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    ゲーム開発者にとって、Steamでより多くゲームを売るためには、ウィッシュリスト登録をたくさん集めることが一般的に重要だとされる。そのウィッシュリスト登録数について、近年“インフレ”が起こっている可能性があるという。開発者向けにマーケティング情報を提供するHow To Market A Gameを運営するChris Zukowski氏が10月13日に報告している。

    Steamのウィッシュリストとは、登録したゲームの発売時やセール開始時などに通知を受けることができる機能だ。つまりウィッシュリスト登録者は、そのゲームに興味を持っていることを意味するため、登録者数を多く集めれば売り上げにも結びつくとの見方がある。

    今回Chris Zukowski氏は、How To Market A Gameの読者のゲーム開発者から情報提供を受け、また独自の調査も含めた計160タイトル分の販売データをもとに、Steamのウィッシュリストのインフレについて検証している。もし、ウィッシュリスト登録者の何割がそのゲームを購入したかを示すコンバージョン率が全体的に低下傾向にあれば、1ウィッシュリストあたりの価値が下がるインフレ状態にあると言える。なお同氏は発売時点のウィッシュリスト登録数に対する、発売後の一定期間の販売本数の比率を算出して“コンバージョン率”とみなし、ウィッシュリスト登録数と売上の関係を分析している。

    検証は、2020年から2022年(前期)、そして2023年から2025年(後期)の2つの期間に分けて実施された。前期は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行した時期で、ゲーム業界においてはオンラインイベントの開催が一般化。また当時Steamでは、新作体験版配信イベント「Steam Nextフェス」が生まれた。後期は、そうしたオンラインイベントなどが成熟した時期にあたる。

    Image Credit: How To Market A Game

    上のグラフは、2020年から2022年に発売された34タイトルと、2023年から2025年に発売された126タイトルの、発売から1か月・6か月・1年時点での、コンバージョン率の中央値を示したものだ。灰色のドットが前期、黒色のドットが後期の数値を表しており、すべての時期においてコンバージョン率が低下していることが見て取れる(多少の誤差はあるとのこと)。1か月と6か月時点ではおよそ半分にまで落ち込んでおり、Zukowski氏はウィッシュリストのインフレは実際に起こっていると指摘している。

    ウィッシュリスト登録数がインフレしている背景としては、まず開発者がウィッシュリストを獲得することの重要性を理解し始めたことが挙げられている。それに役立つマーケティング情報も出回るようになり、また先述したようなオンラインイベントに参加すれば、1週間で数千件のウィッシュリスト登録を獲得できることも珍しくなくなった。Steamにて、開発者がイベントを作成して公開できる機能が用意されたことも、露出向上につながっているという。

    また、ウィッシュリスト登録をするゲーマー側の視点においても、各種オンラインイベントの充実によって新たなゲームを目にする機会が増え、さらにSteamのUIとしてウィッシュリスト登録をしやすくする変更が加えられたという背景があるようだ。ちなみにValveは、Steam Nextフェスを開催するようになった結果として、ウィッシュリスト登録数が増加している状況を伝えていた。ちなみに当時(2021年12月)には、Steam Nextフェス期間中に登録されたウィッシュリストのコンバージョン率(ウィッシュリスト登録者の何割がそのゲームを購入したかを示す比率)が、イベント前2週間に登録されたウィッシュリストと比べて、中央値で500%増加したとも報告された。

    ゲーム開発者はウィッシュリスト登録をより多く集めようと手を尽くし、ゲーマー向けには手軽に登録できる環境が整ってきた。その結果、登録者数が増加傾向にある一方で、“とりあえず登録しておく”ユーザーも増加してきたことによって、購入に結びつく割合が減った、つまりウィッシュリストのインフレにつながったということのようだ。

    なお今回の検証では、対象タイトルのコンバージョン率の中央値を用いておこなわれた。これについては、中央値から外れたタイトルほどコンバージョン率の変動が顕著になるという別の検証があり、そのためウィッシュリスト登録者数から売り上げ本数を推測することに関しては、一部で懐疑的な見方がある点には留意したい(関連記事)。

    ただZukowski氏は、ウィッシュリスト登録者数は、ゲームのローンチ時期の売れ行きを予測する上では、依然として重要な指標になると主張している。今回の160タイトルにおいて、ウィッシュリスト登録者数と、発売から1か月の売れ行きの相関関係を分析したところ、前期・後期ともに同程度の水準にあったという。これは、ウィッシュリスト登録者の総数と、特に関心が集まる発売前30日間に獲得した登録者数で比較した場合でも同様とのことである。

    最後に余談ながら、Steamでは「Steam Nextフェス 2026年10月エディション」が、来週10月20日から1週間にわたって開催予定だ。今後発売される新作の体験版が一斉配信されるイベントであり、これに先立ってすでに配信開始されているタイトルも多数存在する。プレイしてみて興味が湧いたタイトルがあれば、ぜひウィッシュリストに登録しておこう。

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