AIの大きな売りの1つは、さまざまなものを素早く作れることだ。AIモデルはファイル整理や動画生成を支援し、ウェブサイトの作成やビジネスの立ち上げ、ビデオゲームの開発まで、さまざまなことに役立つ。「バイブコーディング」によって、一般の人でもOpenAIの「ChatGPT」やGoogleの「Gemini」などに簡単な文章で指示するだけで、数分のうちにゲームを作れる。
しかし、AI企業Anthropicは「Claude Code」で作れるゲームの種類について、一線を引こうとしている。ユーザーが「Claude Opus 5.5」モデルを使って他者のゲームを再現しようとすると、Claude Codeは作成を拒否する。
Anthropicで技術部門のリーダーを務めるAddy Osmani氏が、「X」への投稿で明らかにした。既存のゲームのコピーを生成しないよう、Anthropicが変更を加えたようだという投稿に応じたものだ。こうしたコピーの生成は、著作権に関する規定や同社の利用ポリシーに違反する可能性がある。
Osmani氏は「オリジナルのゲームや特定のジャンルのゲーム、ユーザー自身の設計や素材に基づくゲームは、引き続き作成できる。適切なバランスを取れるよう、改善を続けていく」と述べた。
We added two sentences to Claude Code’s prompt on Opus 5.5 to steer it away from recreating someone else’s specific game because using Claude to infringe IP is against our usage policy.
Original games, genre games, and games built from your own designs and assets are meant to keep working.
We’ll continue to iterate to ensure we’re striking the right balance. In the meantime, if Claude turns down something that’s yours, send it my way.
— Addy Osmani (@addyosmani) October 30, 2026
同氏は、アマチュアのゲーム開発者がClaudeに誤ってリクエストを拒否されたと考えるケースについては、確認に応じるとした。
Anthropicの広報担当者にコメントを求めたが、すぐには回答が得られなかった。
オマージュと権利侵害の境界
Osmani氏が示したAnthropicの姿勢は、たとえ単純なゲームであっても、AIを使って複製しようとする行為が知的財産権の侵害に当たる可能性を認めたものだ。この問題は、ClaudeのようなAIツールが普及する前から存在していた。
今回の変更後も、Claudeは過去数十年の人気作に似たビデオゲームを生成できる。米CNETが「各ブロックにClaudeという文字がある、『ブレイクアウト』に似たゲーム」の作成を指示すると、往年の名作アーケードゲームをウェブ上で遊べる形にしたものが生成された。ただし、ゲームファンがオリジナルと見間違えるようなものではなかった。
同様のことは、2014年に「Flappy Bird」がヒットし、アプリストアに模倣ゲームが相次いで登場した際にも起きた。法律事務所Nixon Peabodyの知的財産専門弁護士David Kocan氏は、ゲームの著作権侵害は複雑な問題だと指摘する。同氏は、同事務所のeスポーツとゲーム分野のチームを共同で率いている。
「これはAIの登場よりはるか前から、裁判所が頭を悩ませてきた問題だ。基本的な区別は一貫している。著作権が保護するのは、ゲーム独自の創作的な表現であり、その根底にあるアイデアやルール、ゲームの仕組みは通常、保護されない。著作権は、あなたが作ったゲームを保護するのであって、あなたが普及に貢献したジャンルを保護するわけではない」とKocan氏は述べた。
例えば、バトルロイヤルゲームや横スクロール型のプラットフォームゲームといった概念そのものを著作権で保護することはできない。新しいタイプのゲームがヒットすると、似たようなゲームが数多く登場するのはそのためだ。
「この区別は理論上は単純に聞こえるかもしれない。だが実際には、アイデアを借りることと、他者の創作的な表現をコピーすることとの境界は曖昧になり得る。ゲームでは特にそうだ。ゲーム体験の多くが、機能面の仕組みと創作的な表現を組み合わせて成り立っているからだ」とKocan氏は述べた。
アニメやゲーム向けアートの制作スタジオNull Stationの創業者で最高経営責任者(CEO)のRTB Ruhan氏は、AIによって、権利侵害に当たる模倣が「短時間かつ低コストで」できるようになったと述べた。アートやデザインのスキルがない人でも、人気ゲームを複製できるようになったという。しかし、複製したゲームを問題なく公開したり販売したりできるわけではない。
「『AIが作った』と主張しても、責任は免れない」とRuhan氏は述べた。
同氏のスタジオでは、シンプルな方法で判断している。
「タイトルとロゴを取り除いても、プレイヤーが2つのゲームを見分けられるかを考える。見分けられないなら、一線を越えている」とRuhan氏は説明した。
ゲームの複製にAI企業は責任を負うのか
米CNETが話を聞いた法律の専門家らによると、AI企業に対し、自社のツールによるゲームの複製を禁止するよう義務付ける法律はない。ただし、そうした制限を設けることで、将来のトラブルを防げる可能性があると、法律事務所Scaleで企業法務、証券法、知的財産を専門とする弁護士のEric Blatt氏は述べた。同氏は、米国特許商標庁の審査官を務めた経験を持つ。
「Anthropicがここでブレーキをかけるのは賢明だ。Anthropicが所有し、同社のサーバー上で動くソフトウェアであるClaudeが、ゲームをコピーするよう指示され、その通りにコピーした場合、Anthropicがコピーしたという主張にも、一応の合理性がある。チャットの記録は、原告側の弁護士にとって証拠の宝庫になるだろう」とBlatt氏は述べた。
Blatt氏によると、AIの発展に法整備は追い付いていないが、AIで再現したゲームが企業のビジネスモデルを直接脅かすようになれば、すぐに訴訟が起きる可能性があるという。
しかし、AIモデルが完全なコピーの作成を拒否すれば、ゲームを複製しようとする試みの一部は、始まる前に食い止められるかもしれない。
「最終的に、法的な境界を定めるのは著作権法だ。しかし、AI企業は、自分たちがどこに線を引くのが適切かを判断しなければならない。そして、その線が法的な境界と一致するとは限らない」とKocan氏は述べた。
この記事は海外Ziff Davis発の記事を4Xが日本向けに編集したものです。
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