デル・テクノロジーズは10月27日、8月に日本法人の新社長に就任したJon Robottom(ジョン・ロボトム)氏の就任会見を開いた。同氏は、日本企業が直面するAI導入の現在地と課題、そしてIT基盤をビジネス成果へ直結させるためのデルの提供価値と成長戦略について詳細に語った。

デル・テクノロジーズ 代表取締役社長のJon Robottom(ジョン・ロボトム)氏
テクノロジー業界で25年以上のキャリアを持つRobottom氏は、デル・テクノロジーズの日本法人で7年以上にわたり営業リーダーシップをとった後、一度同社を離れた経歴を持つ。その後は日本マイクロソフトでクラウドおよびAI変革を、レノボ・エンタープライズ・ソリューションズでエンタープライズインフラ基盤を、そして日本AMDでAI・半導体イノベーションの領域をけん引してきた。
Robottom氏は自身の経歴を振り返り、「私はちょうど10年前に一度デルを離れたが、その10年の間にデルは中身とケイパビリティーが大きく変わった。以前はPCやサーバーを提供する会社というイメージが強かったが、現在はAIを動かすためのデータセンターの構築からサイバーセキュリティの確保、データを安全に管理・分析する仕組みなど、最先端のITインフラをトータルで提供する企業へと事業の中身がシフトしている。加えて、ケイパビリティーも『注文された製品を迅速に届ける』ことに加え、AIを使ってどのようにビジネスを成長させるかといったコンサルティング能力や、パートナー企業を巻き込みシステムを作り上げるリーダーシップを備えている」とし、実行力や幅広い支援ができる企業へと変化を遂げていることを示した。
さらに、「私は日本の業界を学び、27年日本にいる経験を生かしながら、日本市場への貢献度を上げられると思っている。AIのビジネスにおいてスピードはとても重要なので、日本語を話せる点もメリットと思いたい」と述べ、顧客やパートナーとのリレーション構築をかつてない速度で推進していく姿勢を強調した。
データで見る日本企業のAI導入現状と本格活用を阻む「3つの壁」
会見では、デル・テクノロジーズが世界35カ国の意思決定者2950人(うち日本150人)を対象に実施した最新調査「Modern Enterprise Readiness Study 2026」の結果も発表した。
同調査によれば、生成AI活用の初期段階を脱し、中期から後期フェーズへと進んだ日本企業の割合は、2025年の35%から2026年には58%へと急拡大している。また、日本企業におけるAI活用の用途トップ3は「データ分析・意思決定支援」(55%)、「セキュリティ/脅威検知」(48%)、「IT自動化・インフラ運用」(44%)となっており、単なる業務効率化ツールとしてではなく、経営判断やリスク管理の中核にAIを据えようとする意図が読み取れる。
しかし、実際の「成果創出」という観点では大きな壁が存在する。情報処理推進機構(IPA)の「DX動向2026」データを引用した説明によれば、AIによって業務効率化や迅速化ができていると実感している企業が91.6%に上る一方で、売り上げや利益向上といった直接的なビジネス効果を感じている企業はわずか3.9%(約4%)にとどまっているのが現実だ。
この隔たりについて、Robottom氏は「利益や売り上げにつながっていないのは、AIが作ったプロセスを人間が確認し、修正する作業が残っているため。しかし人間の確認作業はハルシネーション(誤情報)や情報漏えいをしないためにも重要だ。この課題を乗り越えるには『Trusted AI(信頼できるAI)』が必要になる」と説明した。
Robottom氏は、本格的なビジネス展開を阻む要因として、(1)Trusted AIの担保、(2)人材不足、(3)実行基盤(インフラストラクチャー)」の不足――の3つを挙げる。
(1)Trusted AIの担保では、47%の企業がセキュリティ、コンプライアンス、プライバシーへの懸念を抱いていると調査結果を用いて説明し、人材不足では、経済産業省の予測では、2040年までにAI・ロボット利活用人材が約34万人不足するとされており、中長期的な課題と指摘する。(3)AI・データ・セキュリティを横断した実行基盤(インフラストラクチャー)が不足しているという。
新たなAI施策を進める条件として、72%もの企業が「実証されたビジネス成果と明確なリスク管理計画」を求めており、これら3つの壁を乗り越える「実行力」こそが、AI投資を利益に変える鍵となる。
課題解決に向けたデル・テクノロジーズの戦略と提供価値
これらの課題解決に向けデルは、ワンストップのエンドツーエンドソリューションを提供する。その中核となるのが、グローバルで6500社以上が導入しているアーキテクチャー「Dell AI Factory(デルAIファクトリー)」だ。
Dell AI Factoryは、AIのテスト段階から本番運用・拡大へのギャップを解消するための基盤。インフラストラクチャー、データ基盤、ソフトウェア、プロフェッショナルサービスを統合して提供するほか、AIの構想策定から実際の導入、日々の運用、そして将来的な拡張までを網羅的にサポートすることが特徴だ。新規インフラの構築にとどまらず、現在保有するデータやアプリケーションを活用しながら、AIを実際のビジネス成果に直結させることも可能だ。
さらに、経営層とのビジョン共有の場として「エグゼクティブ・ブリーフィング・ソリューション・センター(EBSC)」も用意する。ここでは、経営者と直接AIのビジョンを描き、隣接する「AI Innovation Lab」で即座に実証テストすることも可能。「日本はデル全体で見ても非常に大事なマーケット。グローバルでも3箇所しかなく、その1つが日本の大手町に存在する」と、Robottom氏はその重要性を説く。
人材不足という課題に対しては、次世代リーダーや若手IT人材の育成を目的とした「Next Generation Leadership Program(NGLP)」やAI教育プログラムを展開し、日本の持続的なAI競争力向上へ直接的に投資していく方針を示した。
Robottom氏は「次の競争力を決めるのはAIではなく『実行力』だ」とし、デル・テクノロジーズは、単なるハードウェアベンダーの枠を超え、信頼できるインフラ構築から人材育成、そしてエコシステムを通じた価値創造までを包括的に担う戦略的パートナーとしての立ち位置を明確にした。
