〔特集〕日本の“はじまり”の地を巡る 「奈良」古都の神秘 「飛鳥・藤原の宮都」が世界遺産に登録され、新たな光が当たる奈良。日本が国家として夜明けを迎えた飛鳥時代に花開いた仏教文化、それから時を経て明治・大正期の歴史的建造物が今に甦る珠玉のホテルでの滞在、さらに1000年以上の歴史が紡いできた、薬草と発酵が織り成す美食の数々 ──。悠久の時を超えて古都の精神に出合う、唯一無二の旅へとご案内します。
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日本の原点を巡る
1000年を超える遥かなる時を経て、受け継がれる寺院や仏像、壮大な都の跡と静謐な遺跡。今、日本の源流を辿る歴史探訪へ。
時を超えて息づく日本の黎明期
飛鳥時代の美と祈り新たな世界遺産「飛鳥・藤原の宮都」を訪ねる 2026年7月、新しく日本の世界遺産に加わった「飛鳥・藤原の宮都」。国内の世界遺産では27番目、世界文化遺産では22番目の登録となります。世界遺産登録実現にも尽力した奈良文化財研究所 所長の本中 眞さんによれば、今回評価されたのは、単に「日本という国家が生まれた地」であるという点だけではないといいます。
「中国から伝わった律令制や仏教を取り入れ、東アジアの東端に位置する日本列島で、官僚制を備えた国家が形成されていった過程を示す点に、世界史的な価値があります」と本中さん。
また、宮殿・官衙(かんが) 、寺院、墳墓という3つの構成要素が、農地や集落の中で守られてきたことで、当時の地形や景観も受け継がれています。「目に見える遺構だけでなく、1000年以上変わらぬ風景の中に歴史を感じること。それこそが、この地を歩く旅の醍醐味なのです」
日本の始まりに思いを馳せて
阿部亮平さん(Snow Man)と巡る新世界遺産の旅へ 
阿部亮平(あべ・りょうへい)
飛鳥寺 (明日香村)
国家の平和を願った仏教の源流
世界遺産検定1級に合格したことでも知られる阿部亮平さん。
「『日本』という言葉が初めて使われ、“日本初”をたくさん発見できる飛鳥・藤原はとても興味深いです」と目を輝かせます。その一つが、本格的な伽藍を備えた日本初の仏教寺院「飛鳥寺(あすかでら)」です。
飛鳥寺は、西暦588年に建立が始まり、596年に完成。その成り立ちが『日本書紀』に詳細に記されているように、国家にとって重要な役割を持ち、仏教を軸とした国家形成の出発点となりました。蘇我馬子の私財で創建され、聖徳太子もゆかりの深い場所。落成当時は、仏法を守る寺を意味する「法興寺」と名づけられ、飛鳥の中心地にあることから「飛鳥寺」と呼ばれるようになりました。
この寺院を訪れる多くの人が楽しみにしているのが日本最古の「飛鳥大仏」。
「約1400年間変わらず、同じ場所に鎮座するご本尊です。飛鳥時代は単に模倣に終わらず、日本独自の形を模索していました。大仏の人間味ある独特の表情も、当時の日本人にとって異国の神仏を受け入れる契機になったのではないかと思います」と住職の植島寶照さんは案内してくれました。それを受けて、阿部さんはこう語ります。
「私たちをずっと見守ってくれている慈悲深い存在に感じます。日本国家の始まりでは他国の宗教や文化を受け入れ、独自のスタイルを作り出していたのは誇るべきこと。こういう価値観が今の世の中でも共有されれば、平和な時代がやってくるように思います」
飛鳥寺
奈良県高市郡明日香村飛鳥682
TEL:0744(54)2126
参拝時間:9時~17時30分(10月~3月は17時まで。受け付けは各15分前まで)
料金:500円(一般・大学生)
URL:https://www.instagram.com/asukadera
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この記事の掲載号
『家庭画報』2026年10月号

日本で最初の本格的な仏教寺院である「飛鳥寺」。本尊の「飛鳥大仏」は、渡来人の仏師・鞍作鳥(くらつくりのとり)により制作された日本初の鋳造大仏であり、最古の仏像とされる。度重なる火災に遭いながらも、約1400年の間、創建時と変わらぬ場所に鎮座している。
飛鳥寺の本尊で、現存する日本最古の大仏「飛鳥大仏」(銅造釈迦如来坐像)。寺院の完成から13年後、推古天皇の命で有力者が造営した。約15トンの銅が使用され、当時は全身に約30キロの金メッキが施されていた。
本尊の飛鳥大仏。近年のX線分析調査で、顔や右手の大部分が造立当初の姿を留めている可能性が高いことが判明。
本堂と繫がる資料室には出土した瓦などが展示されている。
日本初の瓦葺き・礎石建ちの建造物が建立されたことでも歴史的価値が高い。1957年に行われた発掘調査で発見された礎石など(写真上)から当時の伽藍の全容が明らかになった。