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    ドローンとミサイルの飽和攻撃に備え、首都防衛と国家機能の分散をどう両立させるか、日本にも共通する課題

    福山 隆

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    2026.10.23(金)

    韓国・北朝鮮 安全保障

    韓国・漣川付近で行われた米韓合同演習「フリーダム・シールド26」で渡河する韓国陸軍のK2戦車(2026年3月14日、写真:米陸軍)

    ドローンとミサイルの大量攻撃が変えた首都防衛の常識

     2025年7月9日、ロシア軍はウクライナに対し、おとり用を含む728機のドローンと13発のミサイルを投入する大規模な空襲を実施した。

     ウクライナ空軍の発表を伝えたインタファクス・ウクライナ通信によれば、計741の飛来目標のうち、ドローン711機とミサイル7発の計718を撃墜または無力化した。

     その後もロシア軍による大量攻撃は続いている。

     2026年10月19日には、16発の弾道ミサイルを含むミサイル攻撃と、200機を超えるドローンによる大規模攻撃が行われ、ウクライナのエネルギー施設などが被害を受けた。

     ウクライナ戦争が明らかにしているのは、首都の防空態勢をどれほど強化しても、大量のドローンやミサイルを組み合わせた飽和攻撃を完全に防ぎ切ることは難しいという現実である。

     もちろん、首都の防衛を徹底することは国家にとって最優先の課題の一つである。しかし、それだけで十分なのだろうか。

     仮に首都が大規模な攻撃を受け、政府や軍の主要施設が機能を失った場合でも、国家として指揮命令を維持し、戦い続けられる態勢を整えておく必要がある。

     この問題を考えるうえで注目したいのが、韓国で長年進んできた軍事・行政中枢の分散と、今回決まった国防部の世宗移転である。

     韓国政府は2026年10月13日、国防部を含む首都圏所在の中央行政機関など44機関の世宗市への移転計画を発表した。

     その狙いは行政機能の地方分散にあるとされる。しかし、北朝鮮の軍事的脅威にさらされてきた韓国の歴史を振り返ると、この動きには国家安全保障上の重要な意味があるように思われる。

     私が韓国の防衛駐在官として赴任していた30年以上前、韓国国防部の大佐から聞いた話が、今も忘れられない。

    30年以上前、韓国国防部の大佐が語った懸念

     私が防衛駐在官として韓国に赴任していた1990~93年、韓国国防部の大佐から、韓国の安全保障が抱える根本的な問題について話を聞いた。

     その大佐が指摘したのは、首都ソウルが非武装地帯(DMZ)に近接していることこそ、韓国の安全保障上の大きな弱点だという点だった。

     ひとたび戦争が始まれば、1000万人規模の人口を抱えるソウルの市民生活だけでなく、政治・経済の中枢機能も麻痺しかねない。

     とりわけ、大統領をはじめ軍の指揮組織や要員が開戦初期に攻撃に巻き込まれ、死傷する事態になれば、韓国軍の作戦運用にも致命的な支障が生じかねないという懸念だった。

     朝鮮戦争では、韓国政府はソウルから大田、大邱を経て釜山へと退避せざるを得なかった。軍も戦況の悪化に伴い、指揮・作戦態勢の変更を余儀なくされた。

     こうした歴史的経験を持つ韓国では、政府や軍の指揮機能をどこに配置し、戦時にどう維持するかが、長年にわたる重要な課題となってきた。

     1989年7月に陸軍本部と空軍本部がソウルから忠清南道の鶏龍台へ移転したのも、国家機能の地方分散や軍の指揮機関の集約という政策の流れの中に位置付けられる。

     その後、1993年6月には海軍本部も鶏龍台への移転を完了した。

     ただし、国防部、合同参謀本部、米韓連合軍司令部などの主要機能は、長くソウルの龍山に残されていた。

     あれから30年以上が経過した。

     戦争の様相は大きく変わった。ドローンや精密誘導ミサイルによって、戦線から遠く離れた施設も攻撃の対象となり、同時に多数の兵器を投入することで防空網を圧迫する戦い方が広がっている。

     30年以上前に韓国国防部の大佐が語った懸念は、現在の戦争の様相によって、新たな重みを持ち始めているのである。

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