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    2024年のパリオリンピック代表選手(候補を含む)であった日本人エリートアスリートにおける、サプリメントの利用状況が報告された。全体で9割以上のアスリートが利用していたこと、栄養サポートを受けたことのあるアスリートの利用率が有意に高いこと、エビデンスの豊富なグループAサプリメントの利用率にも栄養サポートの有無で有意差があることなどが明らかにされている。日本スポーツ振興センター ハイパフォーマンススポーツセンターの品川明穂氏らの研究成果であり、「Frontiers in Sports and Active Living」に論文が掲載された。

    2024年パリ五輪における日本人エリートアスリートのサプリメント利用率の実態 栄養サポートの有無で有意差あり

    日本人エリートアスリートのサプリメント摂取は、栄養サポートの有無で異なるか?

    オリンピアンを含む幅広い競技レベル、年齢層のアスリートがサプリメントを利用していることが知られている。一方でアスリートの場合は、不用意なサプリメント利用によってドーピング規則違反となりキャリアが大きく傷ついてしまうリスクをはらんでいる。そのリスクの抑制と、パフォーマンス上のメリットの期待を両立させようとする際、専門スタッフによるエビデンスに基づくサポートが有用と考えられる。

    ただし、日本人エリートアスリートが栄養サポートをどの程度受けているのか、サポートの有無でサプリメント利用状況が異なるのかは、これまで十分に調査されていない。これらを背景として品川氏らは、2024年のパリオリンピックの代表および代表候補選手を対象とする横断研究を実施した。

    31競技800人のアスリートを対象としてメディカルチェック時に調査

    調査対象は、パリ五輪で行われた32競技のうちテコンドーを除く31競技の代表(候補を含む)800人(男性51.8%、年齢範囲14~48歳)で、国立スポーツ科学センターで実施されたメディカルチェック(以下、MC)時に調査した。

    調査のための質問内容は、MC用に作られた質問票を管理栄養士が一部改訂したうえで、使用した。具体的には、栄養に関するサポートを受けた経験はあるか、補食や水分補給に関する知識の有無や実践状況はどうか、サプリメントを利用しているかといった質問で構成されていた。

    研究からの脱落はなく、MCを受けた800人の回答のすべてが解析に用いられた。

    対象者全体において、87%のアスリートは栄養サポートを受けた経験あり、サプリメント利用率は92%

    栄養サポートを受けたアスリートはサプリメント利用率が有意に高い

    全体として、86.9%のアスリートが栄養サポートを受けた経験を有していた。栄養サポートを受けたことのあるアスリートは、その経験のないアスリートより年齢が高く、有意差が認められた(中央値が26 vs 25歳、p=0.020)。男女比についてはサポート経験の有無による有意差がなかった。

    過去1年間で1種類以上のサプリメントを利用したことのあるアスリートの割合は92.3%であり、摂取しているサプリメントの数は平均2.3だった。栄養サポートを受けたことのあるアスリートは、その経験のないアスリートよりサプリメント利用率が有意に高かった(93.7 vs 82.9%、p<0.001)。

    栄養サポートを受けたアスリートは、グループAのサプリメント利用率も有意に高い

    次に、オーストラリアスポーツ研究所(Australian Institute of Sport;AIS)によるサプリメント分類に基づくグループA~Cのサプリメント利用状況を比較した。なお、AISの定義では、グループAは「スポーツにおける十分なエビデンスのあるもの」、グループBは「エビデンスはあるがさらなる研究が必要なもの」、グループCは「エビデンスがないか不足しているもの」とされており、これら以外に「ドーピングリスクのあるもの」はグループDとされている。

    解析の結果、グループAの利用率は全体で91.4%であり、3つの分類の中で最も高かった。栄養サポートを受けた経験の有無で比較すると、経験のあるアスリートは92.5%、経験のないアスリートは83.8%であって、前者が有意に高かった(p=0.003)。なお、グループAのサプリメントは、スポーツフード、医療用サプリメント、パフォーマンス向上サプリメントに細分化されているが、これらのうちスポーツフードの利用率にも有意差があり、栄養サポートを受けた経験のあるアスリートで高かった(91.4 vs 80.0%、p<0.001)。医療用サプリメント、パフォーマンス向上サプリメントの利用率は有意差がなかった。

    グループBの利用率は全体で9.1%であり、3つの分類の中で最も低かった。栄養サポートを受けた経験の有無による有意差はなかった。

    グループCの利用率は全体で43.1%であった。栄養サポートを受けた経験の有無で比較すると、経験のあるアスリートは44.5%、経験のないアスリートは34.3%であって、前者の方に高い傾向がみられた(p=0.050)。

    栄養サポートを受けた経験は、サプリメント利用の独立した関連因子

    続いて、サプリメント利用を従属変数、年齢と性別、および栄養サポートを受けた経験を独立変数とするロジスティック回帰分析を実施。その結果、栄養サポートを受けた経験を有することは、サプリメント利用、グループAのサプリメント利用、およびグループAのうちのスポーツフードの利用に、それぞれ独立した関連が認められた。

    オッズ比(OR)および95%信頼区間は以下のとおり。栄養サポートを受けた経験を有することとサプリメント利用との関連はOR3.11(1.72~5.65)、グループAのサプリメント利用との関連はOR2.42(1.33~4.38)、グループAのうちのスポーツフードの利用との関連はOR2.68(1.54~4.64)。

    これらのほかに、栄養サポートを受けたことのあるアスリートは、その経験のないアスリートに比べて、補食や水分補給に関する知識および実践に関する質問に、肯定的な回答をする割合が高いという有意差も認められた。

    栄養スタッフがサプリメント関連情報をアスリートに対して積極的に提供する必要性

    著者らは本研究に際して、「栄養サポートを受けた経験があるアスリートは、経験のないアスリートに比べてサプリメント利用率が高い」、「栄養サポートを受けた経験があるアスリートはグループAのサプリメントの摂取量が多く、経験のないアスリートはグループCのサプリメントの摂取量が多い」という二つの仮説を立てていた。結果として、一つ目の仮説は確認され、二つ目の仮説は部分的に確認されたが、グループCサプリメントに関する部分は否定された。なお、グループCサプリメントの結果について論文の考察では、日本人アスリートはグループCに該当する分岐鎖アミノ酸(branched-chain amino acid;BCAA)の利用率が高く、日本代表選手団のスポンサーがBCAAサプリメントをアスリートに提供していたことなどが関係している可能性に言及されている。

    論文の結論は、横断研究のため因果関係の考察が制限されるとしたうえで、「得られた知見は、サポートスタッフがサプリメントの有効性と安全性についてアスリートへ積極的に情報を提供する必要があることを示唆している。アスリートをサポートする栄養士は、医師、薬剤師、その他のサポートスタッフと連携し、サプリメント使用に関する包括的な教育を行うべきだ」と総括されている。

    文献情報

    原典論文のタイトルは、「Supplementation of Japanese elite athletes for the Paris 2024 Olympic games: differences according to nutritional support experience」。〔Front Sports Act Living. 2026 Jul 30:8:1892171〕
    原文はこちら(Frontiers Media)

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