2026年10月28日(現地時間)- AMDは、ゲーム向けのアップスケーリングやフレーム生成の技術をまとめた開発キット「AMD FSR “Redstone” SDK」の最新バージョン2.4を公開しました。
目次AMD FSR Upscaling 4.1.2:RX 6000シリーズと Ryzen の内蔵GPUに対応アップスケーリングとフレーム生成が Vulkan に対応AMD FSR Frame Generation (Swapchain) 4.0.0:ドライバーがフレームペーシングを担当AMD FSR Ray Regeneration 1.2.1:アンビエントオクルージョンなどを単独でデノイズAMD FSR “Redstone” SDK とは
AMD FSR “Redstone” SDK は、機械学習(ML)を使った描画技術を、ゲームやアプリに組み込むための開発者向けキットです。低い解像度で描いた画面を高解像度に復元する「FSR Upscaling」、中間のフレームを作ってフレームレートを上げる「FSR Frame Generation」、レイトレーシングのノイズを取り除く「FSR Ray Regeneration」、光の情報をためて再利用し、間接光の計算を効率化する「FSR Radiance Caching」(テクニカルプレビュー)を搭載しています。
機械学習が使えない環境向けには、機械学習を使わない従来の手法(FidelityFX Super Resolution 3.1 など)も用意されており、1つの組み込みで携帯ゲーム機やノートPCからデスクトップPCまで対応できる仕組みになっています。前回の2026年6月のバージョン2.3では、FSR Upscaling 4.1 が Radeon RX 7000シリーズ(RDNA 3)に対応しました。
バージョン2.3の内容はすでに記事にまとめていますので、そちらをご覧ください。
AMD、FSR SDK 2.3を公開!RDNA 3での「FSR Upscaling 4.1」対応や「Frame Generation」の安定性が向上2026年6月24日(現地時間) – AMDは、最新のアップスケーリングおよびニューラルレンダリング技術を統合した「AMD FSR™ “Redstone” SD…cginterest.com 2026年6月26日
主な新機能
今回のアップデートでは、機械学習ベースのアップスケーラー「FSR Upscaling 4.1」が Radeon RX 6000シリーズと一部の Ryzen プロセッサーの内蔵GPUで動作するようになったほか、アップスケーリングとフレーム生成が Vulkan にも対応しています。
AMD FSR Upscaling 4.1.2:RX 6000シリーズと Ryzen の内蔵GPUに対応
FSR Upscaling は、ニューラルネットワークを使って低解像度のフレームから映像を再構築するアップスケーラーです。
バージョン4.1.2では、これまでの Radeon RX 9000シリーズ(RDNA 4)と RX 7000シリーズ(RDNA 3)に加え、RDNA 2 世代の Radeon RX 6000シリーズでも動作するようになりました。
AMD FSR™ 4.1 Now Supports AMD Radeon™ RX 6000 Series GPUs | AMD Now PlayingAMD FSR 4.1 Now Supports AMD Radeon RX 6000 Series GPUs(AMD Gaming)
Radeon RX 6800 XT での FSR 3.1(クオリティモード)と FSR Upscaling 4.1(パフォーマンスモード)の比較(『Crimson Desert』Pearl Abyss 開発 | 4K・Ultra設定)AMDによる2026年10月時点の測定。Ryzen 7 9800X3D、DDR5-6000 32GB、ドライバー26.10.1。どちらもフレーム生成を有効にした状態で、画像内の平均フレームレートは FSR 3.1 が95 FPS、FSR Upscaling 4.1 が101 FPS です。
また、ゲーミングノートPCや小型PC、携帯ゲーム機に使われる、一部の Ryzen プロセッサーの内蔵GPUにも初めて対応しています。内蔵GPUの性能に合わせて2種類のモデルが用意されており、どちらを使うかはハードウェアに応じて自動で選ばれます。
モデル対応するハードウェアフル FP8 モデル(従来から)Radeon RX 9000シリーズ(RDNA 4)フル INT8 モデル(従来から)Radeon RX 7000シリーズ(RDNA 3)フル INT8 モデル(今回追加)Radeon RX 6000シリーズ(RDNA 2)
Ryzen AI Max 300シリーズ(Strix Halo、RDNA 3.5 世代の Radeon 8000S シリーズ)
Ryzen AI Max 400シリーズ(Gorgon Halo、RDNA 3.5 世代の Radeon 8000S シリーズ)軽量 INT8 モデル(今回追加)Ryzen AI 9 300シリーズ(Strix Point、RDNA 3.5 世代の Radeon 800M シリーズ)
