(CNN) 南極海に浮かぶ無人の火山島、ザボドフスキー島は、かつて世界最大のペンギンの繁殖地だったが、今はその地位を失った。この孤立した島から50万羽を超えるヒゲペンギンが姿を消したことが、科学者らの調査で明らかになったのだ。
「ヒゲペンギン」という名は、あごの下にある黒い羽毛の細い帯に由来する。厳しい環境にもうまく適応する能力があり、ザボドフスキー島はヒゲペンギンにとって、まさにうってつけの生息地だ。この島は、南極大陸の北に位置するサウスサンドウィッチ諸島の一部で、風の吹きすさぶ、岩だらけの荒涼とした島だ。
ザボドフスキー島には、ヒゲペンギンのほかに、頭部に特徴的な黄色い飾り羽のあるマカロニペンギンも生息している。同島は、2011年に世界最大のペンギンの繁殖地とされたが、23年に英国南極調査所(BAS)の研究者らが同島を訪れたところ、ヒゲペンギンの個体数が大幅に減少していたことが分かった。
10月7日に学術誌「カレントバイオロジー」に掲載された研究結果によると、ザボドフスキー島では11年以降、50万羽を超えるヒゲペンギンが姿を消した。これは島に生息していたペンギンの4分の1に相当する。研究者らが航空調査と衛星データを比較したところ、ヒゲペンギンが使用している巣の数は11年から25年までに63%も減少していた。
「南極の一つの場所で観測された生物群集構成の変化としては過去最大規模だ」と語るのは、ペンギンの生態を研究するBASの生態学者で、同研究を主導したノーマン・ラトクリフ氏だ。同氏らがまとめた研究報告書は、このヒゲペンギンの減少は、人間が引き起こした気候変動と関係している可能性があると結論付けている。
「ヒゲペンギン(の減少)は、温暖化の影響を示すかなり明確なシグナルだ」とラトクリフ氏は指摘した。

ザボドフスキー島は過酷な無人島だ/John Dickens
ザボドフスキー島は、最も近い定住地から約1930キロも離れている。あまりに遠く、過酷な環境であるため、科学者が同島を訪れることはめったにない。
BASの研究者らは、ザボドフスキー島を目指してフォークランド諸島を出発し、2週間にわたり荒海を航海した。途中、激しい嵐を避けるためにフィヨルドへの避難を余儀なくされることもあったが、最終的に崖がそれほど険しくなく、押し寄せる海流も比較的穏やかで、人がよじ登って上陸できる島内唯一の場所にたどり着いた。
研究者らは岩場で野営しながら、ドローン(無人機)や、フォークランド諸島に配備されていた英国機から撮影した航空写真、さらにペンギンに取り付けた追跡装置を使って、3日間にわたりペンギンの追跡・調査を行った。
近年、ヒゲペンギンの個体数は、懸念されるほど減少している。20年の研究では、南極の一部の島にある繁殖地で、1980年代に実施された過去の調査時と比べて、50%近く減少していることが分かった。しかし、ザボドフスキー島に生息するヒゲペンギンだけは、こうした減少を免れていると長い間考えられてきた。

ザボドフスキー島にあるペンギン繁殖地/John Dickens

南極サウス・オークニー諸島のシグニー島でひなに餌を与えるヒゲペンギン/Richard Phillips
ところが、同島でもヒゲペンギンの急激かつ大幅な減少がBASの研究者らによって確認された。今やザボドフスキー島のヒゲペンギンの減少率は世界で最も高い。ラトクリフ氏によると、同島では年間約7%のペースでヒゲペンギンが減少しており、これは他の地域の約2~3倍のペースだという。
科学者らは、2016年の火山噴火が減少の原因である可能性を否定した。ヒゲペンギンの減少傾向は噴火の数年前からすでに始まっており、その後も長年にわたり一定のペースで減少しているためだ。また、営巣場所をめぐるペンギン間の競争や、この地域で行われているオキアミ漁の影響が、個体数減少の原因となっていることを示す証拠も見つからなかった。
