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     宇宙の起源は科学史上、最大級の謎の1つだ。科学者たちは、ビッグバンモデルや宇宙のインフレーション、量子宇宙論に基づく仮説など、宇宙がどのように始まったのかを説明する数多くの理論や、検証可能な予測を打ち出してきた。

    Lumina Projectによるシミュレーション
    提供:The Lumina Project

    ※クリックすると拡大画像が見られます

     こうした理論を検証するため、ハーバード大学とスミソニアン協会が共同で運営する天体物理学センターの研究者らは、初期宇宙を再現するシミュレーション「Lumina Project」を開発した。その規模は、これまでの同種のシミュレーションを大きく上回る。

     学術誌「Monthly Notices of the Royal Astronomical Society」で発表された論文(PDF)では、宇宙誕生から最初の20億年間に、通常の物質、暗黒物質(ダークマター)、放射がどのように相互作用したと考えられるかを詳しく説明している。対象となる領域は、1辺が約15億光年の立方体に相当する。

     比較すると、初期宇宙のシミュレーションとして従来最大だったのは、2022年の「Thesan」だ。1辺が約3億光年の立方体に相当する領域を対象に、初期宇宙の約10億年間を再現していた。

     Luminaは、これらを驚くほど精細に再現する。その大きな支えとなっているのが、米航空宇宙局(NASA)のジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)などによる、最古の天体の長期にわたる観測だ。科学者たちはこうした古い天体を調べることで、初期宇宙がどのような姿をしていたのか、その一端を少しずつ描き出してきた。

     論文の筆頭著者であるOliver Zier氏は発表の中で、「JWSTによって、初期宇宙は天体物理学の刺激的な新たな研究領域になった」と述べ、「この望遠鏡で観測しているものを理解するには、理論を詳細な予測に落とし込む必要がある」とした。

    巨大シミュレーションを支える科学

     このシミュレーションの計算には、米テネシー州のオークリッジ国立研究所にあるスーパーコンピューター「Frontier」が使われた。Frontierにはシステム全体で約3万7000基のGPUがあり、Lumina Projectはそのうち約1万5000基を使用した。

     こうした計算能力により、初期宇宙のシミュレーションとして過去最大の規模と、これまでにない精細さが実現し、研究者らは数多くの独自の機能を活用できるようになった。

     その1つが、初期宇宙で起きたと考えられているヘリウムの再電離だ。初期の宇宙は非常に高温で、通常の物質のほぼすべてが電離し、電荷を持つ粒子として存在していた。ビッグバンから約38万年後に宇宙が冷えると、電気的に中性の水素原子やヘリウム原子が形成され始めた。その後、宇宙の歴史から見れば比較的短い時間のうちに最初の世代の恒星が誕生し、周囲の水素原子やヘリウム原子を再び電離させるほどの紫外線を放つようになった。

     Zier氏は米CNETへの電子メールで、「Luminaは水素とヘリウムの両方の再電離を追跡する」と説明した。「これにより、これらの過程を、物理的に整合性の取れた1つのシミュレーションの中で併せて研究できる。つまり、再電離が起きる様子を捉えると同時に、その影響がモデル内で進化する宇宙に即座に及ぶようにしている」という。

     論文の共著者で、テキサス大学ダラス校で物理学の助教授を務めるAaron Smith氏は、Luminaのようなシミュレーションを構築できるのは非常に恵まれていると述べた。「これほど広大な宇宙の領域で、水素とヘリウムの両方が現在の状態へと変化する過程を追いながら、その変化を引き起こす銀河やその他の発光天体も細かく捉えられるようになったのは、今回が初めてだ」と、Smith氏は発表の中で述べた。

     Luminaの主な役割は、科学者が初期宇宙に関する理論を検証し、その妥当性を確かめる手助けをすることだ。また、自分たちの物理学への理解が、シミュレーションの結果と整合するかを見極めるためにも役立つ。

     研究チームはすでに、このシミュレーションを使って興味深い予測を導き出している。その1つは、初期宇宙にはJWSTの観測が示唆するよりも「大質量の銀河が少なかった」という予測だ。また、JWSTが捉えた謎の「小さな赤い点(リトルレッドドット)」も、シミュレーション内に登場する。その正体は「ブラックホール星」ではないかと考える科学者もいる。

    初期宇宙が織りなす息をのむような映像

     副産物として楽しめるのが、実に美しい映像だ。温度の異なるガスが混ざり合う様子や化学反応、初期の銀河や恒星の位置など、初期宇宙で起きたさまざまな相互作用を映し出す。暗黒物質に加え、暗黒エネルギー(ダークエネルギー)が存在すると考えられる場所も描き込まれており、全体は色鮮やかな雲や糸状の構造、フィラメントが連なる美しい光景となっている。

     例えば、上の動画を見てほしい。Luminaがシミュレーションする領域全体を見渡す場面から始まり、ほとんど何もない空間に浮かぶ1つの銀河へとズームしていく。その様子から、このシミュレーションの広大さを実感できる。動画のほぼどこで一時停止しても、見事なスクリーンショットを撮れるはずだ(編集部注:外部配信先では一部の画像や動画を閲覧できないことがあります。すべての画像や動画はCNET Japanでご覧いただけます)。

     次の動画では、シミュレーション内の巨大なハローを飛び抜けるような体験ができる。最初に、暗黒物質の密度、ガスの温度、ガスの金属量(宇宙のガスに重い元素がどれだけ含まれているかを示す量)、恒星の光といったさまざまなレイヤーが順に重ねられる。動画の終わりにそれらのレイヤーが非表示になると、銀河団が姿を現す。

     Lumina Projectでは、ガスの密度から水素とヘリウムの再電離まで、さまざまな現象を紹介する壮観な動画15本を公開している。

    この記事は海外Ziff Davis発の記事を4Xが日本向けに編集したものです。

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