Ryzen AI 9 400シリーズ(Gorgon Point、RDNA 3.5 世代の Radeon 800M シリーズ)
Ryzen AI Z2 Extreme、Ryzen Z2 Extreme(Strix Point、RDNA 3.5 世代)
Ryzen Z2 A(RDNA 2 世代のGPU)
※表の FP8・INT8 は、機械学習の計算に使う数値の形式(8ビットの浮動小数点数・整数)を表します。
軽量 INT8 モデルは、フル INT8 モデルの半分以下の大きさで、薄型ノートPCや携帯ゲーム機向けに、画質と処理速度のバランスを取って調整されています。
FSR Upscaling 4.1 は ROG XBOX Ally などの携帯ゲーム機でも利用可能に
これにより、ASUS ROG Flow Z13 や TUF A14 といった Ryzen AI Max 搭載のノートPC(フル INT8 モデル)のほか、Ryzen AI Z2 Extreme を搭載した ROG XBOX Ally X などの携帯ゲーム機(軽量 INT8 モデル)でも FSR Upscaling 4.1 が使えるようになります。
Ryzen AI 9 HX 370 での FSR 3.1(クオリティモード)と FSR Upscaling 4.1(パフォーマンスモード)の比較(『Resonance: A Plague Tale Legacy』Asobo Studio 開発 | 1080p・Medium設定 | 1.5倍に拡大)AMDによる2026年10月時点の測定。ASUS Zenbook S16(LPDDR5-7500 32GB)、ドライバー26.10.1。どちらもフレーム生成を有効にした状態です。
なお、内蔵GPUはシステムメモリを共有するため、APUでの処理速度はメモリ帯域や、プロセッサーの電力・冷却の設定にも左右されます。
ディスクリートGPUと各 Ryzen プロセッサーでの処理時間の目安は、AMD FSR Upscaling の製品ページで確認できます。
プレイヤー向けにはドライバー 26.10.1 で先行して提供
プレイヤー向けには、2026年10月20日に公開されたドライバー AMD Software: Adrenalin Edition 26.10.1 で、Radeon RX 6000シリーズと Ryzen AI Max・Ryzen AI 9 シリーズのプロセッサーでも FSR Upscaling 4.1 が使えるようになっています。携帯ゲーム機では、機種によって提供の時期が異なるため、各メーカーの案内を確認する必要があります。
一方で、SDK 2.4 による APU と Vulkan への対応は、ゲームに同梱する SDK の DLL によって提供されるため、特定のドライバーのバージョンは必要ありません。この場合は、ゲームの開発者が SDK 2.4 を組み込む必要があります。
アップスケーリングとフレーム生成が Vulkan に対応
SDK 2.4 は、アップスケーリングとフレーム生成を、DirectX 12 と同等の機能で Vulkan で使える初めての FSR “Redstone” のリリースとなります。Vulkan に対応したのは次のコンポーネントです。
AMD FSR Upscaling 4.1.2AMD FidelityFX Super Resolution 3.1.6AMD FSR Frame Generation 4.0.2AMD FidelityFX Super Resolution Frame Generation 3.1.6AMD FSR Frame Generation (Swapchain) 4.0.0AMD FidelityFX Super Resolution Frame Generation (Swapchain) 3.1.7
ただし、Vulkan で使う場合は、DirectX 12 との間に次のような違いがあります。
既存のゲームの自動アップグレード: DirectX 12 のゲームでは、FSR 3.1 を組み込んだ既存のゲームを、ドライバーが ML 対応の FSR に自動で切り替えることができます。Vulkan のゲームはこの対象外のため、ML 対応の FSR を使うには、開発者が SDK 2.4 を組み込む必要があります。今後のアップグレード: FSR Upscaling 4.1.2、FSR Frame Generation 4.0.2、FSR Frame Generation (Swapchain) 4.0.0 以降を組み込んだ Vulkan のゲームは、今後の新しいバージョンへ、ドライバー(AMD Software: Adrenalin Edition)を通じて自動でアップグレードされます。Vulkan に対応しない機能: FSR Ray Regeneration と FSR Radiance Caching は、今回も DirectX 12 だけの対応です。Intel PresentMon への生成フレームの報告も、DirectX 12 だけの機能となります。AMD FSR Frame Generation (Swapchain) 4.0.0:ドライバーがフレームペーシングを担当
