ドラマのロケをする榮倉奈々(SmartFLASH)
榮倉奈々の12年ぶり主演作で、テレ朝が今期から新設した期待のドラマ枠だというのに、視聴率は低空飛行でTVerの再生数で話題になることもない。
【写真あり】異次元のスタイル! 榮倉奈々、12年ぶりの連ドラ主演姿
榮倉奈々と赤楚衛二がダブル主演する『あにいもうと』(テレビ朝日系)。10月24日(土)に第2話まで放送されているが、静かにひっそりとコケているのだ。
視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区)は第1話が世帯4.6%・個人2.3%と低めのスタートとなり、第2話はそこから下落して世帯3.7%・個人2.0%。個人視聴率に関しては1%台目前となっている。
TVerのお気に入り登録は50.4万(10月29日現在)と悪くはないのだが、見逃し配信で何百万再生突破といった景気のいい話は聞こえてこない。
なぜ不発となっているのか、その原因を考えてみた。
■ストーリーが時代に合っていない?
トラブルメーカーの兄(木村達成)に人生を狂わされながらも、夢だった医師となった妹の春木奈緒(榮倉)。希少がんを患い、生きる望みを失っている妹(宮崎優)のために、貧しいながらも妹の医療費を稼ぐために造船所で身を粉にして働いている園田修司(赤楚)。
2組の兄妹を中心に、患者の家族と担当医という関係性で出会った奈緒と修司の許されざる愛を描いていくラブ・サスペンスだ。
とある田舎町で出会った奈緒と修司の恋に突然幕が下りて別れるまでの物語となる「地方編」と、3年後に都会で再会した2人が愛と疑惑に翻弄されていく「東京編」の2部構成になるそう。現在は「地方編」で2人が惹かれあっていく様子が描かれている。
第2話まで視聴した感想から言わせていただくと、シリアスなストーリーを硬派かつ丁寧に描いており、良質なドラマに仕上がっていると感じた。
けれど、正直、時代にあっていないという印象も強いのだ。
■不幸のてんこ盛りで、絶望的すぎる
そう感じる原因は、とにかく暗いから。
第2話で、修司の妹は希少がんの治験対象者に選ばれて光明が差しているのだが、実は第1話冒頭で奈緒が妹から「先生が私を楽にしてね」とお願いされ、吸入器の管を抜くシーンが挿入されていた。担当医である奈緒が安楽死させたと思われる描写となっているため、妹は「地方編」で亡くなってしまう可能性が高そう。
また、修司と妹は祖母と一緒に暮らしていたのだが、祖母がひとりで夕食を作っている最中に火事が起こり、帰らぬ人に……。この火事には放火疑惑が浮上しており、リゾート開発に向けた土地買収を進めていた奈緒の兄が関与している可能性が示唆されている。
ちなみに修司と妹の母親も登場したのだが、子どもたちをほったらかしにして家を出ていった毒親で、修司は母を拒絶している。要は、主人公たちを取り巻く状況が不幸のてんこ盛りで、絶望的すぎるのである。
このように “不幸マシマシ” のストーリーは、日本社会がまだ活気があった1990年代ごろまでは、大衆も心に余裕があったのでぐいぐい没入する視聴者も多かったのかもしれない。
しかし、現在は日本全体がどんよりと暗いムードで活気も減退している。そんな時代に暗すぎるドラマは刺さりにくい気がするのだ。ちょっといじわるな言い方をするなら、昔は流行っていた “古いタイプのドラマ” という印象さえある。
■“引き” が弱く、“刺激” も弱い
またストーリーが暗いのは百歩譲っていいとしても、続きを観たくなるような “引き” の強さもあまりない。
たとえば今年のヒット作である日曜劇場(TBS系)の『リブート』や『VIVANT』は、そもそも『あにいもうと』とはジャンルがまったく異なるが、よく考えるとかなり暗いストーリーで、不幸と絶望のてんこ盛りだった。
ただ、おそらくこの2作品の視聴者の頭にぱっと思い浮かぶのは、「暗い」「不幸」「絶望」といったキーワードではないだろう。
それは、考察熱を掻き立てる謎や伏線が数多く散りばめられていたり、息つく暇もないほど状況が変わるスピーディな展開だったり、敵を撃破して一泡吹かせるといったカタルシスが数話ごとに用意されていたりと、“刺激” が強かったからに違いない。
そう考えると、『あにいもうと』は “刺激” が弱いのだ。
たとえば、「地方編」で2人が別れてしまうのは修司の妹の死が理由だろうと想像がつくし、今後描かれる「東京編」の疑惑というのは、奈緒が安楽死させたのかどうかではないかと予想できてしまう。
また、第2話終了時点の謎(=引きになる要素)は、ディベロッパーに勤める奈緒の兄が、なにか悪だくみしているのではないか、放火犯なのではないかという要素ぐらい。
次回以降が気になって仕方なくなるような吸引力があまりないのである。
■このまま埋もれてしまうのは惜しい
ただ一応断わっておくと、『あにいもうと』のような暗く静かなドラマがダメだと言いたいわけではない。
謎や伏線がさほどなく考察要素が少なくても、溜飲を一気に下げるすっきり展開がなくても、次々と不幸に見舞われる主人公たちの機微を丁寧に描くシリアスな作品があってもいいとは思う。刺さる視聴者には、静かに、でも深く、しっかりと刺さるはずだからだ。
とはいえ、それがいまの時代に合っているか? こういうドラマがヒットしそうか? と聞かれても「YES」とは言いづらいのだ。
いまの時代だと、希望が見い出しづらく刺激も少ない作風が刺さる層自体が少なそうだし、刺さっている人がいても、静かに心の奥底へじんわり染み渡るタイプの作風なので、熱狂を生み出しにくいだろう。
近年は『リブート』や『VIVANT』のような刺激が強いドラマがヒットしやすいわけだが、逆に考えると、視聴者がそういう強い刺激に慣れすぎて、より大きな衝撃を求めすぎている面もあるに違いない。
要するに『あにいもうと』は、『リブート』や『VIVANT』とはある意味で真逆の作風になっていて、残念ながらこの手のドラマは目立たずにヒットしにくい時代というわけだ。
今夜の放送は第3話。こういった暗くも美しい情緒的な物語が、このまま埋もれてしまうのは惜しい気がするが……。「地方編」のクライマックスで盛り上がって、世間でも大きな話題になれば、盛り返すこともできるだろうが、はたして?
●堺屋大地
恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。『文春オンライン』(文藝春秋)、『現代ビジネス』(講談社)、『集英社オンライン』(集英社)、『週刊女性PRIME』(主婦と生活社)、『コクハク』(日刊現代)、『日刊SPA!』『女子SPA!』(扶桑社)などにコラム寄稿
