデルがSサイズで手首周り130mmから、45mmモデルは150mmからとなっている。手首周りが150mmを下回る場合、45mmモデルでは付属バンドが合わない可能性がある。
重量差は5.7g。数字だけ見れば小さいが、睡眠計測のために就寝中も装着するなら気になる差になるかもしれない。日中だけの装着なら考慮不要だ。
実用上最も差が大きいのがバッテリー持ちだ。公称駆動時間は常時表示オンで41mmが最長30時間、45mmが最長40時間。バッテリーセーバー使用時は41mmが最長48時間、45mmが最長72時間となる。充電時間は約15分で50%まで回復し、満充電までは41mmが約45分、45mmが約60分だ。
試用では、常時表示、2時間のGPSウォーキング、睡眠計測、各種通知有効という条件で、45mmモデルは24時間経過後の残量が約44%だった。同じ使い方の41mmモデルは残量17%まで低下した。GPSを使わない日なら45mmは丸2日持つが、41mmは毎日充電が前提となる。充電を忘れがちなユーザーは45mmを選ぶ方が無難だ。
買い替え判断と価格差の考え方
Pixel Watch 4からの乗り換えは、現在の動作に不満がない限りメリットが小さい。一方、Pixel Watch 3以前のモデルを使っているユーザーであれば、ディスプレイの輝度向上や充電方式の変更といったPixel Watch 4世代で導入された改良をまとめて享受できるため、確かな進化を実感できるはずだ。
新規購入の場合、機能面での不足はない。ただし価格差には注意が必要で、Pixel Watch 4がセールなどで安く購入できるタイミングであれば、そちらを選ぶのも賢明な判断といえる。その上でPixel Watch 5を選ぶなら、手首周りが150mmを下回る場合は41mm、充電頻度を少しでも減らしたいなら45mmを推奨する。迷ったときはこの2点を優先的に考慮すると、失敗の少ない選択ができるだろう。