FSR Frame Generation は、中間のフレームを生成して、見た目のフレームレートを高める機能です。生成したフレームを画面に出す仕組み(スワップチェーン)を受け持つ「FSR Frame Generation (Swapchain)」の4.0.0では、フレームを一定の間隔で表示する調整(フレームペーシング)を AMD のディスプレイドライバーに任せる「Driver-Assisted Frame Pacing」が追加されました。
アプリ側でCPUが待ち続けてタイミングを合わせる(ビジーウェイト)従来の方法に代わり、画面への出力に近い段階でドライバーが表示のタイミングを管理することで、フレームの表示間隔が安定し、CPUの負荷も下がります。DirectX 12 と Vulkan の両方に対応しています。
FSR Frame Generation でのフレームの表示間隔。灰色が従来のバージョン、黄色が新しいバージョン(Radeon RX 9070 XT | 『Assassin’s Creed Black Flag Resynced』Ubisoft 開発 | 4K・Ultra High設定)AMDによる2026年10月時点の測定。Ryzen 7 7800X3D、DDR5-6000 32GB、Windows 11 Pro、ドライバー26.9.2と26.10.1。FSR Upscaling 4.1(クオリティモード)とフレーム生成を有効にし、レイトレーシングは RT Extended Mode。
グラフでは、従来のバージョンでは上下に大きく振れていたフレームの間隔が、新しいバージョンではおよそ10msの付近にそろっている様子が確認できます。この機能は次の条件がすべてそろうと自動で使われるため、ゲーム側で有効にする必要はありません。
Driver-Assisted Frame Pacing が使われる条件
Radeon RX 9000シリーズ(RDNA 4)以降のGPUAMD Software: Adrenalin Edition 26.10.1 以降のドライバー排他的フルスクリーン、または画面全体を覆うボーダーレスフルスクリーンVSync をオフにし、可変リフレッシュレート(VRR。FreeSync など)が働く範囲のフレームレートで表示していることUnreal Engine 用の AMD FSR プラグインでは「OverrideSwapChainDX12」が true であることFSR Frame Generation (Swapchain) 4.0.0 以降で、フレーム生成をスワップチェーンの表示のときに実行していること
条件を1つでも満たさない場合は、従来の方法でフレームペーシングが行われます。Unreal Engine 用のプラグインで、フレーム生成を手動で実行する設定にしている場合も、従来の方法のままです。なお、AMD はこの機能を「ハードウェア アクセラレータによる GPU スケジューリング」をオンにした Windows 11 で検証しており、この環境での利用をすすめています。
このほか、Swapchain 4.0.0 には次のような点があります。
既存のゲームへの自動適用: FSR SDK 2.1 以降、または FidelityFX Super Resolution Frame Generation (Swapchain) 3.1.6 以降を組み込んだゲームは、ドライバーによって Swapchain 4.0.0 へ自動で置き換えられる場合があります。ゲームが対応した表示の方法を使っていて、置き換えを無効にしていないことが条件です。RX 9000シリーズ以外のGPU: Swapchain 4.0.0 は使われず、従来の Swapchain 3.1.7 が使われます。生成フレームの見分け(DirectX 12 のみ): 表示した各フレームが、ゲームが描いたものか、フレーム生成で作ったものかを報告するようになり、Intel PresentMon を使う計測ツールで両者を区別できるようになります。ただし、本記事執筆時点(2026年10月28日)の PresentMon では、これらのフレームは「Unknown」と表示されます。AMD FSR Ray Regeneration 1.2.1:アンビエントオクルージョンなどを単独でデノイズ
FSR Ray Regeneration は、Radeon RX 9000シリーズ以降向けの、レイトレーシングの結果からノイズを取り除く、機械学習ベースのデノイザーです。バージョン1.2.1では、アンビエントオクルージョンとスペキュラーオクルージョンを、それぞれ単独でデノイズできるようになりました。あわせて、GPUメモリの使用量を取得したときに返る値が修正されています。
また、「FFX_DENOISER_DISPATCH_NON_GAMMA_ALBEDO」は非推奨となり、今後のリリースで削除される予定で、代わりの名前として「FFX_DENOISER_DISPATCH_NON_ENCODED_ALBEDO」が追加されています。
