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    目指すは芸術的なイノベーション

    というわけで、ルーチェ。実は一部カスタマーなどの招待客の内覧用として、傍らの個室内で展示されていたんです。今回のイベントはフェラーリとしてはかなりオープンな施しでしたが、やはりここは別腹。ご開帳の特別参拝は檀家さんのみですといわれれば、それは納得するしかありません。あるいは前述のとおり、バズリすぎによってだいぶ目立ってしまいましたから、実車はなるべく引っ込めときたいという意向も働いているのかなと思います。

    ちなみにルーチェは現状で設定されている日本市場向けの枠はほぼ完売。この「ほぼ」というのがポイントでして、いくらフェラーリであっても、まったく前例のないパワートレインの初物をミズテンで頼むのはちょっと……というカスタマーが少なからずいらっしゃったのだと思います。実際、そんな話も販売店の方から耳にしました。

    個人的に、これはまったく正しい反応ではないかと思うわけです。片っ端から買っていく豪気なカスタマーもいれば、その価値を吟味して自分の尺度に照らしながら慎重に購入を決めるカスタマーもいる。双方が相互に支え合うかたちで構成されることは、少なからぬ日本の販売の成熟化・健全化という点において、フェラーリにとってもプラスにつながるのではないでしょうか。

    数字といえばヴィーニャCEOは、今回のプレスカンファレンスでこんな話をしていました。

    「われわれのビジネスにおいてはしばしば財務が注目されます。そこでは台数やシェア、売り上げや利益率、それらに対する約束や成果が評価されるわけです。でも、私はフェラーリの真価は数字の優劣よりも製品そのもののイノベーションにあると思っています」

    「さまざまなテクノロジーを用いたサプライズをクライアントにお届けする、そのための大胆な決断こそが数字以上にリーダーに求められる責任です。もちろん、その手段は内燃機に限られるものでもありません。われわれはすでにプラグインハイブリッドモデルでもそれを形にしています。そして電気自動車も然りです。大事なのはそれぞれのカテゴリーでクローンではなくイノベーションのリーダーであること。それがアルゴリズム的なものではなくアーティスティックなものであり、人々のエモーションをかきたてるものであること。それこそがフェラーリだというわれわれの意思が、ルーチェには込められているのです」

    物理学専攻の弱電系エンジニアである氏をして、アルゴリズムよりアーティシズムを由と言わしめる。意外な気もしますが、それこそがフェラーリの紡いできたヘリテイジでもあります。フェラーリを見かける頻度もそれなりに高い東京の道端でルーチェに遭遇する日は果てしなく遠いわけではなさそうです。果たしてそれは旧(ふる)きも新しきも雑然と一体化する日本の風景と触れ合って、どんな余韻をわれわれに残していくのでしょうか。

    (文=渡辺敏史/写真=webCG/編集=関 顕也)

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