その他のアップデートFSR Frame Generation 4.0.2:Vulkan に対応し、Vulkan のバリデーションエラーと、スワップチェーンの ABI(バイナリ互換)まわりの安全性の問題を修正(引き続き Windows 11 が必須。ffxConfigure と ffxDispatch の呼び出し順を守らないと、描画が乱れ、今後のドライバーによる自動アップグレードも受けられなくなる)FidelityFX Super Resolution 3.1.6:ML 対応の FSR が使えない環境向けのアップスケーラーで、過去のフレームの情報を重ねる蓄積の処理の精度を高め、前のフレームを現在の位置に合わせる再投影を改善FSR API:読み込み済みのモジュールとアプリの実行ファイルのフォルダーに続けて、ローダーの DLL と同じ場所でもエフェクトの DLL を探すように変更(プラグインの中など、サブフォルダーにまとめて同梱が可能に)FSR API:シェーダーのデータの展開に対応(現在は Vulkan で使用)FSR API:SDK とドライバーの間のやり取りを改善FSR API:ffxConfigureDescGlobalDebug1 を非推奨にし、ffxConfigureDescGlobalDebug に置き換えFSR API:ドライバーが提供するバージョンは名前の末尾に「*」が付き、アプリが指定しないときは、同梱した最新のバージョンより新しい場合だけ自動で選択(ffxOverrideVersion でバージョンの固定が可能)今後の予定
FSR Upscaling 4.1 は、Xbox Series X|S にも近く対応する予定です。AMD の発表動画では、Xbox の CTO を務める Scott Van Vliet 氏がこの対応を明らかにしています。
動作要件
各コンポーネントが対応するGPUは次のとおりです。
コンポーネント対応するGPUFSR Upscaling 4.1.2Radeon RX 9000・7000・6000シリーズ、Ryzen AI Max 300・400シリーズ、Ryzen AI 9 300・400シリーズ、Ryzen AI Z2 Extreme・Ryzen Z2 Extreme・Ryzen Z2 A(Shader Model 6.6 が必要)FSR Frame Generation 4.0.2
FSR Frame Generation (Swapchain) 4.0.0Radeon RX 9000シリーズ以降(Shader Model 6.6 が必要)。Driver-Assisted Frame Pacing には Adrenalin Edition 26.10.1 以降も必要FSR Ray Regeneration 1.2.1
FSR Radiance Caching 0.9.0(テクニカルプレビュー)Radeon RX 9000シリーズ以降(Shader Model 6.6 が必要。DirectX 12 のみ)FidelityFX Super Resolution 2.3.4・3.1.6Radeon RX 500シリーズ以降、または他社の同等のGPU(Shader Model 6.2 が必要)FidelityFX Super Resolution Frame Generation 3.1.6
同 (Swapchain) 3.1.7Radeon RX 5000シリーズ以降、または他社の同等のGPU(Shader Model 6.2 が必要)
Shader Model 6.6 を使うには、DirectX 12 Agility SDK 1.4.9 以降が必要です。Vulkan では SPIR-V 1.5 を使用します。
グラフィックスAPIDirectX 12、Vulkan 1.2(アップスケーリングとフレーム生成のみ)ゲームエンジンUnreal Engine 用の AMD FSR プラグイン(アップスケーリングとフレーム生成)OSWindows 10、Windows 11(FSR Frame Generation 4.0.2 と FSR Ray Regeneration 1.2.1 以降では必須)
なお、現在の Unreal Engine 用 AMD FSR プラグインは、FSR Upscaling 4.1.1 と FSR Frame Generation 4.0.1 を使っており、4.1.2 と 4.0.2 へは後日更新される予定です。プラグインの最新の対応状況は、Unreal Engine 5.8 に対応した FSR プラグインの記事でも紹介しています。
SDK の入手方法
AMD FSR “Redstone” SDK 2.4 のバイナリと一部のソースコードは、GitHub で公開されています。
組み込みの方法は AMD FSR SDK のドキュメントで確認でき、要望や不具合の報告は AMD の担当者か、Discord・Discourse の AMD Developer Community で受け付けています。
